「ブルーロック Project: World Champion」等のゲームアプリや、デリバリー&テイクアウトアプリ「menu」の開発・運営、広告事業、YouTubeチャンネル「佐久間宣行のNOBROCK TV」をはじめとするコンテンツ開発、さらにブロックチェーン事業や投資事業など、多様な事業を展開する株式会社レアゾン・ホールディングス。実は同社の法務チームメンバーは、全員が弁護士又は弁理士資格の保持者です。「大転職時代」かつ「採用難」にあるなか、優秀な法務人材を惹きつけられている秘訣とは。同社法務部の部長、松村拓紀氏に聞きました。
〈聞き手=山下 俊〉
「事業部の打ち上げに呼んでもらえる法務」を目指す
本日は宜しくお願いします!
早速、今の法務チームのメンバーの構成を教えてください。
法務部は全員で6名です。
そのうち法務チームが5名で全員弁護士、知財チームが1名で弁理士です。各グループ会社には法務機能がないため、すべての法務・知財・コンプライアンス業務をホールディングスの法務部が担っています。
私自身は2021年8月に3番目の法務として入社し、2022年2月から部長を務めています。
貴社のオウンドメディアでは、「事業部の打ち上げに呼んでもらえる法務」というフレーズも出てきていますが、事業部との関わりも非常に大事にしている印象ですね。
会社によっては法務はコストセンターと思われがちですが、当社法務としては、「企業価値と事業の成長にコミットする」ことをテーマにしています。弁護士のなかには、外部の専門家として「外様」のような対応をしてしまうタイプの人も多いですが、当社法務では、企業価値に貢献できるよう事業に伴走できる姿勢を持つように心掛けていて、そういったメンバーを集めています。
全員が有資格者ということですが、資格を必須要件としているのでしょうか?
そういうわけではありません。
求人を掲載している媒体が弁護士向けのものであることが多く、結果的に比率が高くなっています。ちなみに、管理本部執行役員、情報セキュリティの責任者も弁護士ですので、社内には全部で7名の弁護士が在籍しています。さらに、1月には、司法修習修了直後の新人が法務に入社予定です。
すごいですね! 米国企業のようです!
現状はどのような採用方針をとっているのでしょうか?
ゲーム、広告、デリバリープラットフォーム、コンテンツ、投資事業など広範な事業ポートフォリオを組むなかで、どこに人が足りていないかを考えながら、そこにマッチした人をターゲットに採用活動をしています。
松村さんは採用のプロセスのうち、どこに関与されていますか?
最初からです。どこの求人媒体に掲載するか、誰に対してスカウトメールを出すのか、それはどのような文章や件名で出すのか、ホールディングスの採用戦略部のチームと連携しながら進めています。
「求人を掲載している媒体が弁護士向け」とのことでしたが、どのような求人媒体に掲載されることが多いですか?
当社の法務職は、中途採用を中心としているので、大手転職サイトのほか、日弁連求人求職情報提供システム「ひまわり求人求職ナビ」に掲載しています。ひまわり求人は、主に司法修習生と弁護士向けの求人サイトになりますが、料金をかけずに掲載だけしておけるので便利です。当社のようなスタートアップの求人はあまりなく目立つようで、同システム経由の応募はときどき来ますし、実際に採用に至った例もあります。
応募後のフローはどのようになっていますか?
一番多いパターンは、カジュアル面談をした後に会食でお互いの意思を確認し、適性検査等を経て役員面接という流れです。候補者の方からもっと他の人に話を聞きたいというご要望があれば、さらに法務チーム以外の方との面談の場を設けます。
「中の人」を知ってもらう
「大転職時代」かつ「採用難」にあるなか、優秀な人材を集めることができているポイントはどこにあると考えられていますか?
3つあると思っています。
「ブルーロック Project: World Champion」、「menu」や「佐久間宣行のNOBROCK TV」など個別の事業やコンテンツは名前が知られるようになってきましたが、ホールディングスとしての知名度はまだ高くないと感じています。そのため、会社およびその中の人のことについてまず知ってもらうことが1つめのポイントだと思っています。中にどういう人がいるのかわかると、入社を検討しやすくなりますよね。
そのための具体的な取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか?
前出の当社のオウンドメディアに積極的に出ていったり、たとえば日本組織内弁護士協会(JILA)の部会の執行部としてミートアップを企画したり、あとは法務・知財の方が集まる懇親会に参加させていただくなどして、法務界隈に顔を売るようにしています。
採用フローのなかの会食にも「中の人を知ってもらう」機能がありそうです。
当初は、コロナの影響もあってWeb面接中心となっている他社採用と差別化するために会食を設けたのですが、結果的にとても効果的でしたね。30分や1時間のWeb面接ではお互いわからないことが多いと思います。
たとえば、候補者の方に投資事業を中心に担当していただきたい場合は投資事業部門の社員にも同席してもらったり、候補者の方が応募を決めかねているようであればその「悩み」にマッチした社員に同席してもらうようにもしています。数時間かけてじっくり対話したほうが、お互いの雰囲気が伝わりやすいですよね。
入社後のキャリアプランは必ず聞く
2つめのポイントを教えてください!
入社後のキャリアプランのイメージを持ってもらうことです。候補者がどのようなキャリアプランを築きたいかしっかり聞いたうえで、それが当社で今実現できるかどうかを考えます。会食でもこの話題は必ずするようにしています。
裏返すと、貴社ではやりたいことができるチャンスが多いということでしょうか?
手を上げて社内の承認が得られれば、何でもできる環境にありますね。実際に、弁護士として法務に入社して現在は経営企画に携わる執行役員もいますし、各自さまざまな個性があります。今後は海外事業の展開もより拡大するでしょうし、法務はもちろんですが、各部署で活躍できる場所はあると思っています。
事業との関わりという観点で見た時に、法務が事業戦略を策定する会議などにも参加されることはあるのでしょうか?
最近は、事業計画がまだ荒いかなり初期の段階から入れてもらうようにしています。法務の領域なのかわからないような内容も含め、事業部と一緒に組み立てていくことが多いです。当社では多岐にわたる事業を展開していますが、たとえば、類似の他社事業を参考にしつつ、法的にクリアしながらもより売上が見込めそうな提案なども法務側から行うようにしています。
素敵ですね!
ちなみに松村さんご自身も事業に深く関わられたご経験がおありとのことでした。
私自身もマレーシアのオフショア開発拠点の立ち上げに携わっています。オフィス選定や現地メンバーとのコミュニケーションのために現地を訪問することに始まり、海外子会社の管理フローやガバナンス体制の構築など、法務の枠を超えた活動をしています。法務だけでなく、全社的に見れば、新卒メンバーが新規事業を手掛けるなど若い方のチャレンジを推奨してくれる風土があります。
スピード感を持ちつつ丁寧に採用プロセスを進める
採用における3つめのポイントは何ですか?
スピードです。必ず他社の選考状況を聞き、競争相手より先にプロセスを進めるようにしています。人によってはカジュアル面談から2週間以内にオファーを出すこともあります。候補者の方から他の社員とも話してみたいとリクエストされた場合にはもっと時間をかけますが、いずれにしても候補者の採用プロセスに合わせて、他社の選考より有利になるよう意識しています。
求職者のことを考え、丁寧に採用プロセスを進めるという王道をきちんと実践できていることが大事だと感じました。後半ではチームビルディングの秘訣について伺っていきたいと思います!
松村 拓紀 (まつむら ひろき)
株式会社レアゾン・ホールディングス 法務部 部長
東京大学法学部、法科大学院卒。司法試験合格後、弁護士として企業法務系法律事務所に入所。コーポレート案件やM&A、訴訟、インシデント対応などを扱い、大規模訴訟案件も担当。2021年8月、大学時代の同級生でもある村川取締役(株式会社レアゾン・ホールディングス)に声をかけられたことがきっかけで現職へ入社。現在は法務部長として、グループ全体の法務関連業務や、コンプライアンス、知的財産に関する業務全般へ従事。近著に、『会社法実務スケジュール〔第3版〕』(新日本法規、2023年1月)がある。
(本記事の掲載内容は、取材を実施した2023年10月時点のものです。)