契約業務の属人化を解消!将来に備えた情報・ナレッジ共有の基盤を構築

東急建設様_Hubble活用事例

渋谷ストリームや渋谷スクランブルスクエア第Ⅰ期(東棟)の施工をはじめ渋谷再開発を担う東急建設株式会社は、基軸事業である土木事業と建築事業を中心に、不動産事業、国際事業、新規事業を戦略事業として競争力の拡大・収益多様化にも取り組んでいます。

「人にしかできない、人によって価値を生む仕事を尊重し、その知識や技術、ノウハウを受け継ぎ、広げ、現在から未来へとつないでいく」ことを経営理念に掲げている同社。その管理本部法務部では、将来を見据えてどのように業務の属人化を排し、案件の可視化とナレッジの共有ができる業務環境を整えたのか。

同社管理本部法務部 浜村脩司氏、同部 白井史彦氏及び同部 原田さやか氏にお伺いしました。(取材時:2025年2月)

本記事のポイント

Over view

  • 同社の管理本部法務部の概要
    • 人数:6名
    • 管理本部法務部で取り扱う相談件数:約600~700件/年
  • 導入前の課題
    • 知識やノウハウ・スキルの平準化
    • 契約書ドラフトの修正・交渉履歴を含めた契約関連情報に関する管理手法の統一
  • Hubbleの利用範囲・利用文書類型
    • 管理本部法務部全員
    • 契約書、関連資料、準備書面や通知書等
  • 導入後の効果
    • 管理本部法務部内でのナレッジ共有体制の構築
    • 契約書審査・修正履歴をはじめとする契約情報の統一的管理の実現
    • 担当案件と業務内容の可視化

 事業部門での実務経験による深い業務理解に根差した、相談・依頼しやすい法務

本日は宜しくお願いいたします。早速ですが、貴社管理本部法務部の概要を教えてください。

白井

当社の法務部は、部長を含め6名と庶務担当が1名の7名構成となっており、法務相談、契約書審査、紛争対応、社内監査や研修が主要な業務で、最近は新規事業のスキームやリスク検討等に関わることも増えています。契約書の押印、締結後の保管・管理は事業部門の所掌範囲となります。地方支店の法務業務については法務部内で各支店の担当者を決めてサポートする体制をとっています。

部の特徴を教えてください。

浜村

全員が総合職として当社に入社し、事業部門の経験を経て法務部に異動になったメンバーで構成されています。
私も、入社後、九州支店に配属され、現場事務を経験し、その後、会計業務を担当してから法務部に異動となりました。法務部に配属になると、長期間在職することが多いのも特徴です。

現場事務というのはどのような業務をご担当されるのでしょうか?

白井

私も入社後まずは現場事務を担当しました。
建設工事現場では、作業所長をトップとし、施工管理を担当する社員、現場事務を担当する社員で構成する組織が作られ、その他にも営業担当者、協力会社の方々など、多くの人が関わりながら仕事を行います。
現場事務はその組織の中で、例えば協力会社との工事下請負契約等の受発注に関する業務や会計業務の他、現場事務所や駐車場等の不動産探しをはじめ幅広い庶務業務を行います。この現場事務の業務の中には、契約書類等への押印申請等の業務も含まれています。

渋谷駅周辺には、東急建設株式会社が建設した渋谷ヒカリエ、渋谷ストリームや渋谷スクランブルスクエア第Ⅰ期(東棟)等の渋谷のランドマークが立ち並ぶ。

なるほど、勉強になります。管理本部法務部では、担当業務は専門分化しているのでしょうか?

原田

業務内容の専門性に応じた明確な業務分担はありませんが、メンバーにより担当案件の類型には傾向が出ます。
私は九州支店で積算業務や営業総務を経験し、法務部に配属になりましたが、国内の案件のほか、国際事業部の案件を担当することも多いです。当社では国際事業にも力を入れて取り組んでおり、海外企業との合弁会社の設立や海外拠点での建設プロジェクトに関する相談など、様々な法務相談に対応しています。

浜村

私は比較的新規事業の法務相談を受けることが多く、白井さんは不動産関連の案件を扱うことが多いかもしれません。

ありがとうございます。契約書の依頼件数と貴社のビジネスモデル上、特に多い契約類型や契約の特徴があれば教えてください。

白井

当社は土木・建築事業がコア事業となっておりますので、建設工事に関する契約書が典型的な契約類型で、年間で数千~数万件の契約を締結しています。
その内訳として発注者との間で締結する工事請負契約と協力会社との間で締結する工事下請負契約の2種がありますが、下請負契約の割合が圧倒的に高いです。

もっとも、下請負契約は当社雛形での締結が多く、契約締結に際して法務部の関与はほとんどなく、建設業法等の法令が改正されたタイミングで雛形の改訂対応を行っています。発注者との間の工事請負契約書も建設業界での標準書式がありますが、標準書式をベースに特約や条件の変更が生じる場合や、発注者の雛形を用いる場合もあるため、法務部で契約書審査を行う割合としては、発注者との間の工事請負契約書の比率のほうが高いです。
私の担当案件の傾向としては、その他、不動産売買・賃貸契約書もありますね。
法務部で取り扱う年間の相談件数は600~700件になります。

皆様それぞれ担当案件の傾向に応じて、作成・審査を担当する契約書の類型の割合も異なりますよね。

浜村

そうですね。新規事業案件を担当することが多い私の場合は、共同開発契約書や秘密保持契約書をはじめとした情報の取り扱いに関する契約書も多くなっています。

原田

私の場合は業務委託契約書の確認依頼が多く、英文契約書にも対応しています。契約書以外だと新規事業関係で、利用規約の策定の相談・依頼などもありますね。

会社として新規事業にも力を入れていらっしゃるとのことですが、具体的な内容を教えてください。

浜村

当社では3年前に2030年に向けた長期経営計画を策定し、土木・建築等のコア事業の他、新規事業の収益性を高めていくことを目指すことを宣言しました。
現在では、例えば、太陽光再生可能エネルギー発電(オフサイトPPA)等の新規事業に取り組んでいる他、新規事業のアイデアコンテストを行い、社員のアイデアの事業化も進めています。

アイデアコンテストから事業化されたものとしては、例えばどのようなものがあるのでしょうか?

白井

社内の新規事業アイデアコンテスト「MOON SHOT CONTEST(ムーンショットコンテスト)」における第一号案件として、タネの採取地や生産地が明らかな緑化樹木「チイキツリー」を販売するECサイトを開設しました。

とても素敵なお取組みですね!管理本部法務部の皆様がもともと事業部門でのご経験をされていらっしゃることもあり、事業部門の皆様との関係が非常に近く、相談しやすいのではないかと感じます。

浜村

確かに、支店配属の時からの知り合いが多くいる他、現場事務をはじめ事業部門の具体的な業務内容を理解できているのは強みです。
法務部としても、相談しやすい環境整備を心がけています。例えば、当社はフリーアドレス制でリモートは週に2回可能なのですが、法務部のメンバーは出社の割合が多く、事業部門とのコミュニケーションも大事にしている他、担当の各地方支店や新入社員・若手社員向けに研修を実施する際も懇親を深めることを意識しています。

案件の情報共有やノウハウ・スキルの平準化のため、契約業務属人化の解消を目指す

それでは、Hubble導入前の課題を教えてください。

浜村

法務部では、当時業務が属人化していることで2つの課題を抱えていました。
1つ目は、知識やノウハウ・スキルの平準化、2つ目は、契約情報や契約書ドラフトをはじめとする成果物の管理手法の統一です。

まず1つ目の「知識やノウハウ・スキルの平準化」から具体的に教えてください。

浜村

先ほど、法務部の特徴として、配属されると長期間在籍することが多い、とお伝えしましたが、私は9年、白井さんも7年、原田さんも5年法務部に所属しており、もう1名の担当者は20年を超えます。
このように長期在籍する中で、個人としてはナレッジを蓄積できていても、部内でその蓄積されたナレッジが共有される仕組みがなく、業務内容も属人化してしまうことが部として長年の課題でした。
例えば、初めての類型の相談や審査を受ける場合に、過去に別の担当者が同種の相談や同類型の契約書審査を行った際のリサーチや検討過程・結果を参照したいと思っても、そもそも誰がどのような案件を担当し、どのような知見を持っているか把握できず、個別に相談しなければ他者のナレッジや過去の履歴を活用できる環境ではありませんでした。

Hubble導入前は、各人のナレッジをどのように管理されていたのでしょうか?

原田

各担当者は事業部門の担当者から個別にメールや電話で相談や依頼を受けた後、部内の共有サーバーにある各担当者別のフォルダの中に、担当案件の契約書ドラフトや関連資料を格納して管理する運用でした。
ただ、他のメンバーの個人フォルダまで勝手に見に行くのは心理的なハードルがあり、他人のフォルダからナレッジを参照するということはありませんでした。当時の社員のエンゲージメント調査でも、法務部では、ノウハウ・スキルの共有が行われないことに対する指摘がなされていたとも聞きました。

皆様、事業部門をご経験されて管理本部法務部に配属になった後は、どのように法的な知識や業務上のスキルを獲得されていたのでしょうか?

浜村

基本的にOJTで先輩から教わるしかありませんでした。2か月ほど先輩と一緒に案件の対応や打ち合わせに入る中で法的な知識や業務上のスキルを身に着け、徐々にリスクや難易度が低い案件を一人で担当するような仕組みでした。事業部門の担当者と案件の実際のやり取りをする中で勉強することも多いため、先輩や上司に相談しながら担当案件の対応をしていくうちにノウハウやスキルを身に着けていきました。
同様に、Hubble導入前に私は白井さんのOJTを務め、業務をOJTで逐一教えていかなければなりませんでしたが、部のナレッジを参照できる仕組みが整っていれば、新しいメンバーが入ったタイミングで、自ら検索をするなど教育の機会も広がったのではないかと思います。

原田

私が法務部に配属後にコロナが流行し、一時期完全にリモートワークだった時期がありました。その当時は電話やメールで相談をしていましたが、自主的に質問や相談ができなければ、なかなかナレッジを共有してもらうのも難しい環境だったかもしれません。

ありがとうございます。続いて、2つ目の「契約情報や契約書ドラフトをはじめとする成果物の管理手法の統一」について詳細を教えてください。

白井

個人フォルダ内での管理方法は各人各様で統一化されておらず、引き継いだ過去の案件の経緯がわからないことで問題が生じることがありました。

このような課題を抱える中で、Hubble導入の決め手を教えてください。

白井

当時の課題であった知識やノウハウ・スキルの平準化と成果物の管理手法の統一のいずれも解決できるシステムであったことはもちろん、他社サービスと比較した際に、契約書審査の履歴を残すための機能がシンプルで操作方法も分かりやすく、業務の属人化解消のためのシステムとしてのコストパフォーマンスの高さが決め手になりました。

Hubbleを初めて利用した時の第一印象を教えてください。

白井

私はトライアル時に初めて利用した時から、マニュアルを見なくても直感的に操作できる、わかりやすいシステムだと感じました。

原田

私も最初に利用した当初から、使い方に困った記憶はなく、非常に操作性が高いシステムだと感じました。

ありがとうございます。従来の業務フローから変更が生じることによる抵抗はありませんでしたか?

浜村

共有サーバーの個人ごとのファイルの管理方法がそれぞれのやり方であった中で、私自身は共有サーバーに自分のナレッジ・ノウハウや過去の案件の記録を細かに全て格納していましたので、最初はその切り替えを行う戸惑いがあったというのが率直な気持ちでした。
そういった気持ちもあり、導入当初はHubbleを積極的に使っていたかというと、サーバーに管理をした後、サーバーからダウンロードしたものをHubbleにアップロードするかたちでダブルスタンダードになってしまっていました。

そうだったのですね。そういったお気持ちを持たれていた浜村様はHubble導入に対して反対のご意見を表明されなかったのでしょうか?

浜村

導入には反対意見は述べませんでした。
というのも、ナレッジマネジメントの方法が変わることに対する個人の抵抗感はありましたが、会社全体としてもDXを推進していくことを目指しており、法務部においてもDXを推進していく必要性は感じていたためです。

共有サーバーへの情報集約と、Hubbleの利用にはDX推進という質的な違いがあると感じられたのはなぜでしょうか?

浜村

共有サーバーへの格納は、あくまで保管のためのものでしかなく、契約書ドラフト間の差分を2つの比較対象ファイルを立ち上げて、それぞれMicrosoft Word(以下「Word」という。)の差分比較機能で表示させたりWordの修正履歴機能で管理したりしていた一方で、Hubbleは、業務上のプロセスにおいて、契約書のドラフトの変更履歴、背景をバージョンの変遷として、任意のバージョンをファイルの立ち上げをすることなく見ることができるだけでなく、他者とも共有ができるという意味で、法務部全体の業務改善や効率化につながるDXを推進するシステムだという印象を持ちました。

ありがとうございます。Hubbleは管理本部法務部の課題を解決しつつDX推進をしていくことを期待されていたことがわかりました。

将来の代替わりを見据えた情報・ナレッジの蓄積・共有基盤を構築

現在、Hubbleにはどのように利用していますか?

原田

法務部全員で利用しており、Hubbleには、契約書や関連資料はもちろん、紛争関係の準備書面や通知書等、管理本部法務部で扱うドキュメントは広くアップロードして管理しています。

Hubble導入前の「契約情報や契約書ドラフトをはじめとする成果物の管理手法の統一」の課題は解決できたのですね。浜村様は導入当初はHubble利用に対する心理的ハードルがあったと思いますが、どのように乗り越えられましたか?

浜村

法務部に新しいメンバーが入った場合でも、過去案件の履歴を検索しやすいように残して共有すべきだと思うようになり、活用するようになりました。
また、利用開始後にHubbleでのバージョン管理ができるファイルの種類が増え、今ではWordだけでなくPDFやMicrosoft Excel(以下「Excel」という。)にも対応したことで、契約関連情報も含めてHubbleに情報を集約するメリットが増えたことも利用促進の後押しになりました。

白井

直近HubbleでリリースされたPDFをWordに変換する機能も非常に便利に活用しています。

ありがとうございます。Hubble導入前に抱えていたナレッジマネジメントの課題は解決できましたか?

白井

はい。契約書作成や条文の文言を修正する中で悩んだ際に、他のメンバーはどのようなワーディングをしているのか等、類似の契約類型、同種の条文や本文検索して参照することができるようになり、過去の案件や他のメンバーのナレッジを活用できるようになりました。
また、私は、法務部に新しいメンバーが入って来た時に参照することも見越して、Hubbleのコメント欄に各バージョンに対して、案件に関する事業部門担当者の意見、類似契約書の参考条文や参照した文献の解説等を転記するなど、個人のナレッジを契約書と紐づけて管理するためにも利用しています。

情報は溜まった後の活用が非常に重要になるので、将来を見越した利用の仕方は素晴らしいですね。Hubbleをご利用いただく中で感じている定量的な効果があれば教えてください。

白井

Hubble導入前は、事業部門からメールで相談や審査依頼を受け付けた後、部内での案件管理のために、グループアドレスにメールを転送して、転送されたメールを管理本部法務部の庶務担当者がExcelに案件を転記して案件管理を行っていました。
しかし、Hubble導入後は案件管理をHubbleで行うようになったため、この庶務担当者の案件管理のための転記作業が一切なくなりました。削減した業務時間を他の業務に充てることができ、導入目的の一つであった、法務部のDX推進にもつながっています。

ありがとうございます。最後に今後の展望を教えてください。

浜村

私も法務部に所属して10年目になりますので、今後部員の代替わりも考えられます。法務部では長年業務の属人化が課題になっていましたが、次に来る後輩のためにも私のナレッジやノウハウをHubbleに残し、活用してもらえる環境づくりを意識していきたいと思います。

白井

私も、法務部に新しく配属になる方が成長できる環境を作りたいです。私自身の経験からも、自ら情報やナレッジを探しやすいように情報を残すことは非常に重要だと感じています。新しい方の成長は会社全体の成長にもつながっていると思いますので、これからもHubbleの活用を通じて将来の会社の成長に寄与していきたいです。

原田

私も、二人と同じ気持ちです。いつか来る後輩のためにも、まず今私自身がもっとHubbleを活用していきたいと思います。

貴重なお時間をいただき、素敵なお話をお聞かせいただきありがとうございました!

会社概要(2025年6月現在)

Company Profile

会社名 東急建設株式会社
所在地東京都渋谷区渋谷1-16-14 渋谷地下鉄ビル
設立 2003年4月10日
代表者代表取締役社長 寺田 光宏
事業内容総合建設業
URLhttps://www.tokyu-cnst.co.jp/

より詳しいお話をご希望の方は、お気軽にお問い合わせください。
Hubbleの詳細についての資料も、こちらよりダウンロードできます。

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