「日本のポテンシャルを最大化する」という使命を掲げ、AI店舗支援SaaS「口コミコム」、業界最大級のインバウンドビジネスメディア「訪日ラボ」の運営やコンサルティングサービスを提供する株式会社mov。
事業提携に関わる複雑な契約を数多く扱う同社では2人の公認会計士、及びインハウス弁護士が法務機能を担っています。ビジネス上のコーポレート業務全体を所掌する中で、契約DXの推進によりファイナンスや監査対応等の契約業務以外の業務に注力できるようになったと言います。
交渉戦略検討やIPO準備のための時間を確保するために推進した、契約書AIレビューではない契約DXとは?同社執行役員CFO/公認会計士の諸見里卓様、コーポレート部マネージャー/公認会計士の武野光晃様にその内容と効果についてお聞きしました(取材時2024年1月)。
本記事のポイント
Over view
- 同社の法務の概要(2024年3月現在)
- 人数:3名
- 契約書依頼件数:平均20-30件/月
- 導入前の課題
- 現場からの契約情報収集・整理及び、外部の顧問弁護士への共有のコミュニケーションが煩雑で契約書審査のノウハウ蓄積ができていなかった
- 契約書のバージョン管理ができておらず、締結版と審査済みのドラフトの差分を目視確認する等契約業務にかかる工数が増加していた
- 資金調達やIPO準備のために契約書の網羅性の担保や契約管理台帳管理の必要性が高まっていた
- Hubbleの利用範囲・利用文書類型
- コーポレート部門、各事業部門
- 契約書・利用規約・各種規程
- 導入後の効果
- PDF差分チェック機能、自動でのバージョン管理やドキュメントリストでの契約管理台帳の作成等により契約業務を50%程度低減しCFO業務や監査対応等に注力できる環境を実現
- Slack連携機能、差分機能、コメント機能等の活用による契約情報の一元集約
- 共通認識形成のためのコミュニケーションコストを削減するとともに現場担当者や弁護士とのナレッジ蓄積・共有を実現
多岐に亘るコーポレート業務を所掌しながら、定型化しにくい契約書を多数扱う
早速ですが、業務範囲と貴社の契約業務の体制について教えてください。
諸見里
私はCFOの立場で、経営企画から財務・経理、法務・知財、労務・総務、HRまでコーポレート業務全般を管掌しています。
従前まで私と武野の2名で契約業務を担当していましたが、Hubble導入後にインハウス弁護士が加わり、現在は合計3名体制になりました。こうした変化もあり、かつては業務の半分を契約業務に割いていましたが、現在では1割程度になっています。
武野
私はコーポレート部マネージャーとして、諸見里と同様にコーポレート業務全般を担っています。諸見里が攻めのコーポレート、私は守りのコーポレートを担うという役割分担です。
現在、契約業務に割いている時間の割合は3割程度です。
お二人とも多岐に亘る業務をご担当されているのですね。貴社で審査する契約書件数と、契約類型や契約業務に関する特徴があれば教えてください。
諸見里
新規の契約書依頼件数は月間平均20~30件程度、多い月には50件程度になります。
当社はインバウンドのコンサルティング事業をはじめ、多種多様な事業提携を行っている結果、業務提携契約、コンサルティング契約、代理店契約、人材紹介契約、業務委託契約等、様々な契約類型を取り扱います。特に業務提携契約は、ビジネス上の利害調整が契約交渉の場で行われますので、定型化しにくいのが特徴です。その他、資金調達関連の契約書や秘密保持契約やSaaS事業の申込書等もありますね。
CFO業務に注力するため他社の管理部長からおすすめされたHubbleはIPOを見据えても必須だった
複雑な交渉も伴う多様な契約類型を扱う貴社の契約業務において、Hubble導入以前はどのような課題がありましたか?
諸見里
3つの課題がありました。
1つ目は、契約に関連する情報が分散していることによる社内外のコミュニケーションコストの高さとナレッジの散逸です。
私と武野が事業担当者から、依頼を受けた案件の取引内容や期間、考えられるリスク等をヒアリングした上で、契約書審査をし、締結後の契約書をGoogleドライブに格納するという業務フローを取っていたのですが、契約書審査受付が統一できていなかったため、コミュニケーション履歴が、メール や Slack、Google ドライブ等、様々なツールに分散していました。
複雑性の高い案件は、私と武野から顧問弁護士に審査依頼を行うのですが、分散したコミュニケーション履歴からヒアリング内容をSlackにまとめ直す必要がある等、契約書審査に必要となる情報収集・整理及び共有だけで多大な労力を要していました。
また、Googleドライブには契約書ドラフトは格納していなかったので、どのタイミングでどのような指摘が入り、どういう考えで修正したのか履歴が残らず、交渉履歴や顧問弁護士による契約書審査のノウハウが溜めることもできませんでした。
武野
当時は私と諸見里の二人で契約書審査をしていましたので、相互の情報やナレッジ共有も容易でしたが、顧問弁護士や現場と共通認識を形成するための工数がかかっている状態でした。
将来法務担当者を増員した時に、過去の契約交渉の内容、社内コミュニケーションや顧問弁護士からの助言をナレッジとして共有する必要があるとも感じていましたね。
諸見里
2つ目は、締結時における契約書の内容確認の工数の大きさです。
電子契約で送付されてきた契約書の内容が契約書審査を通過した内容と合致しているか、一つひとつ私が目視で確認をしてから契約を締結していたのですが、個々の確認にかなりの時間がかかっていました。特に資金調達や、業務提携関連の契約書は、万一、契約書審査を完了した内容と異なる内容で契約してしまうと経営上も非常に大きな影響を生じさせてしまいますので、一言一句、何度も何度も緊張感をもって慎重に確認していました。
諸見里
そして3つ目は、IPOも見据えた契約書の適切かつ効率的な管理です。
投資家や銀行対応のために契約管理台帳を整備する必要性も高まっていましたし、弊社のビジネスモデル上、お客様の重要な秘密情報を扱いますので、権限管理を含めより厳格な契約書管理体制を整備する必要もありました。
武野
前述の通り、当時は契約書審査依頼に伴うコミュニケーションの履歴が分散しており、情報の集約、統一化が不十分でした。そのため、Googleスプレッドシートで契約管理台帳を作成し、ステータスや契約内容を管理しておりましたが、情報管理の網羅性や適時性に欠けており、管理自体に工数を要していることが課題でした。
そうした中、何がきっかけでHubbleを知ったのでしょうか?
諸見里
当時、私の業務の半分は契約業務に費やしており、私の専門であるファイナンスや他のコーポレート業務に注力できないもどかしさがありました。
そうした悩みを監査法人時代の後輩である、優秀な他社の管理部長に相談すると、「それならHubbleで解決しますよ。」とお勧めされたのがHubbleとの出会いです。
もっとも、その時点では、クラウドサインを導入していたため、「契約DXは済んでいる」と思い込んでいました。経理業務のDXの優先順位の方が高く、さらなる契約業務のツール導入にあまり乗り気になれなかった、というのが正直なところです。
諸見里様のnoteでは「現役コーポレート本部長が導入してよかったSaaS 5選」が公開されています!
それでは、どのようなお考えからHubbleの導入に踏み切られたのでしょうか?
諸見里
当時、私と同様に今よりも契約業務に占める割合が多く、細かな契約実務を担ってくれていた武野が「非常にいい製品なので是非導入しましょう!」と導入に積極的だったためです。
そうだったのですね!武野さんはHubbleを初めて知った時にどのような印象を持たれましたか?
武野
Hubbleは当社が抱えていた課題を全て解決できるだけでなく、IPOを目指すために必要なツールだと感じました。
事業が急成長して契約書や関係者が激増すれば、締結前の契約書の目視確認や契約台帳の作成をはじめ、手動で行っている契約業務が回らなくなることは容易に予想できましたので契約業務フローや管理体制の整備等の準備を進めておくべきだと考えていました。
諸見里
私も腰を据えてHubbleの話を聞いた上で武野と話し合う中で、「契約DXは電子契約サービスの導入で終わりではない」と感じるようになりました。
メンバーの増員やIPOに向けた事業成長、資金調達に向けた契約業務以外の業務量の増加等、将来生じる状況に対して先手を打つために、まだ手動でも業務を回せている今こそ、ベストな導入タイミングだと判断しました。
その後、実際にインハウス弁護士の増員や資金調達、事業拡大と予測していた状況が現実のものとなりましたが、Hubbleの導入により、体制変更や業務量の増加に対して非常にスムーズに対応することができました。
武野
契約業務以外のコーポレート業務も多忙だった中で、Hubbleの導入検討時から、実際の導入後まで、Hubbleの営業担当、カスタマーサクセス担当の方に丁寧に伴走支援をしていただけたのも非常に助かりました。
非常に嬉しいお言葉です。ところで、公認会計士の資格をお持ちのお二人の専門は会計ですよね。兼業で契約業務も担当するようになるまでは法的な知見はあまり持たれていなかったと思いますが、契約DXにおいてAI契約書レビューの導入等は検討されましたか?
諸見里
Hubble導入前にAIレビューサービスの話も聞き、ダブルチェックには便利だと思いましたが、当時の当社の課題が解決できるものではなかったこととコストパフォーマンスを検討し、導入しませんでした。
冒頭でご紹介した通り、当社の扱う契約書は定型化しにくい類型の占める比重が多いのですが、特に業務提携やコンサルティング契約においては、細かな法律の知識よりも、ビジネス上どこまで譲歩できて、譲れない部分はどこか等、契約審査を行う側もビジネスに精通した上で条項の強度や交渉戦略を考えることの方が重要だと考えています。
私も武野も当社にジョインするまでは契約書審査を担当したことはなかったからこそ、AIレビューがサジェストする結果の正誤を判断することが難しいのですが、一方で、判断には責任を伴います。法律面で分からないことがあれば顧問弁護士やインハウス弁護士に支援を求めることもできますので、今の当社には、契約書の内容の検討や交渉戦略を考える時間を確保するために、外部には委ねられない社内の業務フローの改善による業務効率化にこそ価値があると考えていました。
HubbleでCFO業務や他のコーポレート業務に注力できる環境の整備を実現
現在、普段の業務の中でHubbleをどのように利用されていますか?
武野
契約業務に携わる事業部門の各マネージャー、インハウス弁護士と我々2名でHubbleを活用しています。
Slack審査依頼フォームで現場から情報を取得した上で、Hubbleでインハウス弁護士に契約書審査を依頼しています。
事業部門は担当部署のフォルダに権限を付与し、現場の方にもきちんと契約書を確認してもらえる体制を整備しています。現場と弁護士とのやり取りも、今はHubble上で直接行われているので、関係者の共通認識を形成するための情報整理や伝達等にかける時間がほとんどなくなりました。
Hubble導入により、どのような効果がありましたか?
武野
特にSlack審査依頼フォームで現場から情報を取得ができる他、権限を柔軟に設定した上でバージョン毎に差分表示され、社内のコミュニケーションや交渉の過程が集約・可視化できるのは非常に便利です。
クラウドサインとの連携機能や電子契約PDF差分チェック機能により、これまで煩雑で時間を取られていた業務を圧縮できました。特に、電子契約締結前の目視チェックが不要になった影響は大きいです。
諸見里
Hubbleの導入とインハウス弁護士のジョインの相乗効果により、かつて私の業務全体の5割を占めていた契約業務が1割にまで圧縮しました。
本来CFOとして担うべきファイナンス業務や他のコーポレート業務に集中できる環境を整えられたことが一番のメリットですね。CFOの業務は、資金調達をはじめ、事前準備が肝となります。DX含め、やろうと思ってすぐにできることは多くなく、CFOとしてバリューを出し続けるためには資金調達ための準備はもちろん、組織設計、法務知財戦略、コーポレート業務の体制構築等、常に仕込みを行う必要があります。
もっとも、通常契約業務も回さなければ事業が止まってしまいます。以前は契約業務に忙殺されてCFOとして重要な業務にフォーカスが出来ていない苦しさがありましたが、Hubble導入により契約業務の割合が減ったことで、CFOとしてのバリューをより発揮できるようになりました。
武野
私自身も、契約業務以外のコーポレート業務に注力できるようになりました。
今後、上場準備を進めていくにあたっては、監査対応のために内部統制の整備が必要になります。
Hubbleの導入により、契約業務にマインドシェアを割かなくても契約書の管理体制や契約管理台帳が自然と整備されるようになったので、内部統制体制の整備や売り上げを上げるためのエビデンスを含めた数字固めや監査の内容によって変化する会計処理等の監査対応等に力を入れることができ、非常に嬉しいです。
昨年、デットファイナンスによる資金調達をされていますよね!諸見里さんがおっしゃっていたファイナンスに注力する環境の整備ができたことで実現したのでしょうか?
諸見里
CFOとしての本来の業務に集中できる環境が整ったことに加え、資金調達の際にもHubbleが活躍しました。一定程度契約内容が定型化しているエクイティファイナンスに比べ、デットファイナンスの場合、各銀行と契約書交渉が積み重なり、数十ものバージョンが発生します。締結までの期間も数か月程度かかるので、Hubbleがなければ管理しきれなかったと思います。
武野
投資家や銀行等から契約状況を確認されたときに、ドキュメントリストにより契約管理台帳をワンクリックで提出できたのも非常に便利でしたね。ドキュメントリストは、契約管理台帳作成の他、ステータス管理のためにも日々活用しています。
Hubbleが貴社の資金調達にまでお役に立てたと聞いてとても嬉しいです。その他、Hubble導入の効果として感じていることはありますか?
諸見里
最新版の契約書に至るまでの検討過程や社内コミュニケーションも全て一つの画面に情報が集約されているので、関係者との共通認識の形成が容易になりました。弁護士の視点からも非常に使いやすいと当社のインハウス弁護士からも好評です。
武野
Hubble導入前は、社内での契約書審査の途中で、顧問弁護士に相談する際、顧問弁護士に契約書ドラフトのWordファイルを送っただけでは、交渉や社内検討の結果挿入された条項の背景や検討履歴を別途共有する手間がかかっていましたが、今はHubbleのURLを送れば全ての情報を伝えることができるので非常にありがたいですね。
会社全体としての効果はありますか?
武野
Slack審査依頼フォームで現場から情報を集められるようになったことで、「審査依頼フォームに入力する前にこの情報は整理しておかなければならない」というノウハウが現場にも蓄積されはじめています。
コーポレートとしても、情報やナレッジが集約・蓄積されていることで、過去の案件を参照したり、インハウスの弁護士に過去の経緯まで含めて確認してもらえたりと、ナレッジ共有がしやすくなっています。
IPOに向けて、Hubbleで現場を巻き込む強固なガバナンス体制の構築を目指す
最後に、お二人の今後の展望についてお聞かせください。
諸見里
私自身は資金調達、事業提携、M&Aをはじめ様々なスキームでのファイナンスの実行を含め、企業価値向上に貢献していきたいです。
会社全体としても、現場に売上を伸ばすことに集中してもらう環境づくりのため、リードタイムを限りなくゼロにできるような迅速かつ高品質な契約業務を提供していきたいですね。
上場準備にあたっては、事業を伸ばしつつ、強固なガバナンスを構築していく必要もありますが、Hubbleはその味方になると確信しています。
武野
契約書の網羅的な管理を含め、上場するに足りる強固な内部統制の構築等、守りの側面をさらに徹底していきたいですね。
上場を目指すにあたっては、取引前の網羅的な契約締結の必要性について、さらなる意識の底上げが求められます。たとえば、Hubbleを使って契約書締結までのステータスを現場担当者自身で確認できるようにする等して、現場担当者をより一層巻き込める体制を整備していくことも重要だと考えています。
クラウドサインの自動取り込み機能や指定箇所コメント機能等、契約業務フローが益々円滑になるHubbleの最新機能も活用しながら、極力現場に負担をかけない組織の構築や契約業務フローの整備を進めていきたいです。
IPOを目指す全ての企業の皆様の勉強になるお話をありがとうございました!
会社概要(2024年6月現在)
Company Profile
会社名 | 株式会社mov |
所在地 | 東京都渋谷区渋谷3-17-4 山口ビル 4F |
設立 | 2015年 |
代表者 | 代表取締役 渡邊 誠 |
事業内容 | 店舗支援事業・インバウンド支援事業 |
URL | https://mov.am/ |
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