チームで最大の成果を。法務に限らない、普遍のチームビルディング

この記事でわかること
  • 生産性が高いチームを作るために重要なこと
  • 心理的安全性の高め方
  • 各メンバーの役割を明確にする方法
目次

はじめに

みなさん、こんにちは!

法務人材は専門性が求められることから、個々のスキルが高く、優秀な方が多いです。それもあり、「生産性を高めるためのチーム作り」が議論されることはあまりないように思います。しかしながら、最小の人数で最大の成果を出すこと(法務に限らず)を常に求められているのも事実です。

本記事では法務の生産性を高め、事業に貢献していくためのチーム作りについて考えていきます。

チームとは?

そもそもチームとは何かを理解しておく必要があります。コトバンクによると、チームは以下のように定義されています。

ある目的のために協力して行動するグループ。組。スポーツや共同作業についていわれる。「チームを組む」「野球チーム」。

よりわかりやすくするために、「グループ」と対比すると、簡単に言えば、単なる人の集合であるグループに対して、何らかの目的を持って集まり、その目的に基づいて行動するのがチームということになります(表1参照)。

チームグループ
目的・目標共通の目的や目標に向かって行動する特定の目的や明確な共通の目標がないことが多い
メンバーとの関わりメンバー間の相互依存性が強い相互依存性は薄い
組織性・役割役割や責任が明確に分担されている役割や責任の分担が緩やかまたは不明確
コミュニケーション目的達成のためのコミュニケーションが活発コミュニケーションが限定的
表1:チームとグループの違い

チームが機能している状態とは?

近年では働き方が多様化していることもあり、チーム作りの難易度が上がっています。

そういった中で、ここではチームが機能している状態を「メンバー間の連携によって、相乗効果が生まれ、個々の成果の総和よりも大きい成果が出せる状態」と定義します。具体的には、以下のような状態を指します。

  • チームの目標や考え方を各メンバーが理解し、それに基づいて行動している
  • 各メンバーが自分の役割を理解し、他のメンバーと連携して業務を行えている
  • 各メンバー間で透明性の高いコミュニケーションが行われている
  • 各メンバーが互いを信頼し、個々の意見や能力が尊重されていることと同時に、チームメンバー同士で定期的にフィードバックを行い、成長を促す文化がある
  • 社内外の環境や状況の変化に柔軟に対応できる(できている)
  • チームとしての成果へのコミットメントが強く、目標の達成に向けて一致団結している

チームビルディングで重要な2つのこと

上記のようなチームを作り、維持するためには、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。具体的なステップは2つです。具体的な施策も含めて紹介していきます。

チームビルディングは、マネージャーだけでは成らず

チームづくりの責任は、マネージャーにあると考えられがちです。もちろん、多くの場合これは正しいと思われます。

その一方で、理解しなければならないのは、良いチームはマネージャーだけによって作られるのではなく、マネージャーと(マネジメントされる)メンバーのフォロワーシップによって作られるものだということです。

チームをより良くするために、メンバーを巻き込みながらチームのコンディションをワークショップ等で振り返り、「問題意識」の共通認識を作っていくなどメンバーの協力も必要であることは言うまでもありません。

ステップ①-チームの心理的安全性を高める

自分はここ(このチーム)にいて良いんだという安心感があると、人の能力は最大化すると言われています。その状態を作るためには、チーム内の心理的安全性を高めることが大切です。この心理的安全性は、Google社ではこのように定義されています。

心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていません。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります。

「効果的なチームとは何か」を知る

つまり、自分が思っていることを言うのに、恐れや不安がなく、疑問や仮に間違いを言っても大丈夫だという安心感があることです。では、チームの心理的安全性を高めるために具体的にやるべきことを紹介します。

メンバー間で個性を知り合い、価値観を共有する

まず心理的安全性を高めるためには、メンバーが互いを知り合い、理解し合うことが大切です。オススメなのは、過去、現在、未来の時間軸で、自分たちのキャリアやプライベート、そしてその時々での考えを共有し合うワークショップです。

このようにストーリーにして共有し合うあと、その人にどんな強み・弱みがあるのかが伝わりやすくなります。そうすると、チーム内で「今このメンバーにはこういったサポートを必要としているのではないか?」と互いにサポートを出しやすくなり、成果が出やすい環境を作ることができます

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また、どんなときにやりがいを感じ、どんなときにストレスを感じるかという個々の特性を知っておくことも重要です。Legal Ops Labを運営するHubble社では、無料の「16Personalities性格診断テスト」を活用し、その結果に基づいて行う自己紹介を通して「その人の性格」を理解する取り組みをしています。

働く仲間を知り、自分のことを知ってもらうことで、相互に「ありのままの自分でいても良い」という安心感が生まれチーム内の心理的安全性が高まり、結果として、個々人の能力が発揮されやすくなります。

透明性の高いコミュニケーションを意識する

人は結論だけ伝えてもなかなか動きません。仮に動いたとしても、期待通りの成果につながらないこともあります。人は「納得したい・理解したい」という欲求があるからです。

特に何かの意思決定をした(する)際には、透明性の高いコミュニケーションが重要です。例えば、以下のシンプルなフレームワークを使い、伝えると良いでしょう。

コミュニケーションの透明性を高めるフレームワーク
  • Why (目的、なぜそれをするのか)
  • What(最終的なゴールはどのようなイメージか)
  • How(具体的にどのように進めるのか)

もちろん「メンバーを信頼し、結論を出す前に壁打ち・相談をする」という姿勢も大切です。これによって新たな視点のアイディアを得られるのはもちろんのこと、方針が決まったときに、「そんな話聞いていない!」などのメンバーにおけるネガティブサプライズを抑止できます。

これに加えて、メンバーには「頼りにされている」という実感が生まれ、「このチームにいる必要性」を感じることもできます。

ステップ②-各メンバーの役割を明確にする

心理的安全性の醸成に加えて、会社の方針・計画をチームの方針・計画にブレイクダウンし、これに基づいて各メンバーの役割を明確にすることが大切です。

そのためには、会社・チームの方針を明確にし、個人の役割に紐づけていく必要があります。一方で、会社の方針(目標・ミッション)は抽象度が高すぎることが多く、チーム内にそのまま伝えたとしても、個人の役割や計画に直接結びつけることは難しいでしょう

ここではチームのマネージャーの役割が非常に重要です。まずマネージャーは、以下の図2にあるような、会社・(法務)チーム・メンバーの目標と活動計画の連動性を理解する必要があります。

図2:「戦略は組織内外のコミュニケーション手段!リーガルオペレーションズ実践マニュアル⑤戦略編」より引用

その上で、以下の順で、組織の各メンバーの役割へブレイクダウンしていきます。

  • 会社の方針・計画を理解する
  • 自チームの方針・目標を、会社の方針・計画に合わせて設定する
  • 自チームの方針にリンクさせて、個々の役割(活動計画)を設定する

もちろん③はマネージャーとメンバーで共に進めていくことになりますが、①②は、目標設定や評価面談の際にのみ伝えるのではなく、できれば毎週(少なくとも毎月)のメンバーとの定例会議で伝え続けるなど、マネージャーに責任を持ってやり切ることが求められます

繰り返し伝える重要性

マネージャーからすると、会社の方針やチームの方針は、「出席者も変わっていないし、今回は伝えなくても良いかな。すでに伝わっているだろうし」と思いがちなものです。

しかし、普段は実務をこなしているメンバーに見えているものや関心の対象は、マネージャーのそれとは異なることが通常です。このため、会社や組織レベルの方針は、数回伝えただけではメンバーに必ずしも伝わっていない、忙しさの中で忘れている、ということもよくあります(※)。

このため、マネージャーには、ロボットのように伝え続けることが大切になります。極論ですが、100回目でやっと理解してくれると考えると良いかもしれません。

(※)Daniel Coyle 『THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法』(かんき出版、2018年)では、企業600社にアンケートをとったところ、経営者が会社のビジョンや目標が社員の64%くらいに伝わっているだろうと思っていたが、実際はたったの2%しか伝わっていなかった、という衝撃の調査結果が紹介されています。

チームビルディングを成功させるためのポイント

まず、採用で妥協しない

元も子もないですが、チームビルディングの前に、チームにいるメンバーが重要なのは言うまでもありません。すなわち採用が最も重要です。

ここがズレてしまうと、どれだけ努力しても良いチームは作れません。多様性を尊重しつつ、多様性を認められない(同質でなければならない)価値観は何なのかを採用時の基準として、しっかり持つことが重要です。

採用時からチームビルディングの成功を担保する具体的手段は、日本版リーガルオペレーションズのCORE8の「人材」のレベル2にもあるとおり、「法務部門の求める人材要件を明確化していること」になります。ここで言語化した内容が、募集要項にも可能な限り表せると良いでしょう。

入社時オンボーディングはチームビルディングの絶好の機会

自社の法務(チーム)として求める人材像に合った方が採用できた場合、入社時のオンボーディングは「宝物」と言われるくらい、メンバーにとっても、チームビルディングにおいても絶好の機会です。

具体的な方法は、上記の記事を基本としつつも、様々な方法論があります。入社したメンバーだけでなく、チーム全体でワークショップをやることも非常に有意義ですし、以下の記事にあるような、マインドや実際の実務の手続きにおける前職との違いにフォーカスするのも良いでしょう。

まとめ

この記事のまとめ
  • 生産性が高いチームを作るために重要なこと
    • 前提:良いチームはマネージャーのみで作れるのではなく、メンバーのフォロワーシップと共に作られる
    • 良いチームは、心理的安全性が高い
    • 良いチームは、会社・チームの方針が明確で、それを各メンバーが理解している
  • 心理的安全性の高め方
    • メンバー間でお互いを知り合い、個性・価値観を理解し合う
    • 透明性の高いコミュニケーションが大切である(特に意思決定の際には丁寧に行う)
  • 各メンバーの役割を明確にする方法
    • 会社の方針を理解し、チームの方針へブレークダウンする
    • そのブレークダウンしたチームの方針を各メンバーの役割(仕事)にリンクさせる
本記事の著者情報

早川 晋平(はやかわ しんぺい)

2014年、関西学院大学を卒業後、税理士法人に入社し、2年間ファイナンスや経営管理を学ぶ。その中で非効率な業務オペレーションに課題を感じ、プログラミングを独学で習得後、2016年に株式会社Hubbleを創業(代表取締役CEO)。

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