迷いに迷った大手商社からメガベンチャーへのキャリアチェンジ、その実態と決断の背景- freee株式会社 橋本大 氏-<前編>

大企業とベンチャー企業、理想のキャリアパスを実現できるのはどちらか。法務に限らず、多くの就職・転職希望者が抱える悩みです。freee株式会社 経営基盤本部 法務リスク管理部 部長 橋本大 氏も、かつては同じ疑問を抱えていました。同氏は、新卒入社した大手商社にて留学・海外駐在も含め約17年半にわたって法務・コンプライアンスに携わった後、心機一転、メガベンチャーへの転職を決意します。今回は、転職して実際に感じた両者の違いも含めて、その決断の背景について伺いました。

〈聞き手=山下 俊〉

目次

迷いに迷った転職。選んだ道を正解にするために。

山下 俊

本日は宜しくお願いします!
まずは前職の総合商社でのご経験について伺えますか?

橋本 大

今は法務を志して会社に入る方も多いと思うのですが、私は「法務部は勘弁してほしい」といいながらも法務部に配属されるパターンでキャリアをスタートしました。実際にやってみたらすごくおもしろかったですし、刺激をもらえる先輩がいらっしゃったので、仕事自体は好きでしたね。
ただ、その中でも営業や投資の仕事に主体的に関わってみたいという気持ちはずっと持っていました

経営基盤本部 法務リスク管理部 部長 橋本大 氏
山下 俊

意外ですね!
今は「法務一本」というイメージでしょうか?

橋本 大

ロースクールとビジネススクールのダブルスクールの形で留学をすることにしたのも、営業や投資の仕事への関心があったからです。しかし留学後、法務としてシンガポールに駐在することが決まったあたりで、そのまま法務のキャリアを歩んでいくことに対してあきらめがついたというか、腹をくくりましたね(笑)。

山下 俊

法務としては当時、具体的にどのような業務に従事されてきたのでしょうか?

橋本 大

契約法務や紛争対応を中心に行っていました。法務チームは、業種ごとに分かれており、それぞれ2-3年おきにローテーションして、だいたい10年くらいですべての業種を経験するという流れでした。

山下 俊

そうしたなか、freee社への転職を決められました。

橋本 大

同じ企業で3-40年働いて最後まで勤めあげることも、それはそれでもちろん素晴らしいことだと思いますが、これだけ多様性が叫ばれるようになった時代において、外の世界を知らないまま1つの会社に在籍しつづけることが、仕事を通して生み出すインパクトや自分のキャリアにとって果たして最善の道といえるのか、個人的には疑問を感じるようになりました。
自分自身のなかにもダイバーシティを持ち、仕事に与えるインパクトを大きくしていくほうがよいのでは、と

山下 俊

なるほど!
確かにキャリアに対する考え方に正解はありませんからね。

橋本 大

正直に言うと、瞬時に転職を決断できたわけではありません。迷いに迷いました。
前職に入社したばかりの頃は転職が当たり前の時代ではなかったので、当時は最後まで勤めあげることを考えていました。ただ一方で、そのまま前職に残って昇進を目指すとしても、世の中の状況は変わりつつはあるものの、大企業では一定の年月が必要です。その間の年月は自分自身にとっても非常に重要であり、自分にとってベストなキャリアパスを歩みたいと思ったのも、転職を後押しすることになりました。

山下 俊

大企業からスタートアップへのキャリアチェンジに後悔はありませんか?

橋本 大

まだ答えは出ていません。
後悔しないように、freeeで頑張るしかないですね。

経営との距離が近くなり、会社全体のミッション達成への意識が強まった

山下 俊

freee社の法務体制と、現在の橋本さんの業務について教えてください!

橋本 大

当社の法務は、法務リスク管理部の中の1つのチームです。その他に、コーポレート・ガバナンスチーム、リスク管理チームがあり、3つのチームで構成されており、私はそれらを統括しています。
法務の仕事で言えば、実質的にはプレイングマネージャーのような形で、契約法務から、コンプライアンス、M&A、子会社の法務まで、何でもやっているという感じです。

山下 俊

これぞベンチャー企業の法務という感じですね!
freeeへ入社して、前職との差を感じられた部分はありますか?

橋本 大

そもそも事業内容がまったく異なります。前職で最後に担当していたのは、石炭火力発電所や大型の建設機械に関する事業。1件あたり100億から数千億円という規模のグローバルな取引でした。
一方、freeeではエンドユーザーが想像しやすく、法務として事業に関わっているという実感が持てるようになったのが大きな変化です。

山下 俊

確かにビジネスモデルの差は非常に大きいですね!
ちなみに社内組織という観点ではどうでしょうか?

橋本 大

もちろん組織規模も違うので、自分自身の普段の業務と経営との距離は自ずと近くなります。そうした立場から、法務としてどう経営にインパクトを出していけるかという視点を今まで以上に強く持つようになりました。

山下 俊

転職によって、自分自身では気づいていなかった強みが見つかるということもあるように思います。

橋本 大

直接的な強みとは言えないかもしれませんが、どの会社にも社内のルールやしきたりがあるので、別の会社に移ると「前職ではどうやってたの?」と聞かれることがあります。それをそのまま今の会社に当てはめられるとは限りませんが、会社ごとの違いを認識し、それをもとにした意見を言えるという面は、自分の価値が出せるポイントだと思います。

山下 俊

前職で学んだ「型」を、freeeで活かしているというイメージですね!

橋本 大

そうですね。基本的に法務の仕事は会社によって中身が大きく変わるものではないので、これまで学んできたこと、経験してきたことはすべて自分の血肉になっているという感覚があります。

山下 俊

逆に、転職によって考え方を変えなければ適応できない、つまり「アンラーン」が必要な場面はありましたか?

橋本 大

それはありますね。一番はリスクの捉え方だと思います。
大企業では保守的に慎重な判断をする場面が少なからずあり、私にもそうした考えが根付いていました。ただ、そうした価値観をそのままベンチャーに持ってくると、事業のスピード感を損なってしまうなど、なかなか理解は得られませんよね。
freeeという会社全体のミッションを達成するために何をすべきか突き詰めて考えることが、何よりも求められていると感じています。

若いうちからベンチャー・スタートアップというキャリアを選ぶことの強み

山下 俊

他にベンチャーならではの特徴だと感じられている部分はありますか?

橋本 大

制度や組織が発展途上にあるということでしょうか。
たとえば、コンプライアンスに対する意識も大企業のそれとはやはり少し違います。大企業並みのコンプライアンスをベンチャーにも求めるべきかといった点は、今まさに私自身のなかでも悩んでいるところです。

山下 俊

決して軽視するわけではなく、バランスですよね!

橋本 大

はい、ただそうした自社に足りていない部分を考えて整備して、会社のミッション達成に貢献していくということは、まさに私がfreeeに来てやりたかったことの1つであり、やらなければならないことだと考えています。

山下 俊

freeeのようなベンチャー企業に若手のうちからプレイヤーとして参画する場合、やりがいはどんなところにありますか?

橋本 大

組織がそこまで大きくないので、幅広い業務に携わることができますし、会社の成長スピードに合わせて大量の知識・経験が身についていきます。成長や挑戦の機会は非常に多いです。大企業のジョブローテーションでも業務の幅や知識は身につけられますが、ベンチャー・スタートアップなら若いうちに一気に経験できるという強みがあります。広く浅くという形かもしれませんが、そういう経験の仕方があってもいいように思いますね。

(インタビューは、後編に続きます)


★今回のLegal Ops Star★

橋本 大

freee株式会社 経営基盤本部 法務リスク管理部 部長

上智大学卒業後、新卒入社した住友商事で約17年半にわたり法務・コンプライアンス業務に携わる。2022年1月よりfreeeに入社し、法務部のマネージャーとしてfreeeのミッション「スモールビジネスを、世界の主役に。」の達成に最大限貢献するためにチームを率いている。

(本記事の掲載内容は、取材を実施した2022年12月時点のものです。)

過去に実施した、メガベンチャー企業の法務の方へのインタビューはこちら!

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