「”Entertainment in Real Life” エンターテインメントで日常をより楽しく、より素晴らしく」をMissionとし、最新のテクノロジーと、独創的なアイデアで「新しい体験」を世界中に届けている株式会社コロプラ。
「事業の合法性・合理性を確保し、ビジネスソリューションを提供することでグループ企業価値の最大化に貢献する」をミッションとする同社法務知財部法務グループは、立候補により組み合わせた2チーム体制で各案件を担当しているといいます。各案件に対して一人ひとりがまず自分の頭で考え、チームで建設的な議論を行いながら法務サービス品質を向上させている法務グループは、こうした協業環境をどのように整えているのか。
同社取締役CLO /法務知財部長 山崎聡士様、同部法務グループ 阿部和輝様及び同グループ 中條秋子様に、理想的な法務組織の体制とHubbleの活用についてお伺いしました。(取材時:2024年9 月)
本記事のポイント
Over view
- 同社の法務の概要(2024年3月現在)
- 人数:9名(法務知財部18名のうち、法務グループ9名)
- 契約書依頼件数:約100件/月(契約書審査50~60件、法務相談40~50件)
- 導入前の課題
- 2名1チーム体制の組織を構築する際に複数人で円滑に業務遂行するための環境の整備
- 複数人で契約書や社内規程を共同編集する際の履歴やコミュニケーションの効率的な管理
- Hubbleの利用範囲・利用文書類型
- 法務グループ全員
- 契約書、社内規程、共同編集が発生する文書全体
- 導入後の効果
- 理想的な法務組織体制の構築と各メンバーが担当案件を自分の頭でしっかりと考える環境の実現
- 契約書や社内規程等の複数バージョンが蓄積されるドキュメントの共同編集の円滑化
- チーム内での議論・コミュニケーションの活性化
暗号資産や知財を含めグループ企業価値を最大化するため、法務業務もチーム力を発揮
本日はよろしくお願いいたします!早速ですが、貴社の法務の概要を教えてください。
山崎
私は取締役CLO/法務知財部長として法務知財部を管掌しています。法務知財部全体は私を含め18名所属しており、法務グループ9名、知財グループは8名の体制になっています。
法務グループにはさらに株主総会対応及びそれに伴う株式事務や登記事務を行うコーポレート法務チームと、取引契約の審査や法律相談、紛争処理などの対応を中心とする事業法務チームが存在します。もっともこのチーム編成は、専門分化させるためというよりも、各メンバーが注力する領域について他のメンバーと認識を合わせることを目的としたものです。
山崎様は法務知財部部長の他、取締役CLOでもいらっしゃいますが、CLOとしての役割や業務範囲についても教えてください。
山崎
当社での所掌範囲は取締役CLO/法務知財部長として法務と知財の全体を管掌しており、グループ企業では、ブロックチェーン技術、暗号資産やNFTを活用したWeb3関連事業を展開している子会社であるBrilliantcryptoの法務担当取締役の立場でもあります。
先月(2024年9月3日)、同社が発行する暗号資産「BRIL(ブリリアンクリプトトークン)」が、グローバル暗号資産取引所で上場したというニュースがありました。
山崎
そうなんです。この6月にBRILのIEOを実施したときはCoincheck IEO史上最高額の申し込み金額となる333億円を達成し、その後も海外の暗号資産取引所への展開も積極的に推進し、お陰様で、ますます注目度が高まってきています。
暗号資産を用いたWeb3ゲームは、資金決済法、犯罪収益移転防止法、金融商品取引法による集団投資スキーム持分(ファンド)規制や賭博規制、アメリカをはじめとする海外の法規制やクリアランスが関わる複雑な領域です。そのため、CLOとしての私自身のミッションは、法務に関してはこうした複雑にリスクが絡む分野において適法に事業を推進するためのコンプライアンス経営を行い、また、知財に関しては経営戦略と連動してゲーム業界における優位性のある知財の創出に向けた知財戦略を実行するなど知財経営を推進することにあります。
いずれのミッションも、グループ企業価値向上の最大化につながっているものと思います。例えば、株式会社パテント・リザルトが公開しているゲーム・エンターテイメント業界における特許の「他社牽制力ランキング」において、当社は2020年時点で10位、2021年時点で7位だったランキングが2022年及び2023年には6位まで上昇し、モバイルゲーム業界では実質トップランキングになりました。
そうすると、貴社において求められる法務人材の知見やスキルはかなり高度なものになるのではないかと思うのですが、契約業務はどのように割り振られているのでしょうか?
阿部
案件のアサインについては、法務グループで毎日開催している案件割振り会議で行っています。
割振り会議では、その日依頼があったすべての案件の法的論点や注意点等をメンバー全員で話し合った上で、立候補制で2名が1つのチームになり、各案件を担当します。この2名1チーム体制は固定的なものではなくランダムな組み合わせになりますので、様々な案件をバランスよく経験する機会が担保されています。
法務の各メンバーが様々な経験をできる体制づくりが整っているのですね。
山崎
私が長年法務を経験してきて解決すべきだと考えていたのは、法務の「個人商店化」です。経験・知識やスキルが属人化すると、法務のサービスレベルにばらつきが生じますので、当社法務グループでは、アウトプットの品質を平準化して「フランチャイズ」で法務サービスを提供することを目指しています。
また、大きな企業では「配属ガチャ」といわれるように、所属した部署・チームによって身に付く能力に偏りが出てしまうことも問題ではないかと考えています。各領域における高度に専門的な分野については、「専門医」である外部弁護士に依頼をすればよいので、社内の法務は全員が「総合医」として、問題になりそうな論点の整理をした上で、社内外のリソースを適切に利活用する能力を備えてもらいたいと思っています。そのためには若手の頃から多様な案件を様々なメンバーと一緒に経験した方が良いと考え、こうした体制を構築しました。
なるほど、2名1チーム体制は一人ひとりの能力を最大限伸ばしながら法務サービスの品質向上を行うための仕組みであると理解できました。
中條
現在のチーム体制は、自分で出した答えに自信がないときにもメンバーと議論を深めることができる素晴らしい環境だと感じています。
当社の法務グループには、有資格者をはじめとして、さまざまなバックグラウンドや経験を持つメンバーがいるので、同じ論点に対しても、幅広い視野や様々な背景を持つメンバーとの議論は非常に勉強になります。法務メンバー全員が「チームで仕事をする」という感覚を持ちながら、チーム力が発揮できる組織構成であるのが当社の法務グループの特徴です。
2名1チーム体制での契約書審査は役割を固定せず、Hubbleを使って全員が自分の頭で考える
貴社法務グループで審査を受け付ける契約書や法務相談の案件数、契約類型の特徴等を教えてください。
阿部
新規契約審査依頼件数は月平均50~60件です。
当社はいわゆるソーシャルゲームがメインの事業ですので、景品表示法や取引規制、個人情報の取り扱いの相談も多く、月平均40~60件の法律相談案件が発生します。当社でもエンターテイメント事業と投資育成事業の両方を展開しておりますので、資金決済法をはじめとするファンド規制に関する相談もありますね。契約類型は、ゲーム制作会社への制作委託や他社とのタイアップに関する契約書の占める割合が高く、NDAや人事関連契約書の他、個別対応が必要な契約類型も一定数あります。
契約書は2名1チーム体制で取り組むとなると、一人20件以上を担当されていると思います。2名1チーム体制では、各案件の一次・二次レビュー担当者あるいは主担当者・副担当者を決めるのでしょうか?
山崎
いいえ。各案件の主・副や一次・二次は決めて取り組まないようにメンバーにも常々伝えています。というのも、主・副を決めてしまうと、副担当者は、表記ゆれやインデントのずれ等の表層的なチェックを行うにとどまってしまうケースが多く、いくら案件をこなしても自分の力にならないと考えているからです。
大切なのは常にオーナーシップを持って仕事をすることで、「自分の案件」と思って取り組むか、「副担当としての案件」ととらえてしまうのかによって得られる知識・経験の濃度が変わります。2名1チーム体制では、各チームメンバーそれぞれが自分の頭で考えてから議論をしながら進めることで一つの案件から得られる経験や知見が深まるというメリットがあります。
2名1チーム体制で案件に取り組む際には、具体的にどのようにチームとして取り組むのでしょうか?
中條
毎日行っている割振り会議では、各案件の初動の方向を間違えないように、法務グループメンバー全員で各案件に対して法的論点や注意点などの課題抽出を行います。
担当案件が決まってからはまず一度自分の頭で考えた上で、わからないところや悩むポイントを、もう一人のメンバーと議論します。その後、各人が考えた通り契約書を修正して、修正結果を照合しながら最終的にチームで一つの結論を出す、という流れです。
山崎
ここで非常に役立っているのがHubbleですね。
契約書審査を割り振った後、各案件の契約書をHubbleにアップロードして審査を開始するのですが、Hubbleは複数人による同時編集も含め、誰が、いつ、どのような修正を行ったかの記録を残すことができます。さらに、ブランチ機能を用いて、2名の議論の結果を踏まえて、複数人による異なる編集を統合することで共同編集もできるため、当社の法務グループでとっている2名1チーム体制における契約書修正の議論や記録に不可欠なツールです。
ありがとうございます。確かにHubbleのブランチ機能による同時編集や統合機能は、貴社のフラットな2名1チーム体制と非常に相性が良いですね。
中條
同時編集になることはタイミングとして多くはありませんが、チームメンバーの片方が編集中でも気にせずに自分も編集履歴を残していけるのが非常に助かっています。
各人が契約書を修正し、悩んだポイントは指定箇所コメント機能を活用してメモします。その後、他方のメンバーにメンションして壁打ちをします。チーム内での議論もコメント機能を活用しています。
理想の組織体制を考えた時、Hubbleは必須のツールだった
Hubble導入のきっかけや導入の経緯についても教えてください。
山崎
私は前職からHubbleを活用して契約業務マネジメントを行っていました。当社の法務知財部長に就任し、理想の組織体制を考えた時に、先ほどお伝えした2名1チーム体制で業務を行うにはHubbleは必須のツールだと考えて導入しました。
というのも、バージョン管理一つとっても、Microsoft Wordの変更履歴機能では、チームのうちの片方のメンバーが削除した条文をもう片方のメンバーが必要だと考え復活させるなどしながら、どこをどのような背景で誰が修正したのか、共通認識を形成しながら議論を行うのは非常に困難です。
また、対外的なコメントと社外には出てはいけない社内での壁打ちの議論のコメントを分けながら、気兼ねなくコミュニケーションを活性化してコメントができるのも素晴らしいですね。
Hubbleは、単に契約書を管理できるツールではなく、グループウェアです。Hubbleがなければ、2名1チーム体制での業務環境を作ることは非常に困難です。
中條
実は、私も前職でHubbleを活用していました。
当社に入社したのは山崎部長が既に当社にHubbleを導入した後でしたので、転職後もHubbleを活用しながら業務に従事できるのは非常に嬉しかったです。前職でもHubbleの利便性を感じていましたが、当社入社後は、自分が担当することになった契約書と類似する過去の契約書をHubbleで検索して過去の議論検討過程を参照することができ、改めてHubbleの価値を感じました。
他にも、法務でファイナライズした契約書の内容と稟議に添付されている契約書に差分がないかを、Hubbleの比較機能を活用して効率化するなど、前職からずっとお世話になっています。
阿部様は貴社で初めてHubbleを利用されたと思うのですが、初めてHubbleをお使いになった印象を教えてください。
阿部
Microsoft Wordの比較機能よりも、契約書の差分表示が非常に見やすいと感じました。また、システム画面が非常にシンプルで直感的に操作できました。
最近では法務知財部の所轄する社内規程を3名で全面改訂したのですが、30バージョンまで積みあがった改訂作業の際も非常に重宝しました。3名がそれぞれの視点から追記・削除・修正作業を行っていく際に、Hubbleを使わずにWordの編集履歴で管理していたら、変更箇所がわかりにくく管理しきれなかったと思います。一人の修正作業が終っているかどうかを気にせずに同時編集できるのも、やはり便利でしたね。
山崎
その意味では、Hubbleは契約書に限らず、広く共同編集を必要とするドキュメント全般で活用していこうと考えています。
当社はアプリの利用規約やプライバシーポリシーを定期的に改訂する必要があるのですが、Hubbleで利用規約やプライバシーポリシーの版管理も始めています。修正履歴が多数蓄積していくと、前のバージョンに戻るときに煩雑になるため、「安易に編集できない」と思うメンバーもいると思うのですが、Hubbleは分岐した議論の末に前のバージョンにすぐに戻れるので、萎縮せず自由な発想で編集できる環境にもなっていると感じます。
中條
前職でも社内規程等、契約書以外の法務が関わるドキュメントをHubbleで管理していました。法務と総務で社内規程の議論をした後、改訂の経緯や議論過程をHubbleで履歴とセットでコメントを残せるのも非常に便利でしたね。
自社の理想状態を実現するために必須のツールは費用をかけても導入すべき
Hubbleを導入される際、予算獲得に苦労されたのでしょうか。
山崎
私自身は長年法務業務に従事する中で、今ほど企業法務に有用な情報にアクセスする術がなく、特に一人法務時代には何が正解かわからないという状況を経験しました。しかし、今のメンバーにはそういう経験をせずに、早く立ち上がってもらいたいと考えています。
世の中の変化のスピードは増すばかりで、昔と違って、今はコスパのみならず、タイパを意識して仕事することが法務にも求められています。ですので、必要な情報に即時にアクセスするために合理的に必要なシステムであれば費用をかけてでも導入しています。
メンバーに対しても、一つの問題に対して考えるのは5分以内にすべきだと伝えています。というのも、5分考えて何も答えが出ないのであれば、その人の中から答えを出すことは難しく、人に聞いたりリサーチしたりして外にある答えを掴みに行く必要があるからです。その際に使えるツールはどんどん活用してもらいたいと考えています。
最後に、貴社の展望について教えてください。
山崎
法務サービス品質を高めることは、結果的にグループの企業価値の最大化につながります。
したがってリーガルオペレーションズの視点を用いながら、自社法務がどのような要素で構成されており、どのような強みと弱みがあるのかをしっかり分析していきたいと考えています。米国版のCORE12や日本版のCORE8の中でもテクノロジーの活用については業務効率化の文脈で検討を進めることができていますが、各要素それぞれについてしっかりと自社の理想状態を考え、その理想から今どこを改善していくべきか考えた上で、理想を実現する現実的な手段を検討していきたいです。
阿部
法務知財部としての「事業の合法性・合理性を確保し、ビジネスソリューションを提供することで、グループ企業価値の最大化に貢献する」というミッションを達成するために、Hubbleを活用しながら、効率的にクオリティの高い業務を推進していきたいです。
中條
チーム力を発揮しながらミッションを達成するために、一人ひとりが働きやすい環境を整えたいです。日々の業務を効率的に遂行できるように、Hubbleを含むテクノロジーの活用も今後一層進めていきたいと思います。
本日は素敵なお話をありがとうございました!
会社概要(2024年10月現在)
Company Profile
会社名 | 株式会社コロプラ |
所在地 | 東京都港区赤坂9-7-2ミッドタウン・イースト6F |
設立 | 2008年10月1日 |
代表者 | 代表取締役社長 宮本貴志 |
事業内容 | エンターテインメント事業・投資育成事業 |
URL | https://colopl.co.jp/ |
より詳しいお話をご希望の方は、お気軽にお問い合わせください。
Hubbleの詳細についての資料も、こちらよりダウンロードできます。