「リーガルテック後」でも変わらないものを見極める。三井不動産法務グループ長が見据える未来のリーガルパーソン像

社名
三井不動産株式会社
規模
1001名以上
課題
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今回は、日本の街づくりを支える三井不動産株式会社の総務部法務グループ長であり、経営法友会の幹事も務められている望月様に、Hubble導入に至る管理職ならではの視点や、将来のリーガルテック、法務パーソンのあり方について、幅広くうかがいました!

本記事のポイント

Over view

  • 導入前の課題
    • 蓄積した情報の在り処が分からなくなっている
    • 管理者として知りたい情報を十分に掴めなかった
  • Hubbleへの期待
    • 契約締結に至るプロセスの蓄積と共有
  • 導入後の効果
    • 各契約の判断に至る情報の集約と一覧化
  • リーガルパーソンにむけたメッセージ
    • リーガルテックは道具、だから使ってみないと分からない
    • 機械に使われない。リーガルテックがなくても何とかするスキルセットを
    • 「法務のロジック」だけでは事業は動かないことを念頭に、常にベストな結論を考える

既存のシステムと組み合わせて化学変化ができないか

本日は、宜しくお願い致します!早速ですが、Hubble(ハブル)を知ったきっかけを教えていただけますか?

望月

クラウドサインさん主催の「第2回契約書タイムバトル」で早川さんのプレゼンを拝見したのがきっかけです。
あまりぶっ飛んでないというか、「今現実に使っているWord上での業務の効率化をどうするか」というところが結構刺さりまして。

私どもの場合は、すでに構築されているシステムやIT環境があるので、ゼロから色んなものを作るというのはなかなかやりづらいんです。
そんな中で既にある様々なシステムに少しだけ加えることで、一種の化学変化ができないかな?という期待感があって、Hubble(ハブル)ってどうなのかなと思っていました。

具体的にどのような問題点や問題意識がおありだったのでしょうか?

望月

グループ内では、色んな情報の共有が滞っていたり、属人的になっていたりするという問題点がありました。「わかっている人はわかっているけれど、わかっていない人はわかっていない」という状況ですね。

チームの中に比較的熟練した法務経験者がいれば、過去の記録も引っ張ってきて生かすことができるんですが、そうじゃない場合は、結局毎回ゼロベースで相談なり確認をするため、そもそも論点に至らなかったり、または同じ質問を同じ弁護士に何度もしたりということが起こっていました。

不安になった時にすぐアクセス情報にできる環境を

こうした問題意識が、Hubble(ハブル)導入につながったのでしょうか?

望月

むしろ実際に業務に携わるメンバーの問題意識が、大きなきっかけになりました。

当社の人事上の仕組みとして、いわゆる「法務の素人」が配属されるという点があります。
昨年度配属された方は、過去に自分が法務相談をした際に、法務の中には「すごく画期的なデーターベース」があって、何でも答えが書いてあるもんだと思っていたそうなんです。
ところが配属されてみたら、想像していた画期的なデータベースはどこにもない…実際には過去の相談に関する蓄積はそれなりにあるのですが、その在り処がよく分からないのです。

望月

新しく配属された方にとっては、自分がやっていることが正しいのかが不安ですから、こうしたときにすぐに情報にアクセスできる状態にないという問題意識がありました。

こうした背景から、何らかのツールを使いたいという声があがり、比較的法務歴の浅い人たちでチームを作って、検討してもらいました。様々なリーガルテックの企業をお呼びして、お話を聞かせていただいたんです。Hubble(ハブル)さんもその一つでした。そこでお話を聞いた中で、私だけじゃなく、法務歴の浅い人たちにとっても魅力的だったということで導入してみることになりました。

管理職としては、パッとでも全件目を通しておけるようにしたい

望月様のように、グループ長という「全体を管理するポジション」にいらっしゃるがゆえの課題感はありますか?

望月

メンバーには、毎週どういうことをやっているのか報告をしてもらうことにしていて、一応メンバーの業務の全部を把握できるようになってはいます。しかし実際には、法務のメンバーがやっていることのうち、多めに見積もっても3分の1、下手すると10分の1ぐらいしかグループ長にはあげないということも発生していると思っています。

それは担当者の問題、というわけでは必ずしもありません。
担当者から見れば、わざわざグループ長が見る話ではないと思っていることでも、私から見た時には聞いておきたいことだったりするわけです。その意味で、全件パッとでも目を通しておくことは非常に重要なんですが、そうなってはいません。
そうすると、何が起きているかよくわからなくなるという不安感は常につきまといます。私だけじゃなく、私の前任者もその前任者も同じでした。

Hubble(ハブル)をご利用になられて、パッと目を通しておくことやプロセスを管理するということは、実現できていますでしょうか?

望月

前回のイベント(2019年11月29日開催「Legal Innovation Conference ~リーガルテックの現在地~」)でもお話していますが、率直に申し上げて、各メンバーがHubble(ハブル)を使いこなせているかというと、情報の蓄積と共有は進みつつあるものの、私としてはまだ道半ばという気がします。

いわゆるネットワークストレージのような完成物だけを置いておくという考えを超えて、契約のプロセスを残しておくという点は、今後更に意識的に実施していく必要がありますね。

ただ、これから皆さんが在宅で業務をするようになると、情報共有の仕方やメンバーの日々の業務内容をマネージャーがどのように把握するかが一層大事になってくるので、これからがHubbleの真骨頂かな、と感じています。

なるほど!道半ばとのことですが、情報共有やプロセス管理をHubble(ハブル)に更に集約していくには、どのようなアクションが必要になるでしょうか?

望月

まず、私と直接接している人にはちょこちょこと「こういった使い方ができる」という話はしていますが、私の方から「絶対Hubble(ハブル)を使おう!」という話をしてしまうのは違うなと思っています
自分たちにとってHubble(ハブル)で管理することが一番楽だよねっていう風に思ってもらえるよう、うまく促す必要があると感じています。

これは我々の業界の特殊性なのかもしれませんが、ものすごい昔の法務のアウトプットについて質問が出ることがあるんです。下手すると20年、30年という単位のものがあるくらいです。
そういった場合、初期にどういった検討をしたのか、なぜこうなったのかを残しておかないと、20年後に「何か」が起こった時に対処できません

もちろん当時検討していたことが、20年後においても正しいかどうかは別ですが、過去の時点でちゃんと検討していたか否かで法務としてのアクションも変わってくるため、プロセスを残しておくことはとても重要です。

ただし、品質管理(QC)活動のようなものは、私一人が言っていてもうまくいきません。
一番困っている人たちに推進してもらうような企画にしないとダメですね。

まさに今、ヒントのような言葉を頂きましたが、新しいツールを定着して使われるツールにするために、最も大事だと思われるポイントはなんでしょうか?

望月

1つは、使うことへの抵抗がどれだけ少ないかですね。
インターフェースが分かりづらかったり複雑だったり、あるいは頻繁にインターフェースが変わったり、使い方が変わったりすると、継続して使っていくことは遠のくと思います。
シンプルで抵抗がなく汎用性があるものが大事だと思います。

Hubbleに向いているのは、長期間にわたり修正していくドキュメント

Hubbleでの修正に向いているのは、1つのドキュメントを長期間にわたって修正していくようなものか、1つのドキュメントを多くの人が同時にコメントを入れて編集していくものですね。
1つのファイルを長期間にわたり修正していくものの例としては、契約書は勿論ですが、社内の月次報告などが挙げられます。
複数のファイルができてしまうと、検索が難しくなるため、過去の内容を遡りたい場合には使いやすいと思います。

リーガルテックがなくても、一通りできるようなスキルは備えておく

現在リーガルテック導入を検討されている企業に向けて、一言いただけますか?

望月

今までやっていたことから極端に違うことをやるわけではないので、「結局何がほしいですか」ということに尽きると思います。
困ったときに法務相談が出来る機能なのか、契約書を書いてくれる機能なのか、あるいは今までのファイルシステムを替わるものなのか…。

いずれにせよ、昔、紙でやっていた時代とやっていること自体が極端に変わるわけではないですよね。そうすると、「リーガルテックを入れたい」ということよりは、「今何に困っているんですか」と。困っていることに応じて、解決策としてリーガルテックツールがあるんじゃないでしょうか。

あとは、各リーガルテックでどんなことができるのかを口頭説明するのは非常に難しいです。やっぱり道具なので使ってみないとわからないと思います。

今後、Hubble(ハブル)を含めたリーガルテックに期待されることを教えていただけますか?

望月

使いやすい道具として極めてくださいっていうことに尽きると思います。
例えばAIとか、人間の仕事の一部を切り出して特化してやってくれるっていうサービスは今後増えていくのかなというのが世間一般の流れではありますよね。こういったものがあった方がいいと思いますが、それだけになってしまうべきではないと思いますね。

あと、道具論という意味でいうと「無くても自分で何とかできる」「効率は落ちるけどできる」ということはすごく重要だと思います。リーガルテックの導入により、自分が出来ないことを機械が処理しちゃうようになると、機械に使われるんですよね。

例えば、契約書レビューシステムは、現時点ではまだそこまで精度が高くないという認識なので、多数の候補が出てくる中から何を選ぶのかというところに、リーガルパーソンの存在意義があります。

ただ、カメラの40年の歴史と同じで、自動露出ができて、オートフォーカス出てきて、今はスマホで写真撮ると構図も含めて凄いキレイに撮れちゃうところまで進化しているわけですよね。でもスマホが壊れたら同じようには写真を撮れなくなっちゃうわけです。それでは困るわけです。

やっぱり焦点や露出、あるいは構図がわかってないと、いい写真が撮れないのと同じで、契約書業務でも、契約レビューシステムがあっても、一通りのことがきちっとできるようになっているということは重要だと思います。

法務のロジックだけで会社や事業が動くわけではないことを理解する

以前のイベントでお話しされていた、リーガルテックを導入後も法務として変わらないもの、あるいは変えてはいけないと思われるものはありますか?

望月

前述のイベントでは、意思決定の上げ方のスタイルは変わらないというお話をしました。
それから、事業部の人たちと法務の人たちとの関係はリーガルテックで変わるべきじゃないだろうと思います。

アクセスがしやすいとか、内容の選別がしやすいというのはあるかもしれませんが、大事な相談をちゃんとしてもらえる、受けてくれるような信頼関係を作るっていうのは絶対変わるべきじゃないですし、その途中をリーガルテックがやってくれるから、終わった後に上澄みを法務がひきとりますっていうのは違うと思っています。

最後に、今後の法務人材が意識した方がよいことがあれば、教えて下さい。

望月

我々の会社の場合、事業経験をやってから法務に配属されるので、あんまり意識はしていないんですが、例えばずっと法律しかやっていない場合、バランスが分からないことがあると思います。

例えば、事業部の事業ロジックとは違うロジックで会社が動いていくことがあるので、そこをよく理解してくれよ、というのは申し上げますけど、逆に法務しかやってない人からすれば法務のロジックしかないわけです。
そうすると、契約書はどんどん細かくした方がいいという判断になりがちですが、細かくしてリーガルリスクを減らすこと自体が会社として相対的に価値が高まるかというと、違う場合もあるんですよね

法律だけをやっていくとすごく精緻な理屈になってしまうんですが、相対的に見た時にお互いにとって一番納得性が高かったり、正しかったりすることをやるのが法務の人だと思うので、いわゆる法律にバチッとはめるのが本当にいいのかどうかは、いつも考えながらやった方がいいんだろうと思います。

ありがとうございました!!!

(画像提供:PIXTA)

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