メンバーの自主性を高める、多様な事業を支える強い法務チームづくりの秘訣 – レアゾン・ホールディングス 松村拓紀氏<後編> –

ブルーロック Project: World Champion」等のゲームアプリや、デリバリー&テイクアウトアプリ「menu」の開発・運営、広告事業、YouTubeチャンネル「佐久間宣行のNOBROCK TV」をはじめとするコンテンツ開発、さらにブロックチェーン事業や投資事業などの、株式会社レアゾン・ホールディングスの幅広い事業を支えているのは、メンバー全員が有資格者であるという同社法務部です。今回は同社法務部の部長、松村拓紀氏に、弁護士資格をもつメンバーをどのようにマネジメントしているのか、法務部としてのあり方を含めお聞きしました。

〈聞き手=山下 俊〉

目次

一番の面白味はさまざまな事業に携われること

山下 俊

法務メンバーが入社された後のオンボーディングについて教えてください。

松村 拓紀

入社後、概ね3か月間は毎週1on1を行います。この間に、各管理部の機能の説明、各管理部のメンバーとのランチや飲み会を行います。また、当社では多岐にわたる事業ポートフォリオを組んでいることもあり、各事業部の案件をローテーションで担当してもらいながら、各事業の内容・特徴とキーマンを知っていただくという取り組みもしています。

法務部 部長 松村拓紀氏
山下 俊

法務部内のコミュニケーションやチームづくりはどのように行われていますか?

松村 拓紀

基本的には事業ごとに主担当者を決めていますが、属人化の防止や、ナレッジの共有・蓄積のために、他事業の案件も担当するようにしたり、M&Aや訴訟などの案件については、私を含めて3名以上で進めるようにしています。その一方で他の事業やプロジェクトの状況を知る機会も重要だと考え、必ず週2回メンバー全員が顔を合わせる定例会を設けています。

山下 俊

複数名での担当制は、他の会社の法務の皆様でも人数さえ確保できていれば、すぐに実践できそうですね!

松村 拓紀

全事業の法務案件が1つの法務用Slackチャンネルに集約されるようにワークフローを設計しており、部内の誰もが各事業の進捗を確認できるようになっています。もし、別の事業も担当してみたいということであれば、自由に行き来したり、2名でやったりということも可能です。このあたりは臨機応変に対応しています。

山下 俊

広く事業を見ることができるというのは、メンバーのみなさんのキャリアパスを考えるうえでも相性が良いやり方だと感じました。

松村 拓紀

そうですね。当社で働くメリットは、さまざまな事業ポートフォリオを持っていて、かつ分業体制がまだ確立されているわけではないぶん、多様な事業の法務に携われることにあると思っています。
むしろ、これが失われたら面白くなくなってしまうかもしれません。いろんなことをやってみたいというメンバーの希望はなるべく叶えられるようにしていこうと考えています

事業の最大化に貢献しながらも、ディフェンスはきっちりと

山下 俊

事業が複数あれば、その数だけ事業戦略があります。そのなかで、法務としての戦略を打ち出していくことは難しそうにも思えます。

松村 拓紀

当社は、グループ共通の「世界一の企業へ」というビジョンに共感して入社した方が多く、各事業の目線が揃っているという特徴があります。「世界一の企業へ」という全社的なビジョンを掲げ、各事業がとにかく成長していくことが目標であり、当然法務もそこに寄与できるよう仕事をするので、実は戦略の構築と目線合わせはそこまで難しくないと思っています。

山下 俊

事業の成長にコミットすることが共通認識として存在しているわけですね。改めて、法務チームが経営から期待されていることとは何だとお考えですか?

松村 拓紀

現在は投資事業を展開しているということもあり、M&Aの戦略など積極的に事業成長や企業価値向上へコミットしていくことが最も重要だと考えています。ただし、法務としてブレーキをかけなければならない場面がどうしても出てくるので、この塩梅は難しいですが、きちんとしたリスクマネジメントに取り組んでいこうという話はしています。

山下 俊

急成長されているからこそ、ディフェンスも大事ということですよね!

松村 拓紀

やはり、適切な形でディフェンスをすることは法務の大前提だと思っています。日常業務でリスクサイドを適切に管理しつつ、その一方で、法規制の範囲内でいかに事業成長を最大化できるかが会社のステージから見ても重要です。これを法務としてサポートすることも大きな役割の1つになりますね。

ナレッジマネジメントで、カバーし合えるチームへ

山下 俊

松村さんのご経験を踏まえ、急成長する企業の法務として気をつけておきたいポイントがあれば教えてください。

松村 拓紀

先ほどお伝えしたように、やはり事業成長や企業価値向上へコミットするという目標に対して全員が同じ目線でいるかどうかが重要です。そして、人によって業務のクオリティの差は当然あるので、いかにボトムラインを均一化するかも重要になります。

山下 俊

ボトムラインを均一化するための工夫は何かされていますか?

松村 拓紀

ナレッジマネジメントです。
この1年間で、仮にメンバーが誰か1人抜けたとしても、他のメンバーがカバーできる体制構築に取り組んできました。具体的には、進行中の案件に関してはSlackに集約し法務の全員が確認できる状態にしているほか、過去の案件のナレッジをすべて集約したポータルサイトも作っています。

山下 俊

急成長している組織の法務では、専門性がある程度高くなければ、速い意識決定ができず、成長の足枷になるという負のジレンマがありそうですが、ここは一定の法的思考力が担保されている有資格者のメンバーが揃っていることで乗り越えているように思います。

松村 拓紀

資格の有無に関わらず、専門性に加え、法務としての経験が重要だと思います。仕事をしながら自分で学び、経験を得ていくという姿勢がないと、法務として掲げている目標は達成できないと考えています。そういう意味では、法律事務所のOJT文化と似たところがあるのかもしれません。

山下 俊

事業部に寄り添いつつも、ベースとなる知識や仕事への姿勢は、弁護士が持つようなプロフェッショナリズムが求められると!

松村 拓紀

一方で、事業部から求められてもいないような、ただ長文で読みづらいだけの見解を出してしまう弁護士も多いと思います。そのあたりのバランス感覚は、実際に仕事をしながら掴んでいく必要があります。事業部が何を求めているのか、どう回答すれば事業部に伝わるのか、「想像力」を持って業務に取り組むことが大事だとメンバーには伝えています。

山下 俊

その想像力を養うには、場数をこなしていくしかないでしょうか…?

松村 拓紀

そう思います。また、事業部との密なコミュニケーションがあって初めてわかることも多いと思います。事業部の状況を把握しながら、想像力を働かせていかなければなりません。

メンバーに外部とのつながりを持つ機会を用意したい

山下 俊

現在の法務チームは弁護士の方だけで構成されていますが、弁護士としてのキャリア構築に向けたサポートはされていますか?

松村 拓紀

外とのつながりを持つ機会は、自身の成長につながります。まだできてはいませんが、当社でも許容されている副業を積極的に勧める方針を打ち出したいと考えています。
また、日本組織内弁護士協会(JILA)や法務互助会などのコミュニティへ積極的に参加することも推奨しています。執筆やセミナー登壇の機会なども作っていきたいですね。

山下 俊

貴社が成長していくことによって、外とのつながりを持ちやすくなる側面もありますよね!

松村 拓紀

自分の名前を外に売る機会は重要で、「この会社ってこんな法務がいるんだ」と知ってもらえるようになれば、その他のメンバーにもよい影響が生じると思っています。私自身、書籍を執筆したり、セミナーに登壇したりする機会があるのですが、体系的に知識を整理する時間としても有効だと感じています。

山下 俊

メンバーが全員弁護士で、プロフェッショナリズムを発揮して仕事をしているのであれば、キャリア構築の機会は自然と自身で作っていけるのかもしれません。

松村 拓紀

最近、各社のバックオフィスの担当者を集めたミートアップを初めて当社で開催しました。バックオフィスの採用につながるような取り組みができたらということでスタートした企画ですが、他社の法務・知財担当者との交流や情報収集によって、キャリアプランを考えてもらうきっかけにしてもらえればとも考えています。今後は2か月に1回程度の頻度で定期的に開催していければと思っています。

山下 俊

キャリア構築のきっかけをさまざまな形で提供されているということですね。貴重なお話をありがとうございました!


★今回のLegal Ops Star★

松村 拓紀 (まつむら ひろき)

株式会社レアゾン・ホールディングス 法務部 部長

東京大学法学部、法科大学院卒。司法試験合格後、弁護士として企業法務系法律事務所に入所。コーポレート案件やM&A、訴訟、インシデント対応などを扱い、大規模訴訟案件も担当。2021年8月、大学時代の同級生でもある村川取締役(株式会社レアゾン・ホールディングス)に声をかけられたことがきっかけで現職へ入社。現在は法務部長として、グループ全体の法務関連業務や、コンプライアンス、知的財産に関する業務全般へ従事。近著に、『会社法実務スケジュール〔第3版〕』(新日本法規、2023年1月)がある。

(本記事の掲載内容は、取材を実施した2023年10月時点のものです。)

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