株式会社フォレストホールディングスは、株式会社アステムを屋台骨とし、主に西日本を販売拠点に、「人々の健康に関わる<不>(不安・不快・不足・不便)の打開」のため、各種医療・福祉機関に対する医療用医薬品、医療機器・設備、医療用消耗品、検査試薬、介護用品等の卸売販売及び修理・メンテナンス等を通じて地域医療に貢献するソーシャルビジネスを手掛けています(子会社含む関連会社38社)。
九州(福岡・大分)に本社がある同社は、法務人材が少ない中で、グループ企業全体の事業部門の契約リテラシーの向上も図りながら契約DXを推進し、契約業務効率化・法務業務の生産性向上のための工夫をしてきました。グループ全体の契約業務全体を一人で担当する同社内部統制室室長兼内部統制室法務担当・部長 寺田裕治様と株式会社アステム R&D本部次世代事業室HCデザイン課・担当課長野原秀光様に、地方企業の一人法務の実情と、その味方となったHubbleの活用、事業部門との連携についてお伺いしました(取材時:2023年5月)。
本記事のポイント
Over view
- 同社の法務の概要(2023年6月現在)
- グループ全体の契約業務担当人数:1名(内部監査業務兼務)
- 契約書依頼件数:300~400件/年間
- 導入前の課題
- グループ会社全般の契約業務に関する大量のメールに散在していた契約審査の結果(ノウハウ・ナレッジ)を集約・蓄積したい
- 人材不足を補うため、ルーティンワークを効率化し、業務工数を減らすことで契約審査スピードを上げるとともに、高付加価値業務に集中したい
- Hubbleの利用範囲
- グループ全体の本部機能を持つ法務及び事業部門
- グループ・企業全体の導入後の効果
- 複雑で煩雑なメールベースでのコミュニケーションが無くなり、過去の履歴を探す作業が効率化され、重複した問い合わせが減少した
- 事業部門が自ら契約を探しに行ける体制となり、契約更新時に、従前の契約との差分を事業部門がまず検討するようになり、事業部門の契約書に関するリテラシーが向上した
- 事業担当者が、自らHubbleから内容の近い過去案件検索、ナレッジを参考にすることで、法務担当者や顧問弁護士への質問ラリーが減り、ビジネスのスピードが向上した
- 法務が契約以外の業務(特許や商標出願、債権回収)にも時間を割けるようになった
- 現場での実務的効果
- 出張の多い現場担当者が、場所を問わず契約審査の進捗状況を即時確認でき、業務が効率化・迅速化
- 契約終了期限通知を活用し、契約相手方に対して契約終了期限を知らせることで、信頼関係や安心感を与えることに繋がっている
「地方法務」ゆえ、一人法務でも耐えうる体制を整える必要があった
本日は宜しくお願いします。早速ですが、まず寺田様の業務内容について教えてください。
寺田
2023年4月まで、38のグループ会社全般を担当する一人法務として従事してきました。
契約類型では、医薬・医療機器メーカーとの取引基本契約類から販売先の医療機関等との各種契約や投資関連契約が多く、昨今はソリューション販売の展開を契機にサービス利用規約の審査もあります。その他法務業務では、株主総会運営、特許・商標出願や債権回収も手掛けています。現在は、内部監査業務も兼務となり、内部統制室の他のメンバーが契約業務を担当するようになりました。ちょうど他のメンバーに対して、契約業務に関するオンボーディングを行っているところです。
いわゆる「一人法務」でありながら、非常に多くのグループ会社を見られているのですね。そういった中で、どのような課題を感じられていましたか?
寺田
まず、地方企業の法務の実情として、法的素養を持つ人材や専門的な弁護士・弁理士が都会に比べて少ないという課題を抱えています。その結果、大半の企業は、法務組織を持たず、総務や経理が法務も兼務しているのです。言い換えると、効率よく経験や知識を蓄積しながら人材育成、ひいては持続可能性のある体制づくりを常に考える必要があるという状況です。
そういった環境下で、2000人規模のグループ全体の法務業務を私一人で担当してきましたので、私も人を増やすのではなく、業務を効率化し、生産性を高める方法、ひいては法務のプレゼンスを高める方法を考える必要がありました。
そのような中でも、特に契約業務の課題はどこにあったのでしょうか?
寺田
契約書検証(審査)依頼や修正について、メールでのやり取りが多く、煩雑になっていたことが挙げられます。結果として、契約書に関連する情報や審査の結果、つまり契約に関するナレッジやノウハウが、各担当者とのメールのやりとりに散在していました。そこで、大量のメールでのやりとりを効率化するとともに、契約書の審査に関するノウハウやナレッジを蓄積し、事業部門にも共有できないか、と考えるようになりました。
事業部門も契約書を自分で探せる体制に
そういったお考えをお持ちの中で、Hubbleを探し当てて頂いたのですね。Hubbleを初めてお使いになった時の印象はいかがでしたか?
寺田
最初は、2年以上前に、導入検討時のトライアルでHubbleを触りました。その際には、野原課長をはじめ、グループ会社の中でも特に協力的な現場社員に声をかけて利用しました。様々なツールの検討は行いましたが、その中でもHubbleはシステムの画面がとても見やすいという印象を受けたことを覚えています。
トライアルからご利用頂いていた野原様は、いかがでしたか?
野原
私は、マニュアルを読んだりするのが苦手なのですが、Hubbleは最初から直感的に使うことができました。社内でのコミュニケーションツールとして導入しているMicrosoft Teamsを導入したときと同様に、Hubbleも違和感なく受け入れることができています。今も、新たにHubbleのアカウントを付与するメンバーがいますが、皆、使い方を教えなくてもすぐに使えるようになります。
最終的なHubbleへの決め手は、どのようなところにあったのでしょうか?
寺田
今申し上げた画面の見やすさ、そして機能面でも事業部門からの依頼案件の進捗管理やナレッジの蓄積・共有など、法務のみならず、事業部門にとっても業務の効率化に十分資することが期待できたからです。とはいえ、最後の最後に、社内の説得や稟議といったハードルを乗り越えてみようと思えたのは、Hubbleの代表の早川さんの熱意に共鳴したことでした。
なるほど!どんな点について共鳴されたのでしょうか?
寺田
早川さんからは、Hubbleを活用して当社の契約業務を変えようという熱い想いが感じられました。私も、「当社の法務の現状を、また地方法務、そして九州をDXで盛り上げたい!」という強い想いを持って日々業務に取り組んでおりますので、グッと来るものがありました。
寺田様は、熱い想いをお持ちですね!それでは、そんな想いも反映された貴社における実際のHubbleの使い方を教えてください。
寺田
まず、私と本部機能を持つ福岡本社に勤務する社員約80名に加え、顧問弁護士にアカウントを配布し、年間約300~400件の契約書審査をHubble上で行っています。契約書に関するやり取りは全てHubbleに集約するようにしています。
Hubbleを導入することで、先ほど出ていた課題は、いずれも解消できたでしょうか?
寺田
はい。事業部門とのやりとりは、基本的にすべてHubbleを通して行うことで、前述した複雑で煩雑なメールのやり取りは無くなりました。加えて、コミュニケーションとこれに含まれるナレッジやノウハウがHubbleに蓄積されるようになったため、過去案件の検索・参照が簡単にできるようになりました。
この結果として特に良かったのは、契約更新時に、事業部門が過去に締結した契約書の審査結果とこれから締結しようとしている新しい契約書の差分を自発的に確認し、そのまま進めて良いか否かを自己判断できるケースが出てきたことです。法務の工数が一つ削減されましたし、業務効率化と事業部門の契約リテラシー向上に非常に寄与していると言えると思います。
法務とのコミュニケーションは滑らかに、そして事業はスピーディーに
事業サイドである野原様からみて、Hubble導入のメリットはありましたか?
野原
私は新規事業を担当しております。従来は法務への相談機会はほとんどなかったのですが、新規事業の立ち上げを担当するようになると、法務に契約書の審査を依頼する機会が増えました。そんな変化があってもHubbleを通じて気軽に相談をすることができています。少し感覚的ですが、Hubbleのコメント機能を使うと、寺田部長とのコミュニケーションが以前よりも滑らかになりました。
Hubbleのコメント機能を積極的にご活用頂いているのですね!
野原
はい。Hubbleコメント機能を通して、契約審査の進捗状況もわかるので、契約審査をしてもらえているという安心感に繋がっています。現場の観点からは、出張先からもHubbleで契約書審査の進捗状況を確認したり、コメントを返信したりすることができるのはとても便利ですね。PCを立ち上げて添付されているWordファイルをダウンロードする、といった従来の方法と比べると、時間の有効活用と迅速な連携が実現できています。
更に、コメントを通して寺田部長から契約や法務の大切さ、考え方、注意すべきポイントを教えてもらう機会が増え、社員の契約に関するリテラシーの向上に繋がっていると実感しています。
具体的にはどのような場面で契約に関するリテラシーの向上を感じますか?
野原
先ほど寺田部長からもあった通り、Hubble上で確認すれば過去の契約書の修正履歴を自ら確認することができるところが大きいです。
NDAをはじめ、頻繁に取引先との間で発生する契約類型については、内容の似た過去案件をHubble上で探し、その過程や履歴を確認し、過去に寺田部長から受けた指摘を踏まえ、自ら検討をしてから契約書審査依頼をすることができるようになりました。契約書の中の管轄や損害賠償等、必ず入っている条項(一般条項)については、悩むことが少なくなっています。
契約締結までのスピードが上がっているという実感はございますか?
野原
はい。こうした検討時間や重複修正の削減によって、修正ラリーの回数を減らすことができた結果、契約業務が効率化し、事業推進のスピードアップにも繋がっていると感じます。
特に、外資系のお取引先のように、非常にビジネススピードが速い企業では、ミーティングの前にNDAの締結をしなければならないケースも多いのですが、Hubbleを活用することで、そのスピード感にもしっかり追随できるようになりました。
法務と事業部門それぞれで契約業務の効率化が図られて、その相乗効果の結果として、会社全体に取って良い影響を生んでいるのですね。寺田様から見て、今お話に出た、審査のスピードの変化は感じられますか?
寺田
以前は、契約審査に数週間かかることもあり、依頼した社内メンバーもお取引先も以前のやり取りを忘れて重複した問い合わせをしてしまうということもありましたが、現在では、全体の6割は即日対応を行っています。
Hubbleを利用するようになってからは、契約関連情報や担当者とのやり取りが記載されたメールを探す手間がなくなりましたし、Hubbleの画面にピンポイントで関連情報が集約されているので、メールを遡ったり、打ち合わせを設定したりする必要もなくなりました。これが対応スピード向上の背景だと思います。
契約業務の効率化のカギは事業部門にある
お話しさせて頂くと、確かに事業サイドでいらっしゃる野原様も事業ご担当者として契約業務の重要性を非常に深く理解していらっしゃいますよね。
野原
アステム社は、医薬品等の卸業を展開しておりますが、一般論としてメーカーとエンドユーザーを繋ぐ卸業者にとって、ビジネスの構造上、契約書の内容は非常に重要です。加えて、私の担当する新規事業では、契約書のひな形が存在しないところから交渉が始まります。事業推進と契約交渉が一体になっているため、契約業務の重要性を特に実感する立場ということもあるかもしれません。
一人法務の寺田様にとって、野原様のように契約リテラシーが高い事業担当のみなさまと連携をしながら契約業務を遂行することができるのは大変心強いですね。
寺田
実のところ、事業部門のリテラシーの高さが企業全体の法務業務の効率性を左右すると考えています。例えば、契約審査をした後、その修正背景が分かっていないと、取引先からの次の返答に対して自己判断ができず、法務と事業部門との間で何度もやり取りが発生してしまいます。こうした法務のみならず企業全体にとっても効率的ではない状況を改善すべく、今も事業部門で協力してくれるメンバーからHubbleの積極活用を呼びかけ、その人数を増やしているところです。
ちなみに、寺田様は、契約業務が効率化された先にはどういった世界が待っているとお考えでしょうか?もし現時点で、契約業務を効率化させたことで、より精力的に他の業務に取り組めるようになったというエピソードがございましたら教えてください。
寺田
契約業務が効率化した結果、特許や商標出願等、その他の法務業務に注力することができるようになりました。これに加えて販売先への債権回収でも、具体的な損失を防ぐことができたため、当社内で法務のプレゼンスが著しく高まったと感じます。
一方で、実際に現場で契約交渉される事業部門のお立場から見た時に、契約業務が効率化された先にはどういった世界が待っているとお考えでしょうか?
野原
お取引先対応の品質向上に尽きると思います。私は、Hubbleがお取引先に安心感や信頼感を与えるツールであるとも感じています。例えば、Hubbleの更新解約通知期限を知らせるメールを活用し、お取引先に対して、当社から契約終了期限をお知らせすることで、丁寧な対応として感謝されたことがあります。
ありがとうございます。それは素敵な事例ですね!
九州をはじめとする「地方法務」を契約DXで盛り上げたい
最後に、寺田様の今後の目標を教えてください。
寺田
法務の目標は、現在は各担当者が行っている締結・締結後の管理についても、業務効率化の支援をしたいです。今後はドキュメントリストを積極活用して締結前後で一気通貫のフローを構築し、部署ごとの統計データの利用も行うことが理想ですね。
更に、少し視野を広げると、私個人の目標として、DXで九州を盛り上げたいという強い想いを持っています。法務担当者がいない、兼務している、または専任でも一人法務が多数の「地方法務」こそ、人材不足を解消するために契約DXが必須です。その上でこれからは、DXと弁護士等の専門家、そしてネットワークの力で業界全体強化していけるのではないかと考えています。九州をはじめとする地方法務からの情報発信は少なく、情報収集が難しい状況にありますが、法務のプレゼンス、リテラシーを向上させるために切磋琢磨できる地方法務のコミュニティやネットワークをつくりたいと考えています。
貴重なお時間をいただきありがとうございました!
会社概要(2023年8月現在)
Company Profile
<株式会社フォレストホールディングス 会社概要>
会社名 | 株式会社フォレストホールディングス |
所在地 | 【福岡本社】福岡市博多区東比恵3-1-2 東比恵ビジネスセンター10F 【大分本社】大分市西大道2-3-8 |
設立 | 2008年10月1日 |
代表者 | 代表取締役社長 吉村次生 |
事業内容 | 医薬品、医療機器の卸販売およびその他の事業を行う会社の株式を保有することによる当該子会社の事業活動の統轄管理並びにそれに付帯または関連する事業 |
URL | https://www.f-hd.jp/ |
〈株式会社アステム 会社概要>
会社名 | 株式会社アステム |
所在地 | 【福岡本社】福岡市博多区東比恵3-1-2 東比恵ビジネスセンター10F 【大分本社】大分市西大道2-3-8 |
設立 | 1948年5月27日 |
代表者 | 代表取締役社長 吉村 次生 |
事業内容 | 各種医療・福祉機関に対する医療用医薬品、医療機器・設備、医療用消耗品、検査試薬、 介護用品などの、卸売販売 及び修理・メンテナンス |
URL | https://www.astemf.jp/ |
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