新年に改めて意識したい!現代の企業法務パーソンにとって重要な3つのマインドセット

この記事でわかること
  • 現代企業法務パーソンにとって重要な3つのマインドセット
目次

はじめに

みなさん、こんにちは!

2023年がはじまりました。新年がスタートするタイミングで新しく法務職に就かれる方や法務として新たな会社で新年のスタートを切られる方もいらっしゃるでしょう。

本記事では、こういった区切りのタイミングで改めて考えてみたい、(企業)法務パーソンとして重要な3つのマインドセットをまとめていきます。

①自社のことをよく知ろう

特定の企業に勤める法務パーソンにおいては、自社に関する情報や知識は、法律知識にも匹敵する重要度を占めるポイントになります。特に近年は、ビジネスを取り巻く環境や規制も複雑化しているため、従来以上にその重要度が高まっています。以下、2つの要素に分けてまとめます。

自社のビジネスモデルや商品を知る

言うまでもないですが、自社のビジネスモデルや商品の知識をしっかりと頭に入れることは、リスクに対する具体的アプローチの解像度をグッと上げてくれます。

例えばメーカー企業において、新製品に組み込まれる部品が非常に特殊な技術に基づいて製造されている場合、この部品の調達は、通常の部品よりも困難になる可能性が高くなります。当該調達先との契約を詰めていく上では、こうした事情を加味した上で、条件を検討する必要があります。場合によってはそれだけではなく、当該新製品の販売先との契約においてもこの事情を念頭においた上で検討することが必要なケースもあるでしょう。

このように、契約書一通一通を独立して見るだけでなく、一つの製品やサービスを扱うビジネスとして捉えてリスク判断とその対処をすることが重要です。

自社製品をよく理解するためのHow To

自社製品自体をよく理解しようとするなら、(個人でも活用することができるものであれば)自社の製品やサービスを活用してみるのが最も理解が進む手段でしょう。また製造拠点などがある企業であれば、各地の製造拠点(工場)への訪問をすると、実際にどういった環境で製造しているのか、どれくらいの人数が関わっているのかもリアリティを持ってわかるので有用です。

加えて、類似のビジネスと比較することで自社のビジネスの理解が深まる場合もあります。展示会やEXPOなどに参加する機会がある場合には、そこに一度くらいは参加してみると良いでしょう。他社製品と見比べてみと、製品自体の違いや市場におけるポジショニングの違いがわかることもあります。

事業部門のことを知る

契約書の作成もコンプライアンスに向けた取り組みも、ある意味、法務と事業部門を中心とする非法務部門(以下、事業部門等)との共同作業で、両者の間のコミュニケーションは必須です。これを円滑に行うためには、事業部門等の理解に努めることが望ましいです。

例えば、事業部門等が契約書を読まずに丸投げしてくるという「あるある」への対処も、ただ「怠惰である」と評価するのではなく、事業部門等の方々の置かれた状況や関心、その本音を知ることで、少しアプローチ方法が変わってくることもあります。

もし、自社の事業部門等の状況がうまく掴めない場合には、以下のようなアンケートを社内で実施してみるのも良いかもしれません。

②事実と言葉を大事にしよう

こちらは更に言うまでもないことですが、法務は、扱う事実とこれを示す言葉の精確さを大事にすることが求められる職種です。近年はビジネスチャットツールも普及してきており、短文でのコミュニケーションも増えてきている中で、改めて意識するタイミングとも言えるでしょう。

こちらでも2つの要素についてまとめていきます。

判断を左右する「事実」

事実を大事にせよとはよく言われるものの、判断に迷うようなケースで、必要となる事実が完全に出揃っているケースは必ずしも多くないと思われます。こうした状況でも判断を下す必要がある場合、拠って立つ(数少ない)事実が重要な判断のファクターになるため、「事実」と「事実ではないもの」の区別が非常に重要になります。

特に法務のマネージャーや経営層に判断を仰ぐ際には、上記の区別に基づく情報の提供が非常に重要になります。逆にここで事実と事実でないものが混同した状態で伝達されてしまうと、判断自体も誤ってしまうことに繋がりかねません。

良好なコミュニケーションに欠かせない「言葉」

法務においては、契約書などの書面に記載する言葉の正確性が極めて重要であることは間違いありません。ただ、企業法務においては事業部門等を中心とした社内メンバーへ発信する言葉も非常に重要です。

多くの企業では、法務(組織)は法的なトピックについて、社内一の専門家です。ゆえに事業部門等からすると、法務からの回答には非常に重きを置いているはずです。

こうした中で、専門用語だけを並べて文章自体が難解になっている場合は論外ですが、仮に明快な文章になっていたとしても、意外に事業部門等にとっては「結局何をしたら良いのかわからない」文章になっていることがあります。

適法・違法や適切・不適切という事象への評価はもちろんですが、事業部門等が次に何をすべきなのか(ネクストアクション)にも言及ができると、事業部門等としても自分達の為すべきことがクリアになり、より頼り甲斐のある法務と言ってもらえるのではないでしょうか。もちろんそのためには、前述した自社製品や事業部門等を理解することが必須になります。

法務パーソンの「思います」問題

事業部門等からの問い合わせへの回答時に、「問題ないと思います」と何気なく語尾に「思います」をつけてしまうことがあるかもしれません。

法務パーソンの中には(本稿の筆者もですが)、この「思います」と言う表現に少しばかりの自信のなさや他人事感といったネガティブなイメージを見出し、積極的に回答の文面には用いないという方もいらっしゃいます。価値観の問題かもしれませんが、自分のアウトプットに責任を持つという観点や使う言葉への配慮という観点から、今一度自分が許容できる言葉遣いなのか、再考してみてもよいでしょう。

③本当に自分がリソース投下すべき業務なのか考えよう

Hubble社主催ウェビナー「教えて、法務メディアの編集長!契約DX導入による課題解決の最新事例」の資料より抜粋

LOLでも何度かご紹介している通り、今多くの(企業)法務パーソンの皆様は、業務範囲が広がる一方で、人手は足りないという状況に陥っているのではないでしょうか。この傾向は、多くの企業で求められている「即戦力人材」の供給量が突然増えるとも考えにくい以上、当面は変わらないと予想されます。

ここで通常、法務の皆様に期待されているのは、社内における法務の専門家として価値を発揮することです。この期待に応えるためには、本当に自分がやるべき業務なのかを、以下の「3つの問い」に照らして自問自答し続けることです。

そして、実際に自分がやらなくても良い業務は、

  • 積極的に他の部署やメンバーへ切り出す(採用する)
  • システム上で処理する
  • 外部の専門家やBPO(Business Process Outsourcing)を活用する、または
  • そもそもやめる

といった方法を、一度検討してみてもよいでしょう。

もちろん、何でもかんでも押し付ければ良いということではありませんが、自分に期待されていることに十分に取り組めない状況は、会社としてもマイナスですので、過度に遠慮する必要はありません。なお、自分に期待されていることがよくわからない場合には、自分で想像せず、マネージャーに聞いてみると認識の齟齬が生まれなくなるのでオススメです。

なお、実際に、業務を切り出す場合やシステムに投資をする場合には、一定の根拠が必要になります。

以下の記事にもある通り、今自分たちの時間が取られている業務を特定することができれば、計時などすることで費用対効果も算出することも可能です。ここで算出したROIに基づいて予算を組めれば、法務の皆様は、より自分の価値が発揮できる(場合によっては自らもステップアップできる)業務に注力しやすい環境を作ることができます。

まとめ

この記事のまとめ
  • 現代企業法務パーソンにとって重要な3つのマインドセット
    • 自社のことをよく知ること
    • 事実と言葉を大事にすること
    • 本当に自分がリソース投下すべき業務なのか考えること

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AI 契約レビューや ChatGPT が台頭してもなお残る、契約レビューにおける人間による判断の必要性や重要性について、かなめ総合法律事務所の岩﨑祥大弁護士をゲストにお迎えしたウェビナーのアーカイブを公開中です。

岩﨑弁護士に契約レビューを実演いただきながら、弊社 CLOで弁護士の酒井とディスカッションを行いましたので、是非ご覧ください。


本記事の著者情報

山下 俊(やました しゅん)

2014年、中央大学法科大学院を修了。日系メーカーにて企業法務業務全般(主に「一人法務」)及び新規事業開発に従事しつつ、クラウドサインやHubbleを導入し、契約業務の効率化を実現。
2020年1月にHubble社に1人目のカスタマーサクセスとして入社し、2021年6月からLegal Ops Labの編集担当兼務。2023年6月より執行役員CCO。近著に『Legal Operationsの実践』(商事法務)がある。

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