皆さん、こんにちは!
2020年11月4日(水)、BUSINESS LAWYERS/弁護士ドットコム株式会社主催「Legal Innovation Conference 〜法務のDX〜」がオンラインで開催されました。
弊社Hubbleからは、CEO早川とCLO酒井が、株式会社ビズリーチ(Visionalグループ)法務室室長で弁護士の小田様とともに登壇しました。
その中で、「リーガルテックは法務組織のどんな課題を解決するのか~Visionalグループが考えるリーガルテック導入活用の意義」というテーマで、小田様と酒井による対談が行われました。
非常に反響の大きかった本対談をより多くの方々にお伝えするべく、本記事では、こちらの対談内容をほぼそのままの形で掲載しております!
是非ご覧ください!
(以下、敬称を省略して表記しています)
Hubble酒井パート
リーガルテック導入によっては何も変わらない。
酒井
本日は、私とVisionalグループでビズリーチの法務室長の小田さんとで「リーガルテックは法務組織のどんな課題を解決するのか」というテーマについてディスカッションしていきたいと思います。
私は、これまで法務関係者約1000名近くの方々とお会いして、課題のヒアリングなどをさせていただきました。その中で、「ちょっとリーガルテックの導入を検討してるんですよね。」とか、「来期何かリーガルテック入れたいと思ってます。」とかっていうお話をよく伺います。
ただ、私からは本日、「リーガルテック導入によっては何も変わらない。すべては、何を解決し、何を実現したいか。」であるというメッセージをお伝えしたいと思っております。
酒井
どういうことかというと、「あくまでリーガルテックは手段であるということを前提に、理想の業務フロー・理想の組織・理想の働き方の実現に向けて、今ボトルネックになっている課題を特定して、それを解決していく」、そういう考えで、リーガルテックについてお考えいただいたうえ、導入に向けて進んでいくというステップが非常に重要なのかなと思っています。
特に今回のセッションでは、小田さんと一緒に、解決すべき課題というものにフォーカスしてお話ができればと思っております。
法務組織の課題とは
酒井
まず、実際に課題を特定していくために、いま自分たちがどういうワークフローで業務を行っているのかを考えていく必要があると思っています。
弊社のサービスは契約業務にフォーカスしたサービスですので、たとえばHubbleのユーザー様で、既存の契約業務のフローがどのようになっているのかについて、ユーザー様にヒアリングさせていただいています。簡単に整理した図の一例がこちらです。
酒井
まず①事業部門からの契約審査の依頼、そして依頼部門とのやりとりはメールであったり、最近だとTeams、Slackというチャットツールで行います。依頼があったと同時に、Excelで並行して案件管理表を作ります。
社内でのやり取りと相手方とのやり取りを踏まえて、②契約の承認プロセスに入ると、社内の既存システムが走るということになります。
③締結する段階に入れば、ほとんどはまだ紙ベースで行われていて、一部は電子契約に置き換わっています。
④締結後の管理に関しても、Excelで台帳を作り、紙で保管するものに関してはファイリングするという形で契約業務を行っている企業様は少なからずあるのではないかなと思っています。
こうしたワークフローにどういった課題があるかということを考えてみると、例えばこのような感じで出てきます。
酒井
契約審査の依頼の段階では、先ほどのようにメールやチャットでバラバラに五月雨式に依頼が来ること、契約審査の段階でいえば、メールとWordで大量にバージョン管理が発生したり、ドキュメントの管理が煩雑になっていることという課題が出てきます。
しかし、これで既存のワークフローを前提に課題が特定できたかというと、これだけでは個人的には不十分だと思っています。
なぜなら、これはまだまだいわゆるメンバー、手を動かす方々のみの課題です。これを抽象化して、組織として見たときにどういう課題になっているのか、さらに言うと会社全体としてどういう課題を抱えることになっているのかというところまでを紐解いていくことで、リーガルテックにより解決すべき課題を特定できるようになると思いますし、そこまで考えるべきだと思っています。
では、どういう風にやっていくかっていう私の考えを、後ほどのパネルディスカッションの中で、小田さんと一緒にディスカッションをさせていただければと思っております。それでは一旦、小田さんの方にバトンタッチしたいと思います。
Visionalグループ小田様パート
ツールを導入する前に課題を明確にすること
小田
私の方からは、Visionalグループの法務組織において、どんなことを考えてリーガルテックのツールを導入しているのかという背景を、簡単にお話しできたらなと思っております。
まず自己紹介として、私は小田と申しまして、2007年に司法修習を61期で終えてから、最初8年間、法律事務所で勤務をしておりました。そこから出向や留学を挟んで、四年ほど前、ビズリーチに転職をしてきました。最初はもう法務をやめるつもりで、営業であったりとか企画系の部門であったりとか色々やってきたんですが、去年の10月から法務に戻ってきました。
小田
今日伝えたいことはこちらで、ツールの導入というのはたしかに大事なことではありますが、それを考える前にどんな課題を解決したいのか、ということを明確にしないといけないという、人によっては当たり前の話です。ただ、結構見落とされがちというか、意外と深く考えられていないこともあるのかなと思いますので、今日はここを強調してお話ししたいなと思っております。
まず、当グループの法務組織の背景を理解していただくために、簡単にご紹介できればと思っております。
ビズリーチという会社をCMなどでご覧いただいた方も多いかと思うのですが、今年2月にビズリーチは持株会社の体制に移行しておりまして、ホールディングスとしてビジョナル株式会社というものがございます。私が所属している法務室が株式会社ビズリーチという子会社に所属し、そこでグループ全体の法務機能を統括しているという形です。
まず法務組織のメンバーの人員構成、これが実は私が一番直近苦労してきたところでした。私が法務室長に着任した今年の2月の時点で、法務の正社員は3人しかいませんでした。従業員数も当グループ全体でいうと1000名を超えていますし、事業の数も10前後というところで、その業務の量としては他社と比べても少なくはない水準だったと思います。その中で3名というのは、皆さんも想像していただけると分かると思うのですが、相当苦しい状態からのスタートになりました。
その当時を支えてくれたメンバーには今でも感謝してるんですが、それが今では6名、もうすぐ増員して7名になる予定というところまで来ております。
Visonalグループ法務の課題
小田
そんな当グループの法務組織の課題についてお話ししますと、先ほど事業の多さについてお話ししましたが、まず1つ目が、これに付随する問い合わせ件数の多さでした。
色々と前提が違うので数を単純比較できませんが、大体皆さん月間でいうと100件とかその前後で問い合わせ件数が推移されている会社さんが多かったんですが、当グループだと約300件ありました。これを3人で対応するのは、ボリューム的に非常に難しい状態でした。
小田
その中で業務の属人化が顕在化していました。
例えば、次に示す会話って皆さんももしかしたら記憶にあるかもしれません。同じような問い合わせがきた時に「ああ、よくあるアレですね。」という内容を聞いた時です。
僕も着任した当初はよく「これって、過去に質問あったの?」と聞くと、その担当者の頭の中にはあるんだけれども、それが文書化されてなかったり、ファイル自体が担当者のデスクトップに置いてあったりとかして、それを取り出すのにちょっと時間がかかるような状態でした。それが法務組織の課題でした。
もう少し抽象化すると、そもそもの問い合わせ件数300件というのが3人で処理できる限界を超えているということもあって、業務自体がひっ迫している中で、先ほどの属人化を解消するためにリーガルテックを入れて活用しようと言ったところで、その活動をする余力すら残ってない状態でした。
また、当グループ全体でいうと、まだ成長フェーズにございますので、事業の数とともに法的論点も増えている。さらに、グループ経営体制への移行も今年の2月のタイミングだったので、その前後というのは様々な対応に追われました。そういった状況下で、このスパイラルを一向に解消できないという状態が続いてしまっていた、というのが今年の初めまでです。
導き出した解決への「3つの柱」
小田
ただ手をこまねいているわけにもいかないので、どういう順番で課題を解決すればいいのか考えました。ツールを導入して云々というところも当然頭にはよぎるんですが、いきなりそこから考えるのではなくて、まずは順を追って考えていこうと、問題を紐解いていきました。私の中ではこの3つを大きな柱として考え、これらを戦略としました。
小田
その中で業務の属人化が顕在化していました。
1つ目がまず採用です。
兎にも角にも、改善のためのリソースが足りていなかったため、まずはその組織の立ち上げフェーズにジョインしてくれる仲間を募るため、採用に踏み切りました。結果的に今日の時点で3人から6人まで増えているので、そこに関しては大成功しているかなというところで。これでようやく下の二つが着手できる状態になりました。
下の2つというのが、当グループではもともと問い合わせの経路が、Slack で来ていたり、営業側で使っている Salesforce から問い合わせが来たり、色んな所に問い合わせの経路が分岐していて、総数などの管理も難しい状態でした。なので、それを一元化・可視化することをまずやりました。
私自身もすごく手を動かして色々な質問に対応してたのですが、「これまた同じこと聞かれてるな」とか、「隣の人に聞いたら一発でわかるかもしれないのにな」みたいな問合せが、さきほどの300件を構成していたことがわかりました。それらをナレッジ化することで問い合わせの数をそもそも減らしていこうと考えたわけです。
最後に、「車輪の再発明」っていうことを私はよく言うんですけれども、一度一人が苦労して作り上げたものというのは、もう一人が同じ苦労する必要はありません。一度作ったドキュメントをベースに次の人が考えられるようにしておきたいというところで、3点目の知見の共有化を進めて行こうと考えていました。
「知見の共有化」とHubble
小田
2つ目の業務効率の改善は、問い合わせ件数が可視化されるなど、実際に社内向けに公開した事業部向けのナレッジがクォーターだけで133件、法務のメンバー総動員で対応してその作成を完了しました。最後に大事なポイントとして、Hubbleも導入させていただいて、762件のドキュメントが今日の時点で共有されている状態です。
問い合わせ施策の実行による変化を、分かりやすく当グループの中にあるデータとかを使ってご説明できればと思います。問い合わせの件数が、元々300件あったが現在は減少しています。そもそも可視化できなかった状態から可視化できるようになったというところが大きな進歩です。
その次が、社内のナレッジで、「わかりやすくて困る約款解説シリーズ」と名付けた物を作り、社内向けに公開して、これ見たら解決するよっていう状態を作っていこうとしています。ナレッジの閲覧件数などもデータで取れるので、これをもとにナレッジのブラッシュアップに使っていきたいなと思っています。
小田
さて、Hubbleがどんな活用がされてるなんですけども、ちょうど5月から6月で大きなジャンプをしてるのが分かると思います。実は5月に入社してくれたメンバーに、このHubbleの活用の担当をお願いしました。こちらの担当者が活用のルールなどを定めてくれて、法務のメンバー内で活用を促進してくれたことから一気に活用が進みました。
そして、私がHubbleを使わせて頂いていて、一番肝の機能だなと思っているのが、本文の検索機能です。これがちょっと優秀すぎて手放せないなという感じが正直しています。
小田
本文・文言ベースで検索できるってことが本当にありがたくて、何も考えずにポンポンとドキュメントを放り込むだけで、後でその文言を引っ張り出せる安心感が本当にうれしいなと。Hubbleには本当にお世話になっているという感じです。
大事なことは「課題ファースト」であること
小田
ちなみに、私はHubbleを導入すると最初から決めていたわけでは全くなくて、先ほどお伝えしたように、この課題を順番に解決していく解決策の一つとして、このタイミングでHubbleを導入をさせて頂いたという背景があります。
まずは入れてみようという発想も大事ではあるんですが、基本的にはどの課題を解決しに行くのか?という点を大事にしないといけない、と私は強く心がけています。
なぜかと言うと、結局、どんな良いツールであっても、徹底的に使わなければその価値を感じられないんですよね。Hubbleも実は5月まで私が導入して使ってみようとか言っていたんですけど、月に10件くらいしか書類がアップロードできなくて、Hubbleのありがたみを感じることができなかったんですよ、正直。それを徹底的に使いこなすところまで行って初めてすごいなと思えるようになったので、実行することを考えた時に、やはりその課題が明確でないと、結局その実行は続かない。そういう意味でこの課題を考えるということが大事になるのかなというところです。
ビズリーチ小田様×Hubble酒井 パネルディスカッション
法務組織の具体的課題を特定する上でのポイント
酒井
続いて、小田様とのディスカッションに移りたいと思います。
まずはじめに、「法務組織の具体的課題を特定する上でのポイント」というテーマでリーガルテックのユーザーとベンダーというそれぞれの立場からお話ができればと思います。まずはVisionalグループさんの方で、どのようにして課題を特定したのかというプロセスや、そのポイントについて、小田さんのお考えをお聞かせください。
小田
先ほどの太陽誘電様のお話にもあって、ほんとうにその通りだなと思ったのですが、ボトルネックを可視化できなければ本当の意味での課題を特定することはできません。そのため、まず可視化することは大事です。ただ、当グループでは、可視化するフェーズよりも前のフェーズにあったので、実際に手を動かしてみて、ここが課題だということを肌感で探っていくしかなかったですね。今はそこから徐々に可視化の方向に向かっているという感じです。
酒井
法務室長の小田さん自らが手を動かして進めていったのですね。
小田
私も手を動かさないと処理しきれる案件の数ではなかったので…
酒井
法務の担当者の方とお話しさせていただくと自分達は非常に疲弊してるんだと、それをマネージャーに説得しに行くのがかなり大変で、その説得にさらに疲弊してしまって、結局手つかずになってしまうみたいなことがありがちかなと思っています。小田さんは、実際に手を動かされていて、担当者の気持ちを理解していたという前提があったのかなと思いますが、マネージャーに課題を上げて行く時のポイントがあれば、教えていただけないでしょうか?
小田
責任者は現場で何が起きているかを把握すべきことだと思うのですが、責任者が手を動かすことがすべてではないし、メンバーが増えて実際に私も手を動かすことが減ったので、それがあるべき姿だと思います。ただ、責任者が現場での課題を把握するのは大事で、それができないと施策を考えられないと思います。
酒井
私が出したスライドで、業務フローについて今どういう仕組みシステムを使っているのか、そして、ここに誰が絡んでいるのかというのを可視化して、課題を特定していくというイメージでしょうか?
小田
それが正当なやり方だと思うのですが、私がそういうことが得意じゃなかったこともあり、単純に手を動かしていました。実際には、「これが課題では?」というのは直感的に分かりますし、それを法務の3人で話していると3人とも満場一致で課題に感じていました。
酒井
ベンダー側としては、この課題に対して、このシステムを使って解決していきましょうという提案をする際、ここの工数がこのぐらい削減でき、現状で時間がかかっているところを特定して、Hubbleを入れるとこのぐらいに時間が短縮されますっていうような定量的な数値を頑張って出しに行こうとするのですが、そういうプロセスも実施されていましたか?
小田
Hubbleに関しては、それはやっていません。Hubbleにおいては、法務の工数がどれだけ削減されますという話は、あまり本質的ではないというか、それを導入して月いくら工数減りましたとって言っても会社のコストとしてはむしろ増えている。その分人件費を削減しますという話でもない。
むしろどれくらい工数が減っている、あるいはどうプロフィットに貢献しているか、PなのかLなのか、どちらに効いているのかというのを、法務組織だけでなくて、事業部門まで広げて考えないといけない。法務に問い合わせが来るってことは、事業側は問い合わせを起票して、回答が来るまでの間待っている状態です。つまり、営業担当の工数を使っていて、かつ、受注までのリードタイムが伸びる。このように考えるとプロフィットにとってマイナスのインパクトを起こしているはずで、その点で言うと、単に工数を削減されます、自分たちが楽になりますという理由でHubbleを導入しましょうというのは本質的ではなくて、「売上を上げるための活動を滑らかにするためのツール」という説明をすべきだと感じています。
酒井
今の点に関しては、非常に共感します。私どもがベンダーとして訴求するポイントをスライドに載せてみました。
酒井
担当者の課題をどう組織の課題に転換していくのかを説明する時に、定量的な要素が重要であるかなと思うので、まず1つ目が定量的要素として課題を考えていくのかなと思っています。つまり、このぐらい時間が削減されるという、いわばPL的な発想ですね。メールでやっていたやりとりの課題がこのような形で、Hubbleを入れるとこのぐらいのコスト削減になる。これがベンダーとして提示できることかなと思っています。
他方で、やはり管理系のサービスでこういう数字を出しても正直そこまでインパクトはないし、先ほど小田さんのお話でもあった通り、Hubbleを使いこなすためには、一定の非効率な期間というのが生じてくると思っています。
そうするとやはり、この2つ目の定性的要素をどう訴求していくかが非常に重要かなと思っています。先ほどのようにぶつ切りに業務をやっていると、太陽誘電の佐々木さんの「個人商店 or 量販店」という比喩もあった通り、組織体勢体制をガラッと変えていこうという姿勢、つまり、短期のコスト削減という視点を超えて、中長期的に組織体制を変えて行く、投資的な発想が必要だということです。おそらくこれを考えていく必要があるんじゃないかなって思っています。
リーガルテックの初期段階で導入していただいている企業は、まさにこういう発想を持っているのかなと思うんですよね。リーガルテックを入れてすぐ工数削減できるだから入れる、というよりも中長期的に組織体制を改善していくために、データを基盤に組織の体制や働き方というものを理想に近づけていく、みたいなところまでお考えになられている企業が、リーガルテックを入れてくださっているのかなというのは、多くの方と話していても思いますね。
小田
当グループもちょうどさきほどの話でいうと、個人商店から量販店に移り変わるフェーズだったので、ちょうどそのタイミングで出てくるその情報の共有化みたいなところは、その瞬間はそんなに大きな課題ではないのですが、中長期でみるとすごく致命的な課題になると見えていたので、リーガルテックのツールを導入するに至りました。
酒井
本当に短期的な目標と中長期でどう考えいくのかというところの両輪で考えていくと、具体的な課題が特定されて、リーガルテックの導入への意思決定につながっていくのかなと思います。
小田
ただ、最終的に投資の判断するのは経営者なので、経営者の目線に立って考えるならば、法務の目線だけで考えるのは本質的でない場合が往々にしてあります。法務も結局は営業と合わさって、利益を得るための仕組みの1つに過ぎないので、それが全体像としてどうなるのかをセットで考えないといけないと思います。
酒井
法務というものが効率にワークする環境を作ることによって企業価値を最大化することができるということまでつなげて説明できると、導入にも進みやすいのかなと考えています。
リーガルテック導入後、活用段階のポイント
酒井
リーガルテックを導入後活用していく中で結構労力が必要だというお話が出ていたので、実際に活用する際のポイントについて、小田さんが感じているところをお聞きしたいです。
小田
大きく言うと二つあります。
まず1つ目は、専任の担当者を配置することです。ツールというのは、覚えることが大変だし、最初はどうしても非効率なタイミングが起きるものです。そのため、みんなになんとなくこれあるよと言っても、新しく覚えるのは面倒くさいとなって辞めてしまいがちです。そのため、ちゃんと担当者を配置して、まずはその担当者に覚えて、使いこなしてもらいます。その上で、シンプルなルールに落とし込んでもらい、伝播させていくことが必要なことかと思います。
2つ目は今の話に出てきたルール、それもシンプルなルールを作ることだと考えています。
酒井
例えば、そのシンプルなルールって Visionalグループさんの場合、どういうルールでしたか?
小田
どういう時にHubbleにドキュメントをアップするのか、アップするドキュメントにこういう名前をつけてください、というものです。
<編集注>
同社では契約書・自社サービスの約款、社内の規定類、セミナー資料、議事録などを、Hubbleにアップロードされています。
酒井
それは何か「ドキュメント利用ガイドブック」みたいなみたいなものを作られたイメージですか?
小田
ワードで一枚くらいにまとめました。ただ、現時点ではそれすら負担が重いのではないかと感じて、修正しようかという話になっています。
酒井
例えば、実際に今の流れでリーガルテックの活用を進めていこうと思った時に、専任の担当者を置いて、その方が説明会を実施するという形で組織の中で使い方が浸透していくという感じですかね?
小田
法務の定例会でこういう風にルール決めました、こういう風に活用していってくださいという感じでやっていきました。そうすると、割と「とりあえず、やってみます!」と、みんなが快く動いてくれました。ただ、実際は面倒な部分は少なからずあるはずなので、軌道に乗るまでの間は、みんなの理解も必要ですよね。
酒井
今までのフローをちょっと変えるだけでも、今までの方が楽だったという方も多いと考えていて、それに対して、組織としての方向性を決めていくことも重要でしょうね。
小田
あとは、活用の意義ですね、それが最終的にどこに繋がるのかという所の中長期的な意義を伝えるということは導入の推進者としては重要な責務なのではないでしょうか。
酒井
我々もベンダーとしてやっていく中で、Hubbleはシンプルで良い、というお声をありがたいことに頂けることがあるのですが、そのシンプルなサービスですらしっかりと使っていただくまでに結構時間がかかるのですよね。
特に、組織の契約業務ではこれを使いましょう!というようにガラッと変えようと思うと、いろんな人を巻き込んで、いろんな人の納得を得なければならない。しかも、組織の体制を変えていくという抽象的な目標に向かって歩んでいこうとすると相当大変です。
そのため、我々としては、今の課題はこうです、Hubbleを使って、例えば、短期的にこういう状態を作っていきましょう、さらに中長期でこういう状態を目指しましょうということを示したうえで、大きな目標に向かって一緒に歩んで行くみたいな道筋を立てて、ちょっとずつやっていきましょうという説明をするようにしています。
酒井
これは使っていただくうえでのポイントであると考えていて、手放しでシンプルなサービスだから使ってくださいということでは、既存の業務フローを変えるのはしんどいという声が出てきてしまいます。
そのため、Visionalグループさんのように専任の担当者を置いていただいて、一緒にタッグを組んで推進していくという体制が作れると、非常に良いのかなと思っています。これは弊社だけでなく、他のリーガルテックベンダーの方々も、カスタマーサクセスに注力していて、そういう組織体制を作っているので、リーガルテックベンダーはユーザー様と歩み寄って進めていくという姿勢が見られているのかなとも感じています。そのため、ユーザー様として担当者を付けることができるということができるのであれば、かなり活用が進むのではないかと思いますね。
小田
先ほど申し上げたシンプルなルールに関してはHubbleさんが公開すると良いのになと思いましたね(笑)
酒井
本当におっしゃる通りで、いままでそれを行っていなかったのが非常に恥ずかしくなってきました(笑)我々として、こういう風にやる、というのを定義づけていくとより、活用までのハードルが下がって、導入が進むということでしょうかね。
小田
当グループも、それが決まるまでなかなか活用が進まなかったという経緯があったので、導入が進んでいらっしゃる他の企業様の事例の中でシンプルなルールを作っているということを拝見したりして、それ実際にどうやっているのだろうかというのも見たかったりもしたので、そういうものがあると一気に活用が進むのかなと思います。
リーガルテックに対する向き合い方、考え方
酒井
リーガルテックに対して今後どういう風に向き合っていくのか。どういう風に考えていくのか、小田さんのお考えをお聞かせください。
小田
まず、一つ目が、これまで話してきたように、「課題ファースト」であるということは大事にしています。リーガルテックもあくまで手段のひとつでしかないので、まずは、どうやって課題解決するのかを考えることを忘れないようにしています。これがすごく気をつけていることの一つです。
もう一つが、とはいえリーガルテックが何を解決してくれるのかを知らないとどういう課題にこのピースがはめられるのかということを想像することすらできない。だからとりあえず知ることが非常に大事だと考えてます。その一つ一つのツールをちゃんと勉強してどういうとこに使えそうかなとアンテナを張ることが大事なことだなと思います。
酒井
周りのサービスも凄いスピードで進歩が進んでいくので、ちょっと時間おいてみると、自分たちの今の課題に解決できるツールを見つることができるかもしれないですね。
ベンダー側としても結構色々思いがあって、おそらく今日ご覧いただいている方の中でもまだ実際使うのは先でいいとか、関心はあるけどもうちょっと様子を見てみようみたいなことでお考えになられている方々も多いかなと思うんですよね。そういう考えもあるかなって思う一方で、法務のDXの本質は、「デジタルを基盤にして現場を見える化、可視化して、改善可能な状況を作って行く」ということだと思ってます。
現場を可視化することで改善可能な環境を作ることができる、現時点で導入してくださっている企業さんはそういう環境も構築し始めていて、働いている方々がより働きやすい環境、評価されやすい環境、適切に評価される環境を作れる組織になっていくのだろうなって思うんですよね。人材がどんどん流動化していって、良い組織に良い人材が集まっていく、これはどの業界でもそうだと思うんですが、その改善可能な状況を作ってどんどん良い組織にしていく、こういった企業様があるということは他の企業様も見ていただいて、もし、リーガルテックによってそういう環境を作ることができるのあれば、初期の段階で積極的に抵抗感を示さずに検討していくというのは重要なことなのかなと思いますね。
小田
導入時のコストもかかるなか、二の足を踏むというのは当然なことだと思います。とはいえ、太陽誘電さんのお話を聞いて凄い刺激を受けましたね。可視化があそこまで進んでいるのかと、分析の基盤があそこまで整っているのかということで、凄いなと感じましたし、真似したいとも思いました。また、「測れないものは改善できない」という言葉があるので、現状を可視化するというのはツール導入云々の前に課題を考える上で必須のことだと思います。
酒井
ありがとうございました!!
(書き起こし、編集:Hubble編集部)