法務立ち上げ時にもオススメ!Google Workspaceを使った契約業務フローの基本形

この記事でわかること
  • Google Workspaceの特徴
  • Google Workspace内のアプリケーションを使った契約業務フローの基本
  • Google Workspace内のアプリケーションを使った契約業務フローの応用と実践例
目次

はじめに-Google Workspaceの特徴-

みなさん、こんにちは!

ベンチャー、スタートアップ企業で契約の審査依頼から締結後管理までをオペレーションに落とし込もうとした場合、まずは会社全体の業務基盤になっていることが多いGoogle Workspaceのアプリケーションでできることを探されると思います。

Google Workspaceに含まれるアプリケーションは、それぞれの親和性が非常に高く、かつ公開されている多くのAPIや他のアプリケーションとの連携、さらにはGAS(Google Apps Script)に代表されるように、自由度がかなり高くカスタマイズできるのが特徴です。その反面、特にGASで構築されたカスタマイズは、個々人の技量に依存して作成されることが多く、属人化する傾向が強いのも事実でしょう。

以上の観点を踏まえ、今回は「GASを活用しない、Google Workspaceのアプリケーションを使った契約業務フロー」の基本と応用例をご紹介します。

(本記事内で記載されているGoogle、Google Workspace、Google Drive、Google Form、Google Spread Sheetの商標及びロゴは、Google LLCの商標または登録商標です。)

Google Workspaceを活用した基本的な契約業務フロー

Google Workspaceを活用する場合は、その得意分野を活かして、複数のアプリケーションを活用することになります。その全体像は、以下の通りです。

STEP
対象となるファイルをGoogle Drive(グーグルドライブ)へ

まず、申請者となる方は、契約審査を行う対象となるドキュメント(契約書自体はもちろん、参考資料も含む)をGoogle Driveの特定のフォルダ配下に格納します。

後述しますが、申請時は、この実体ファイルではなく、Google Driveが各ファイルに対して発行するURLを活用することをオススメします。

Google Driveで、バージョン管理も可能

あまり知られていませんが、Google Driveでは、ドキュメントのバージョン管理を行うことも可能です。特に修正が積み重なる契約書のドラフトにおいて重要とされるバージョン管理は、各ドキュメントを右クリックしたのち、「版を管理」から実行することで実施可能です。

STEP
Google Form(グーグルフォーム)を審査依頼フォームとして活用

事業部門の申請者は、Google Formを用いて契約の審査依頼を提出するのが非常にシンプルなフローです。

Google Formは、多肢選択式の回答に応じて条件分岐させることが可能です。
例えば、契約類型を選択することで、選んだ契約類型に応じた質問を表示させるように作り込むことも可能になるため、審査依頼フォームとしては十分機能するといえるでしょう。

Google Formでは、条件分岐し、契約類型特有の質問を投げかけることも可能。

前述の通り、審査対象となるファイルは、Google Drive上のURLで指定するのが望ましいです。というのも、Google Formは、実体のファイルを添付することも可能ですが、その場合、Google Formに添付された当該ファイルは、フォーム作成者のGoogle Driveの「マイドライブ」に自動的に格納され、アップロード先のフォルダを自由に選ぶことができません。

契約書は、適切に権限を絞りつつも、事業部門と法務との間や法務内でも共有されることが前提となっているドキュメントであるため、仮に一人法務の体制であっても、共有が制限されているマイフォルダ配下へアップロードされるのは、やや不便といえそうです。

審査依頼を受け付けた通知は誰に?

Google Form上に審査依頼がきた際の通知は、メールを通じて受け取ることが可能です。

ただし、そのメール通知の送付先は、当該フォームの作成者のみになっています。このため、この標準機能をベースにフローを組む場合には、(GAS以外であれば)当該メールを別途チャットツールに転送する設定をしたり、法務のグループメールアドレスのGoogleアカウントでフォームを作成する必要があります。

STEP
Google Spread Sheet(グーグルスプレッドシート)に台帳をつくる

前述のGoogle Formで記入された情報は、Google Spread Sheetの特定のシート上に自動的に一覧化されます

新たな列として「担当者」や「進捗状況/ステータス」の項目を作れば、事業部門から受け付けた情報をもとに、進捗管理表を手間なく作成することが可能です。

さらに一元的な管理という観点では、さらに上記シートに「稟議番号」、「契約終了日」や「自動更新の有無」といった項目を増やして、締結後管理も一括してできる台帳にするのもオススメです。

契約台帳の閲覧権限は誰に付与するのか?

基本的にGoogle Spread Sheetは、細かな閲覧可・不可の設定はあまり得意ではありません。このため多くの企業では、情報管理の観点から、上記のような契約管理台帳のシートは法務のみが閲覧可能な状態としています。

しかし、下記の記事にもあるように、Importrange関数とQuery関数を用いることで、特定の条件を満たす行だけを、別ファイル、別シートに書き出すことが可能です。これにより、例えば、部署の項目の入力内容に応じて情報を切り出し、事実上閲覧権限の切り分けを行うことができるようになります。

Google Workspaceを活用した契約業務フローの応用と実践例

ストックの改善:情報の分散・検索の煩雑さを防ぎたい場合

上記では3つのGoogle系のサービスを中心にご紹介しましたが、その一方でコミュニケーションツールやタスク管理ツールなどは、SlackやChatwork、Trello、AsanaやBacklogといった別の企業が提供しているサービスを活用している場合も非常に多いでしょう。この場合には複数のツールに跨って業務を遂行するため、ストックされる①情報の分散と②検索性の低下が懸念されます。

まず、①情報の分散については、Google Driveが発行する各ファイル固有のURLを、前述のような各種ツールに記載(もしくはサービス間のAPI連携を活用)することで「緩やかに集約」でき、比較的簡単に克服可能です。

一方の②検索性に関しては、URLを貼付しても解決しないため、工夫が必要です。
その工夫の一例として、以下の記事に記載されている、関連するコミュニケーション内に共通の管理番号を振る方法があります。

これにより、どのツールでも管理番号で検索することで紐づく情報にアクセスすることが可能となります。ただし、こちらの方法は法務のメンバーの手作業が必要になるため、比較的案件数の限られている小規模の法務組織で実施するのが現実的でしょう。

共通の管理番号(ID)を中心とした管理方法のイメージ図

フローの改善:コミュニケーションツールとの連動

実際に契約業務においては事業部門と法務の間でコミュニケーションが発生します。このため、審査依頼の場面だけを考えると上記のGoogle Formの活用がベストプラクティスになりますが、後続のやり取りとGoogle Spread Sheetとの連動性まで考えると、必ずしもそうではないのでは、という懸念が出てきます。言い換えると、フローの進行によって刻々と変化する状況を、管理台帳に反映させる動作が各メンバー任せになってしまい、台帳の更新漏れが常態化してしまう可能性があるということです。

こうした懸念に対する解決策は、コミュニケーションツールとの連携です。

例えば、こちらの記事にあるように、事業部門が普段から使うコミュニケーションツールのであるSlackをベースにフローを組み立て、その中で付されたスタンプと立ち上がるSlackワークフローによって、Google Spread Sheetの値を更新していくという方法も有効です。

また、Googleの各種サービスの自動化に役立つGoogle App Script(GAS)と組み合わせることで、より高度な自動化オペレーションを組むことが可能です。以下の事例では、特定のSlack上でのアクションをきっかけに、Google Drive内にフォルダを作成する、というフローを組み込んだ事例をご紹介しています。

まとめ

この記事のまとめ
  • Google Workspaceの特徴
    • 親和性の高い豊富なアプリケーションと高いカスタマイズ性
    • 高いカスタマイズ性ゆえに属人性が高まる可能性
  • Google Workspace内のアプリケーションを使った契約業務フローの基本
    • 契約書のドラフトはGoogle Driveへ格納
    • 契約書の審査依頼は、Google Formで申請
    • 申請内容やその進捗は、Google Spread Sheetに集約
  • Google Workspace内のアプリケーションを使った契約業務フローの応用と実践例
    • ストック面では、URLを活用した情報の緩やかな集約と管理番号などを活用した検索性の向上
    • フロー面では、コミュニケーションツールとの連携

本記事の著者情報

早川 晋平(はやかわ しんぺい)

2014年、関西学院大学を卒業後、税理士法人に入社し、2年間ファイナンスや経営管理を学ぶ。その中で非効率な業務オペレーションに課題を感じ、プログラミングを独学で習得後、2016年に株式会社Hubbleを創業(代表取締役CEO)。

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