不動産業界における先進的な契約 DX!法務と事業部門の協業が生み出す主体的な契約ナレッジの活用

株式会社ラ・アトレ事例

新築・再生不動産販売事業、不動産賃貸・管理事業、仲介事業及び開発・分譲事業を手掛け、東京証券取引所グロース市場に上場する株式会社LAホールディングスのグループ企業である株式会社ラ・アトレは、それぞれの土地に最適なプランの企画から建築、リーシングまで行い、一般的な収益不動産とはひと味違う、個性的・先進的な魅力のある不動産開発しています。

一つの物件に多数の部署が関与し、商習慣上、Microsoft Excel(以下「Excel」形式の契約書も多い不動産業界において、同社法務部と事業部門はどのように契約業務の協業を実現しているのか。同社法務部長の江川哲平様及び同部松本悠様に、事業部門とともに実現した契約DXについてお伺いしました。(取材時:2023年11月)

本記事のポイント

Over view

  • 同社の法務の概要(2024年3月現在)
    • 人数:2名
    • 契約書依頼件数:約50~100件/月
  • 導入前の課題
    • 契約書審査依頼方法の一本化をはじめとする業務フロー統一
    • 案件数・案件内容の把握及び進捗状況の可視化
    • 業務の属人化防止及び法務・事業部門ともに活用可能な契約ナレッジの蓄積・共有
  • Hubbleの利用範囲・利用文書類型
    • 会社全体(事業部門・法務部・経理財務部その他管理部)
    • 契約書・合意書・覚書、重要事項説明書等の不動産関連書類、取締役会議事録等
  • 導入後の効果
    • 契約書審査にかかる時間・契約締結までの期間が半減
    • 事業部門の契約ナレッジの活用・事業部門の契約リテラシー向上
    • 全社的な進捗管理・案件マネジメントの円滑化を実現
    • 財務・経理部門の融資対応の迅速化

関連書類が多く、紙の契約書原本が重要な意味を持つ不動産業界

まず、貴社法務部の概要について教えてください。

江川

法務部は2名体制です。契約審査業務の他、取締役会や株主総会関連業務、コンプライアンスやガバナンス業務も所掌範囲です。

株式会社ラ・アトレ法務部長 江川 哲平 様

契約書審査の件数や契約類型について教えてください。

松本

新規の契約審査依頼は月々平均約50件、継続審査件数を含めると約100件です。当社のメイン事業は不動産販売ですので、最も多いのは売買契約書と重要事項説明書のセットです。秘密保持契約書の他、新築ビルを利回り不動産として販売するケースでは、賃貸借契約書などのリーシング関連の契約書もあります。

株式会社ラ・アトレ法務部 松本 悠 様

Hubble導入以前、契約業務にはどのような課題がありましたか?

江川

一番の課題は業務の属人化を解消し、可視化やナレッジ蓄積・共有を進めることでした。具体的には3つの観点があります。

1つ目は、業務フローの統一です。特に、紙、メールや口頭等多岐にわたっていた契約書審査依頼の方法を統一したいと考えていました。更に、依頼後のフローでは契約書関連情報の保存方法に明確なルールを作り、ドラフトデータが部のサーバーや担当者のローカルPCに散在することを防止したいと考えていました。そして、データを集約するにあたって、バージョン管理やファイルの命名規則が徹底できていないことに伴う、交渉中の「先祖帰り」も回避したいなと。

2つ目は、各法務担当者の案件数、案件内容や進捗状況の可視化と事業部門側の契約状況の把握です。契約書審査後、契約締結に至ったのか、交渉中なのか、修正箇所を相手方に呑んでもらえたのかといった状況は、事業部門から報告がない限り分かりませんでした。特に締結後は契約書原本の提出がなければ締結の有無すらも管理部門が把握できないのはリスクでした。

3つ目は、検索可能な環境でのナレッジ蓄積・共有です。事業部門では契約に関する経験と知見の差が生じていたため、業務平準化が必要でした。その差を埋めるのに役立つはずの過去締結した契約書は、事業部門側では検索できず、総務部や法務部へ都度問い合わせることが必要でした。

2つ目の課題に関してですが、契約書原本が提出されていないと、どのようなリスクがあるのでしょうか?

江川

契約書保管義務が履行できない他、法的・経済的なリスクがあります。例えば、宅建業者以外の個人の方に新築物件を販売した場合は、住宅瑕疵担保履行法により10年間、物件の構造上主要な部分の欠陥について保証しなければなりません。

契約書がなければ、買主からの問い合わせに対する当社の責任範囲の検討が難しくなります。論拠が提示できなければ支払う必要のない請求にも応じざるを得ず、相当額の不要な費用・損失にもつながります。

物件毎の案件進捗管理に加え、自然に実現したナレッジの蓄積・共有

Hubble導入の経緯について教えてください。

江川

当グループは、少数精鋭で生産性を向上させるため、DXの推進を中期経営計画で掲げています。会社の方針や施策は管理部門こそ率先して推進すべきですから、法務も様々なDXツールを検討していました。

Hubble導入の決め手は何でしたか?

江川

業務の属人化を解消して可視化を進め、法務・事業部門でのナレッジ蓄積・共有を実現できる点はもちろんですが、シンプルで操作性の高い点がHubble導入の決め手です。会社全体で使うツールは、面倒な操作が多いと事業部門からの反発が想定され、導入後も使われないリスクがあります。HubbleはMicrosoft Word(以下「Word」)をそのまま使えるので、全社導入・活用がスムーズでした。

松本

従来は難しかった、該当箇所をピンポイントで指摘しながら行う事業部門とのコミュニケーションが、Hubbleでは契約書の内容を起点に指定箇所コメント機能により実現できる点も非常に便利です。

現在のHubbleの運用状況について教えてください。

松本

管理部門の他、事業部門全員にHubbleのアカウントを付与し、会社全体で活用しています。部署及び物件毎にフォルダを作成し、契約書や関連情報は全てHubbleに集約しています。各契約書のファイル名には物件名を入れるルールに統一していますので、ドキュメントリストで各物件に関わる契約書を一覧化することで一つの物件に対して発生する複数の契約書をまとめて管理することもできています。

不動産業界ならではの活用法ですね!

江川

その点では、新築の場合もリノベーションの場合も、一つの案件や物件に対して、多様な専門部署が一つのチームとなり、多数の契約書を取り扱う形でプロジェクトが進行することは特徴的かもしれません。例えば、建設請負契約書は、工事部だけでなく工程管理やプロジェクトマネジメントを行うPJ推進部でも確認する必要があります。加えて、仕入れた物件の売買契約書は仕入れ時のみならず販売時にも確認が必要です。最終販売時の売買契約書や重要事項説明書には、購入時の重要情報を記載する必要があるためです。

このように多数の契約書を遡って確認する必要がある場合には、ドキュメントリストで一覧化して確認しています。これは大変便利です。

まさに会社全体、部門横断でのご活用事例ですね。Hubble導入前の課題は解決しましたか?

松本

はい。まず業務フローでは、契約書は締結前のドラフトデータからHubbleに全て集約するルールを設け、法務への契約書審査依頼窓口をHubbleに一本化しました。徹底できていなかった契約書のファイル名も、冒頭又は末尾に物件名をつけるルールを周知しています。契約書を修正するだけでバージョン管理が自動で行え、指定箇所コメントで修正背景や内容を事業部門に説明できています。締結後は、詳細情報のステータスを変更すると同時に締結済み契約書のPDFをアップロードするフローに統一できました。

紙での締結が大半なので、契約書原本は事業担当者が総務部に提出するのですが、ドキュメントリストで自動生成される契約書管理台帳上のステータスが「締結済み」となっているのに原本が提出されていない案件の把握も簡単にできる環境になりました。

法務内での案件数、案件内容や進捗状況の可視化の課題はいかがですか?

江川

ドキュメントリストで担当案件数や進捗状況を可視化できるようになりました。従前は、松本の担当案件について、状況を直接確認することが多かったのですが、Hubble導入後は、コメント欄を見て、「ここはちゃんとケアできている」、「ここは別の見方もあるから伝えておこう」と本人に確認するまでもなく判断できるので、より無駄のないコミュニケーションも実現しました。

松本

私は、「この案件を江川さんならどうするだろうか」と悩んだときに、江川の担当案件を検索して参照しています。

江川

法務では事業部門と行った過去のやり取りを振り返るためにコメント検索も活用しています。進捗管理等のマネジメントに加えて、自然とナレッジの蓄積や共有ができる状態を実現しました。

交渉力を高める不動産業界特有の契約ナレッジを事業部門が積極活用

事業部門の皆様のHubbleの活用状況はいかがでしょうか?

江川

不動産は、「美術品」のようにそれぞれが一点ものと言われ、見えるところから土中や境界のような見えないところまで個性があります。それゆえ、契約上は個性に対応した特約が非常に重要です。土壌汚染が懸念される場合には、その対処のための条項を特約として入れる必要が出てくるといった具合です。その際はまず類似案件から条項案を参照することが非常に重要です。

従来は、例えば「農地転用の場合はどのような特約を付ければよいか?」といった事業部からの問い合わせを何度も受けていました。しかし、Hubble導入後は、「農地」と検索すれば類似する過去契約書がヒットするので、事業部が自ら特約条項をコピー&ペーストして、素案を作った上で法務に契約書審査依頼ができるようになりました。

不動産業界では、Excel契約書も多いと思いますが、HubbleではExcelを契約書のドキュメントとしてアップロードすることはできません(2024年2月時点)。どのようにご対応されていますか?

松本

不動産業界ではExcel契約書が非常に多く、当社の場合は約半分を占めます。入口では、事業部門の担当者にPDF化してもらいHubble上で契約書審査依頼を受け付けます。実際の内容修正のやり取りは、Hubbleのコメント欄で修正箇所と修正内容を提示し、これに基づいて実際に事業部門に修正してもらうといった方法で対応できています。

事業担当者が契約書の修正をするのですね!

江川

事業部門が自ら体験することで契約リテラシーが向上すると考えていますので、極力、事業部門側で契約書を修正してもらっています。Wordの場合と業務フローが大きく変化するわけではないこともあり、Hubble上で開けないExcel契約書でもあまり不便だと感じません。

ありがとうございます。その他、活用されている機能はありますか?

松本

賃貸客付け後に販売するリーシングでは、1物件に対して同内容の賃貸借契約書が数十件発生するため、Hubbleのテンプレート機能で建物毎に雛形を作って活用しています。

江川

法務で作る雛形は一般的な形にならざるを得ませんが、同じ売買契約書でも、土地の場合と建物の場合、建物の場合でも商業ビルか、それ以外かで雛形が異なります。事業部には、具体的ケースに応じた雛形を作り、テンプレート機能を活用している部署もあります。

 法務・事業部門の協業により契約書審査・契約締結までの期間を半減

Hubble導入による変化やメリットがあれば教えてください。

江川

一番の効果は、契約締結までの期間が半減したことです。従前は、契約書審査依頼のメールで関連資料の添付漏れへの対応、登記簿や調査報告書等、大量に渡される紙の中から契約書と必要情報を整理し、不明点を事業部門に問い合わせる等の工程がありました。

Hubble導入後は、事業部門側で基本項目の入力と、契約書審査に必要な書類を全てPDF化して関連資料に添付してもらった上で契約書審査依頼を受けるため、契約書と関連情報や関連資料が紐づき、整理された状態で審査を開始できるようになりました。

測量図や設計図のファイルはサイズが大きいのですが、添付資料に格納できるデータの総容量が気にならないのも助かります。

事業部門と上手く契約業務にかかる負担を分担するようなフローを組まれている印象ですが、事業部門の協力を得るために工夫していることはありますか?

江川

2つの工夫があります。

1つ目はルールの策定方法です。法務が細かなルールまで決めて事業部門に押し付けるよりも自ら決めたルールを運用する方が浸透しやすいと思います。そこで、事業部門の責任者に対し、ルール策定の目的・必要性やどのように協力してほしいのか、しっかりと伝えた上で、例えば、法務への契約書審査依頼を営業事務がまとめて行うか、各担当者が個別に行うかといった細かなルールについては、事業部門内でやりやすい方法を決めて運用してもらっています。

2つ目は、数値化です。Hubbleのドキュメントリストで締結済みのステータスになっている、又は締結日を経過しているのに締結版契約書がない案件をソートして、事業部門毎の契約書未提出の割合を定期的に算出し、事業部門の責任者に「締結済み契約書の提出割合が高くないので、8割を目指してご協力いただけませんか?」とこまめにお声がけしています。数字を見てやる気が出ることが多い営業の方々には効果がありますね。

松本

事業部門が契約業務を「自分ごと」にできる工夫は、ナレッジ活用の際にも重要です。最初は法務から「過去の類似案件があるので検索してみてください」と投げかけ、事業部門の担当者に過去案件を参照してもらいます。成功体験を積むと、積極的にナレッジ活用をしてもらえます。今まで使った特約をHubbleで検索し「よく使う特約のリスト」を作っている方もいますね。

素晴らしいお取り組みですね!

江川

事業部門に限られませんが、実際に便利さを実感することは重要だと感じています。差分機能も「ないと困る」との声が多いです。特に、不動産業は未だにFAXで契約書ドラフトが送られてくるような、DXが必ずしも進んでいない業界です。契約の相手方がWordの変更履歴の付け方が分からず、変更履歴なしの契約書ドラフトも多いのですが、そのような場合でも修正点の把握が迅速にできます。

 事業部門や財務・経理部門も含め会社全体で推進する契約DX

その他、メリットや効果はありますか?

江川

案件漏れがなくなりました。従前は、契約書審査依頼メールへの返信が遅れることがありましたが、Hubble導入後は毎日ドキュメントリストを見て、審査納期とステータスを確認するようになった結果、基本的に3営業日以内に全ての契約書審査を完了しています。

松本

交渉期間が長くなると、契約書の背景や検討過程、修正履歴を複数のファイルやメールを開いて思い出す必要がありましたが、Hubble導入後は契約書と関連情報が1つにまとまっており、今回の修正箇所だけを効率的に確認でき、契約書審査期間短縮に繋がっていますね。

江川

法務以外の管理部門でも業務を効率化・迅速化できています。例えば、金融機関から融資を受ける際、基本的に契約書PDFや関連資料を融資元に対して契約締結後3営業日以内に提出することが求められるのですが、財務部門がHubbleを活用し、迅速に対応しています。経理部門からも証憑確認業務が効率化したと聞いています。

松本

総務部では、社内規程で保管期間としている過去10年分の契約書を遠方の倉庫に保管していますが、Hubble導入後は全契約書PDFを手元で検索できるので段ボールの山から原本を探さなくてよくなりました。

最後に、株式会社ラ・アトレ様の今後の展望をお聞かせください。

松本

一人でも契約書の修正内容や注意点等が分かる方が増えると、会社全体のレベルが向上します。Hubbleを活用し、これからも契約リテラシーの底上げに尽力します。

江川

HubbleをきっかけにDXの推進ができることを事業部門に理解してもらえました。これを起点に電子契約や電子稟議導入を含め、多様な働き方への対応をしていきたいです。

また、Hubbleのドキュメントリストを活用すると、物件の回転率や契約締結のリードタイム、個々人の契約業務の進捗等の各部署の動向の概要を把握することができます。定量的な人事評価においては第一に営業成績が重要ですが、それ以外の業務の定量的評価軸としてHubble上のデータを活用する等、事業部門にもより積極的かつ多角的にHubbleを活用してもらえる工夫をしていきたいです。

会社概要(2024年3月現在)

Company Profile

会社名株式会社LAホールディングス
所在地東京都港区海岸1丁目9番18号国際浜松ビル7階
設立2020年7月1日
代表者代表取締役社長  脇田 栄一
事業内容新築不動産販売事業、再生不動産販売事業、不動産賃貸事業を営むグループ会社の経営管理及びそれに付帯する業務
URLhttps://lahd.co.jp/

会社名株式会社ラ・アトレ
所在地東京都港区海岸1丁目9番18号国際浜松ビル7階
設立1990年12月15日14年3月30日
代表者代表取締役社長  脇田 栄一
事業内容不動産再生販売事業(戸別リノベーションマンション販売業務、1棟リノベーション分譲業務、インベストメントプロジェクト業務)、新築不動産販売事業(デベロップメント業務、新築マンション買取再販業務、土地企画販売業務、販売代理業務)、その他事業(不動産証券化、その他)
URL https://lattrait.co.jp/

より詳しいお話をご希望の方は、お気軽にお問い合わせください。
Hubbleの詳細についての資料も、こちらよりダウンロードできます。

この記事をシェアする

トップ 導入事例 不動産業界における先進的な契約 DX!法務と事業部門の協業が生み出す主体的な契約ナレッジの活用

その他の事例 こちらの導入事例もご覧ください

導入事例一覧へ