【事業部門向け】「契約」の基礎知識

この記事でわかること
  • 契約(書)の存在意義
  • 契約書を締結する場面
  • 契約書作成時のルール
目次

はじめに

みなさん、こんにちは!

契約書の内容は小難しく書かれているために、その書き方や作り方以前に、なんとなく苦手で敬遠している事業部門の方が多いという実感を持っている法務のみなさまも多いのではないでしょうか。ただ、契約書の本来の意義を知ることで、もっと親しみやすく、重要なものだとご理解いただけるはずです。

本記事では、事業部門の皆様へ向けて「契約」を理解し、取り扱うことができるようになるための基礎知識をまとめています。ぜひ法務の皆様から事業部門の皆様に本記事をシェア頂き、社内のリーガルリテラシー向上に役立てて頂けたらと幸いです。

契約(書)とは?

契約書の意義

契約(書)は、取引先との約束事を明確にするためのもので、合意された取引のルールブックです。そういった契約書には主に以下の2点が記載されています。

取引自体のルール(現在の約束事)

実務と契約内容に齟齬がないかは要確認です。
例えば、秘密保持契約書(NDA)を締結する場合、とりあえずNDA!ということで取引関係を整理せず、法務に内容のチェックを丸投げしていませんか?
NDAであれば、取引先からどういう情報を受け取り、自社はどういう情報を先方に渡すのか、そしてその情報をどれくらい厳重に取り扱う必要があるのかといった点を整理して法務チェックに回すと、スムーズにコミュニケーションができます。

トラブル時のルール(未来の約束事)

これから取引を始めようとする場合、良好な関係性を作って継続しようとする取引先との間にどのようなトラブルが起こり得るかの想像は意外と難しいです。
しかし、事業部門の皆様でトラブルを一回も経験したことがない方はいらっしゃらないでしょう。未来に起こりうるトラブルを想像することは非常に重要です。想像できない場合は、法務とディスカッションすることをお勧めします。

契約書の内容は小難しく書かれています。
しかし、契約書の意義は、上記を明確にするために過ぎません。実際に取引先と取引するのは、法務ではなく、事業部門の担当者の皆様です。必ず一度は契約書を読んで、不明点があれば、取引先・法務に確認して契約書を作っていくようにしましょう。

なぜ契約書を締結するのか?

契約は契約書を締結しなくても、口頭で成立します。では、なぜ工数をかけて契約書を締結し、目に見える形で残すのでしょうか?それを有効性と有用性から説明します。

①取引は「契約書」を作らないと有効じゃないのですか?(有効性)

前述の通り、契約書を締結しなくても、口頭などでも契約は成立します。これは法律で明記されています。

契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

民法第522条第2項
②それでも「契約書」を作る必要はあるのですか?(有用性)

ではなぜ、契約書を締結するのかというと、この有用性が重要だからです。
口頭で合意し、契約が成立しても、言った言わないの水かけ論でトラブルになることがあります。もちろん実際に取引先との間でトラブルが起こった場合に話し合いをして解決することは大事ですが、それだけでは足りません。約束事を明確にし、自社と取引先の認識が合っているかを確認するためにも、契約書を作成して目に見える形にして合意することが重要です。

契約書を締結する場面

契約はどういった場面で締結すれば良いのでしょうか?
結論としては、ビジネス(取引内容)の変わり目に締結するのが原則です。

上記のような大きな変更タイミングだけでなく、締結後に契約書の内容と実務との間にズレが出てきた場合も、契約書を結ぶべき場面です。
「契約書にはこう書いてありますが、実務は違って…」といった議論となり、トラブルの元になります。取引内容が変わる度に、実務に則した内容で締結し直しましょう。毎回全部を結び直す必要まではなく、覚書などで変更部分だけ、契約内容をアップデートして締結することでももちろんOKです。

契約書作成時のルール

このセクションでは、契約書の簡単なルール(お作法)についてまとめます。

契約書のタイトルに決まりはない

契約業務を日々行なっていると、さまざまなタイトルの契約書を目にします。ここに関連して「タイトルによって契約の種類や内容に影響があるのか?」という質問をよく耳にします。
結論として、契約書のタイトルにルールはなく、効力の強弱差には無関係です。ただ、タイトルと内容が異なると読み手にミスリードとなるため、なるべく取引内容と契約書のタイトルは整合性を持たせるように注意しましょう。

契約書と法律の関係には注意

企業間取引においては、契約書に定めた内容が法律よりも優先することが原則ですが、下請法、消費者契約法、特定商取引法などで例外もあります。

〈原則パターン〉契約書が法律に優先する場合

この場合、契約書から特定の条項を削除してしまうと、その背後にある法律が適用されてしまうことがあります。特に条項を削除したい場合には、法務と相談して慎重に進めましょう。

〈例外パターン〉法律が契約書に優先する場合

契約書にいくら記載しても、その部分だけは法律の定めが優先になってしまうので、期待する契約条件にならないケースがあります。ここは法務にチェックしてもらうことで皆さんが求める条件を達成できるのか、確認しましょう。

同じ取引に関する契約書が2つある場合には、新しく締結したものが優先

仮に内容が一部矛盾した契約書が2通出てきた場合、原則として時間的に新しく締結した方(締結日が新しい契約)が優先します。

ただし、古い契約が全て無効になる訳ではありません。重複した部分は新しい契約内容が優先しますが、重複していない部分は、終了手続き(契約解除)を行うまで生き続けることになります。このため、必要に応じて別途明記することで、古い契約は終了させる必要があります。

締結日にはどの日付を書き入れるのが良いか?

締結日は、原則として「双方の押印が完了した日」を入力します。しかし、いくつか例外もあります。
いつ契約を結んだことになるのかがポイントになりますが、取引先からイレギュラーな締結日の入力を求められた場合など、不安があれば法務に相談することをお勧めします。

「締結日」となる日付の候補
  • 双方の押印が完了した日(これが原則)
  • 双方で契約内容について内諾した日
  • 当該ビジネスがスタートした日

より深く知りたい人は、下記の記事も参考になりますので、チェックしてみて下さい。

まとめ

この記事のまとめ
  • 契約(書)の存在意義
    • 取引自体のルール(現在の約束事)とトラブル時のルール(未来の約束事)を示したルールブック
  • 契約書を締結する場面
    • ビジネスの局面や取引内容が変わったタイミングで締結(結び直し)するのが望ましい
  • 契約書作成時のルール
    • 契約は口頭でも成立するが、契約書として見える形で締結するのが望ましい
    • 契約書のタイトルに決まりはなく、効力の強弱差には無関係
    • 契約書と法律の関係は、企業間取引において多くの場合、「契約が優先」が原則(例外として、下請法、消費者契約法、特定商取引法など)
    • 同じ取引について2つの契約書が存在する場合、新しく締結した(締結日が新しい)契約が優先
    • 締結日は原則として、「双方の押印が完了した日」を記載

本記事の著者情報

早川 晋平(はやかわ しんぺい)

2014年、関西学院大学を卒業後、税理士法人に入社し、2年間ファイナンスや経営管理を学ぶ。その中で非効率な業務オペレーションに課題を感じ、プログラミングを独学で習得後、2016年に株式会社Hubbleを創業(代表取締役CEO)。

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