法務内のミッションは設けない!「働く」を支えるインフラを実現するために。 -株式会社SmartHR 小嶋陽太氏- <後編>

クラウド人事労務ソフトの開発を手掛け、2021年にはユニコーン入りを果たしたSmartHR。日本の”働く”をひたすら良くすることを目指し、現在もその成長は止まるところを知りません。同社の法務ユニットの特徴は、メンバー全員が事業に貢献したいという強い意識を持っていることです。今回は、責任者を務める小嶋陽太氏の話から、その秘訣について探っていきます。

〈聞き手=山下 俊〉

目次

法務組織独自のミッションはあえて設けていない

山下 俊

小嶋さんは、SmartHRの法務を率いていくことのどこにやりがいを感じられていますか?

小嶋 陽太

幸いにも良いプロダクトをつくっていると信じられる会社に入ったので、そこに伴走して企業のミッション実現に貢献できるところがやりがいというか、楽しいポイントですね。それは、法務ユニットのメンバーも共通の思いとして持っていると感じています。企業として目指す世界が明確なので、法務ユニット独自のミッションは今あえて設けていません。

山下 俊

法務組織としては、それが理想かもしれませんね。
会社が成長しているフェーズでは、法務は「守りをがんばらなきゃ」という方針をとる場合もありますが、SmartHRの法務は事業に貢献するという意識のほうが強いように感じます。

小嶋 陽太

単にビジネスの成長を目指すというよりは、”働く”を良くする、”働く”人のインフラになるという想いが全社で共有されていることが大きいと思います。例えば数値的な事業成長だけが全社目標として掲げられている場合、法務としてはどうしてもそこにダイレクトに寄与できないので、別に組織内のミッションを設けるほうがよいこともあるかもしれません。

小嶋 陽太

ただ当社の場合は「“働く”を支えるインフラ」という考え方が社内に浸透していることで、不祥事が起きない体制づくりや社内の契約書管理、経理処理といったバックオフィス業務の重要性も理解しやすく、誰もがミッションに対してブレることなく働ける環境になっていると感じています。

コーポレートグループ 法務ユニット マネージャー 小嶋 陽太氏

急拡大のなかでも社内コミュニケーションは「そのまま」

山下 俊

急速に組織が拡大するなかで、法務として変わったことや変化しなければならなかったことはありましたか?

小嶋 陽太

組織が大きくなっても、あえて「そのまま」を維持しようと心がけている点のほうが多いかもしれません。
たとえば、他の事業部メンバーとSlackでこまめにコミュニケーションを取ったり、事業部横断のシャッフルランチへ積極的に出席したりなどして、他事業部との関わりを絶やさないよう意識しています。

山下 俊

なるほど!ちなみに会社の成長のタイミングにコロナがぶつかっています。ここでは変えざるを得ないということもあったと思うのですが…。

小嶋 陽太

コロナ禍以前は、全社シャッフルランチとして毎週水曜日に他部署の社員同士でオフラインでランチをする取り組みを全社的に行っていたのですが、それがコロナ禍対応でオンライン化され、その後も社員増が続いていることにより、少し億劫になってしまったのは事実です。

小嶋 陽太

ただ、会社もその状況を前提にした新たな交流施策を作ってくれるので、法務担当者としては、なるべく他事業部とのタッチポイントが減らないように、可能な限り参加してさまざまなメンバーと交流を持てるように意識していました。

小嶋 陽太

あとはSlackのキーワード通知に「法務」と入れておいて、どこかのチャンネルで「法務」という言葉が使われていたら覗きに行くのも法務メンバーはやってますね。趣味や好きなものについて語るチャンネルもたくさんあるので、何個も入ってみんなで楽しく雑談しています(笑)。

山下 俊

他事業部とのコミュニケーションの仕方について、法務ユニットの他のメンバーに「こうしてほしい」と指導されることはありますか?

小嶋 陽太

採用やチームづくりの際に意識していることなので、メンバーに改めて伝える機会は少ないですが、結果的にはかなりこだわっていると思います。特に採用の段階では、法律知識の高さよりも、事業部門に対して親切かつ適切な受け答えができる方を重視しています。

山下 俊

小嶋さんのそうした価値観は、何をきっかけに形成されたものなんでしょうか?

小嶋 陽太

誰かから、そうしなさいといわれた記憶は明確にないのですが、法律事務所時代から大切にしてきた考え方です。また、SmartHRの社員は皆お互いにリスペクトを持っているのが特徴で、事業部門の人も法務の考えを尊重してくださるカルチャーがあります。

小嶋 陽太

法務としては非常に働きやすい職場なので、メンバーとしても「それに応えたい」というモチベーションで対応できていますね。そうしたカルチャーは、私の入社後ずっと維持されている感覚があります。やはり法務は相談してもらってなんぼですし、事業部門側が情報を隠す方向にインセンティブが働かないよう、相談してもらいやすい雰囲気づくりは大事にしています。

山下 俊

成長している会社は、心理的安全性が確保されているように思います。SmartHRさんは、チーム内だけでなく、部門横断的に見ても心理的安全性があると感じますね!

SmartHRが「日本の“働く”を良くする」インフラになるために尽力したい

山下 俊

法務ユニットとして、現在抱えている課題はありますか?

小嶋 陽太

やはり一番は採用でしょうか。
先ほどもお話したとおり、子会社としてNstockが立ち上がったことで、金融というドメインを新たに考えなければならなくなりました。また、個人情報保護法改正対応や、ガバナンスのレベル向上にも取り組んでいく必要があります。法務としては、優劣をつけられないくらい多くの課題を抱えています。金融領域を引っ張っていただける方、プライバシー体制やガバナンスの強化に一から取り組んでいただける方など、得意な分野がある方とぜひ一緒にお仕事がしたいなと思っています。

山下 俊

最後に、小嶋さんが今後法務ユニットの責任者としてチャレンジしていきたいことを教えてください!

小嶋 陽太

SmartHRは、「日本の”働く”を良くする」インフラになると信じています。シンプルですが、そのためにできることは全部やっていきたいと考えています。”働く”にまつわる課題を解決して、誰もがその人らしく働ける社会を実現できるまで、頑張っていきたいですね。

山下 俊

事業に貢献する法務の考え方として、とても素晴らしいと思います。SmartHR全体をとりまく雰囲気がそうさせているようにも感じました。これからのご活躍も楽しみにしています!


★今回のLegal Ops Star★

小嶋 陽太

2010年弁護士登録後、都内法律事務所にて一般企業法務・一般民事事件等に従事。2014年から西村あさひ法律事務所にてキャピタルマーケット分野を中心に従事し、国内企業のIPOや資金調達等を担当。2018年に株式会社SmartHRに移籍し、以後同社の法務全般・資金調達・リスクマネジメント等を担当。

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