リーガルオペレーションの現状と将来展望

――Legal Operations CORE 8の来歴と、これからの企業法務

2020年、日系企業法務部門のオペレーションを研究する試みが、有志の研究会から生まれた。日本版リーガルオペレーションズ研究会による「CORE 8」である。2024年12月には『戦略のための戦術――CORE 8日本の法務部門の場合』(商事法務)として結実し、いまや法務部門のリーガルオペレーションを語る際の共通言語になりつつある。

日本版リーガルオペレーションズ研究会のメンバーとしてご一緒した明司雅宏氏に、CORE 8成立の経緯から現在、生成AIの登場で実務が大きく変わる「その後」について聞いた。

話は法務マネジメントの枠を越え、暗黙知、リベラルアーツ、多様性、そして「人間にしかできない仕事」へと広がっていった。
(写真左:株式会社Hubble Legal Operations 佐々木 毅尚 / 写真右:サントリーホールディングス株式会社 顧問 明司 雅宏 氏)

[話し手]明司 雅宏 (サントリーホールディングス株式会社 顧問)
1992年サントリー入社。酒類営業、財務部門を経て、長年にわたり法務業務に従事。2017年サントリーホールディングス法務部長。M&A、組織再編・提携、ガバナンス、リスクマネジメント、コンプライアンス、地政学リスクなどに関わる。経営法友会副代表幹事、国際企業法務協会副会長、戦略法務ガバナンス研究会副会長等も務める。著書に『希望の法務――法的三段論法を超えて』(商事法務)。

目次

文学部出身、営業と財務を経て法務へ

――まず簡単にご経歴を伺えますか。

明司 1992年入社ですから、もう35年目です。もともと文学部の出身で、最初はお酒の営業でした。大阪でスナックを1日10軒回って「サントリーのお酒を買ってください」とお願いする仕事です。その後、財務でデリバティブなどを担当して法務の世界へやってきました。

――法務部門への配属は希望されたのですか。

明司 まったく希望していません。そんな仕事があることすら知りませんでした。法務に配属されて、そこで初めて六法全書というものを見ました。勉強の仕方すら教わっていないので、ひたすら本を読むしかない。文学部ですからね。

CORE 8の生い立ち

――2020年初頭、リーガルオペレーションズ研究会を立ち上げられた経緯からお聞かせください。

明司 これからリーガルテックが浸透して法務実務が変わるだろうという予感が一つ、もう一つはインハウスロイヤーが増えてきたことです。従来型の法務、つまり職人芸として弁護士的な仕事をこなすやり方はもうダメで、仕組みにしなければいけないと考えたのです。それで海外の情報を集め始めました。米国のACCというインハウスロイヤーの団体とCLOCというリーガルオペレーションの研究団体が、リーガルオペレーションズという概念を打ち出していました。中身を調べてみると違和感があり、これは日本企業には合わない、日本版を作らないとダメだと思って、知っている方に声をかけました。

――どこに違和感があったのでしょうか。

明司 どちらも米国のモデルなので、eディスカバリーを含めた訴訟管理が独立した項目に入っている一方で、日本企業はそこまで訴訟をしません。これは日本に合わないよねと。あと、CLOCは10項目ですが、日本なんだから、八百万の神だし、南総里見八犬伝だし、8項目がいいんじゃないかと(笑)。

日本と海外で法務部門はどう違うか

――サントリーは海外に法務組織をお持ちですね。

明司 海外子会社の法務部門は、全員が弁護士です。弁護士のキャリアとして、法律事務所に5年ほど勤めてからインハウスになるのが出世コースで、何社か渡り歩いてジェネラルカウンセルになる。そんな彼らも、テクノロジーやリーガルオペレーションの仕組み化には、非常に熱心なんですよ。

――法務スタッフの構成が根本的に違いますよね。

明司 日本と海外は違いますね。当社国内グループ会社の法務人員が35人ほど、うち有資格者が17人ほど。社内弁護士はようやく半分くらいですが、まだまだ少ない。昔は、法学部出身の非有資格者が入社して法務を担当し、米国に留学して弁護士資格を取る流れがありましたが、今は留学自体が少なくなりました。そもそも日本では、法務をやりたくて入ってくる人がいまだに少ない。当社法務スタッフの多くも、ローテーションのある総合職です。

――法務部門の守備範囲も違いますね。

明司 一番違うのは、ジェネラルカウンセルの守備範囲です。「ジェネラル」というだけあって法務以外も全部見ろという感じで、いまなら地政学の話もそうですし、当社の場合はアルコール規制に関するロビイングも担う。しかも取締役会や経営会議には必ず出席します。日本のいわゆる法務部長が経営会議にどれだけ出ているのか。ここは日本と海外でかなり違います。

――そういう前提のACCやCLOCをそのまま持ち込むと無理が出ますね。

明司 あまりにもギャップが激しすぎる。しかも「グローバル大企業の人間がまた何か言っている」と受け取られてしまう。地方にもいい会社はたくさんあるわけで、「東京のやつがまた何か言っている」と思われるのが嫌だった。だから日本版を作りたかったんです。

「自慢話」ではなく、誰でも使える枠組みを

――CORE 8は法務責任者が頭の中で考えていることを8つに分けて言語化したものということでしょうか。

明司 そういうイメージです。エッセンス自体はCLOCやACCと大きく変わりません。日本特有のところ、日本の弱いところを8つに整理したという意図です。もう一つ、私が嫌だったのは、法務の偉い人の講演がだいたい自慢話になることです。「俺はこんな仕事をした、すごいだろう」で終わってしまう。枠組みにしておけば誰でも使えるし、8つのどこに重きを置くかは会社によっても人によっても成長段階によっても違う。一つの教科書、参考書になればいいと思ったんです。

――具体的にはCORE 8を社内でどう使われましたか。

明司 中期計画や年度計画の参考資料として使っています。CORE 8を使って、ここを重要課題にしよう、ここで予算を取ろうというディスカッションを行っていました。海外子会社に紹介したときも、CLOCを知っているアメリカのインハウスロイヤーが感心していたので、刺さっているんじゃないかと思います。日本の本社がこういうことを発信するのは、今まであまりなかったのかもしれません。

現在地――経済安全保障が「コアイシュー」になった

――CORE 8を作った5年前、法務部門のオペレーションはどうでしたか。

明司 ナレッジマネジメントをどうするのかを真剣に考えていました。当社は消費財メーカーですから、景品表示法の例で言うと、「おまけを付けましょう」「表示をどうしましょう」という検討の履歴が残っていなかった。過去にどういう経緯でどう回答したかというデータがない。そうすると、新しく入社した人も、他社や法律事務所から来た人も判断できないんですよ。景表法や消費者法は、ルールのようでルールでない。年代によっても、当局の考え方によっても変わりますから。だからデータを残して自分で調べられるようにする、その仕組み作りを社内でやっていました。AIができる前の話です。いまでも、過去の契約を「なぜこうしたのか」が残っていない、という会社は多いように思います。

――最近、マネジメントを真剣に考える方が増えました。昔のように職人が部長になるという形ではなく。

明司 最近、CEOやCFOと横並び、あるいはCFOの少し下にCLOという役職を置く会社も増えています。もう一つ大きいのが経済安全保障で、これはもうコアイシューになっている。経済産業省の方からも、ガイドラインがどんどん変わっているのに法務部門が対応できず経営者が怒っているという話を聞いたことがあります。経済安全保障こそが最重要事項なのだという感覚が、まだすべての法務パーソンに行き渡っていないのかもしれません。

――守備範囲が契約やコンプライアンスから一歩広がって、リスク管理的な要素が重視されていますね。

明司 今は夏ですが、異常な猛暑と言われて台風もすごい。これからは、これが日常になるわけです。富士山は30年以内に噴火すると言われている。そういうことが「想定外」ではなく「想定内」になったときに、「法務は契約のことしか分かりません」という時代ではない。契約実務も変わっていて、何が不可抗力かという概念が変わっています。昔は「不可抗力と書いてあるのだから不可抗力だろう」で済んだものが、範囲を具体的に書かないといけないという裁判例が出ています。

――法務部門が自分からリスクを探しに行く時代ですね。

明司 法務部門は、もっともっとリスクを探しに行かないと。「攻めの法務」という言葉はあまり好きではありませんが、リスクをゼロにはできません。イランで戦争が突然始まり、ウクライナ紛争も終わらない。そういうことが普通に起こる時代です。ゼロにはできないけれど、「こういうリスクがあるからこうしましょう」と提示すること。それが法務の役割で、これからますますそこにシフトしていかなければいけない。

最も重視するのはナレッジマネジメント

――CORE 8の中で、絶対に重視するものを挙げるとすれば何ですか。

明司 ナレッジマネジメントです。テクノロジーでデータ化することは正しい。日系企業の管理部門、とりわけ法務部門のナレッジは、暗黙知になってしまっているので、形式知に変えていくべきです。ただし野中郁次郎先生は、『ワイズカンパニー』などで、形式知になったものを次にまた暗黙知に戻す、それが成長の源だと書いておられる。最後に人間がやることは、形式知を暗黙知に戻して成長していくことなんです。だからナレッジマネジメントが8つの中で一番大事ですし、このAI時代には余計に大事だと思います。

――形式知はある程度貯められる。しかし暗黙知は難しい世界ですね。

明司 最近ネット記事で見たのですが、米国で倒産したLCCのデータをGoogleが買おうとしているらしく、何を買おうとしているかというと、顧客からのクレーム記録だそうです。なぜかと考えると、結局これは人間対人間の話で、それをデータで記録してAIを使い、人間が人間にうまく対応できるようにするためなんですね。会社の中にもデータはあると思いますが、AI時代に本当に残るのは暗黙知です。データは取るけれど、本当に欲しいのは「なぜこうなったか」という部分。それは書かれていない。なぜなら書けないからです。でも、データを大量に集めると、なぜかが分かるようになるらしい。思考プロセスのようなものですね。

――契約審査の記録は形式知ですが、その背後でどういうコミュニケーションを取ったかという情報は暗黙知です。それを集めると面白いかもしれない。

明司 そのためには、インパーソン、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーション、ウェブ会議でもいい、そういう対話が必要。日本人同士だけでなく海外の人も含めてです。そこから生まれてくるものがあると信じたいですね。

「正しい答え」は最適解とは限らない

――CORE 8を作った2020年と現在で、事務作業を大きく変えたのは生成AIですね。

明司 メンバーに聞いてみたのですが、契約レビューも翻訳も基本はみんなAIを使っています。日銀の植田総裁もAIで翻訳していると言っていましたね。あれだけ英語ができる方でも自分で使っておられるらしい。業務効率化のインパクトは皆さんご存じの話ですが、今年の春に京都大学のディスカッションに出て、はっとしたことがあります。AIがすでに民主主義を変えているという指摘です。AIは基本的に「正しいこと」しか言わない。人の悪口も言わない。ハルシネーションはありますが、アシモフのロボット工学三原則のようなものを守ってしまっている。その「正しいことしか言わないもの」が普及して、人間の側を変え始めている。ジョン・ロールズの正義論を持ち出すまでもなく、正義の基準そのものを、何が正しくて何が正しくないかを判断する人間の頭脳自体を、AIが変え始めているのだと。それに対して我々がどうするのか。AIに言われるままにするのか、そうではなく「人間とはこうだ」と打ち出していくのか。それは企業法務の人間ができることだし、やるべきことなのかなと。

――法務実務をやっていて時々感じるのは、「正しい答えが最適解ではない」ということです。

明司 飲酒運転はダメですというルールは正しい。でも、制限速度60キロのところを61キロで走ったらとんでもない違反なのか、ちょっと違う気がするんです。ルールというのは、そういう加減のようなもので、最低限のモラルやマナーのようなものだと思うんです。法務が相談を受けて「これをやるとリスクがある」と言うだけで終わってしまう。それは違う気がします。

――特にメーカーだと、問題が起こるたびにマニュアルが細かくなっていきますよね。

明司 マニュアルがどんどんできて、しまいには「マニュアルを探すためのマニュアル」ができる。家電を買うと最初の5ページくらいが注意事項で、ダメダメダメと免責事項が並んでいる。誰も読まないでしょう。それで何かあったら「リスクがあると書いてあります」となる。法務はそのために仕事をしているのか。違うじゃないのと思いますけどね。法律やルールは「決まったことが決まったとおりに行われて、それを全部守るんだ」と思われがちですが、そうではないものが昔から日本にもあった。景表法ができたのは昭和37年ですが、そのときにできた特例がいまだに続いていて、旧仙台藩の地域だけ、正月と旧正月に行うキャンペーンの景品額の扱いが違うんです。消費者庁のホームページに書いてあります。誰かがルールメイキングしたんですね。

枠組みプラス、人と人との付き合い

――グローバル会議などで共通のフレームワークがあると話しやすい。

明司 当社では5年ほど前から、海外のリーガル、コンプライアンス、商標のメンバーに3か月ずつ日本に来てもらっています。この趣旨は、みんな英語ができないので、日本語ができない人が同じ席にいれば英語を喋るだろうと(笑)。逆に日本人も3か月出しています。枠組みプラス、人と人との付き合い。その両方が大事なのだと思います。もう一つは、教養という言い方はよくないかもしれませんが、知識や感覚の問題です。日本の経営者や部長陣は、立食パーティーで2時間もたない。英語ができないわけではなく、ゴルフと仕事の話しかできないんです。ところが海外の人はリベラルアーツがあるので話が続く。ヨーロッパに出張すると、パリの人間が「いまオルセーでこういう展示をやっている、お前は好きだと思う。予約は俺が取ってやる」と言ってくる。仕事とは何の関係もない。でも、そういうコミュニケーションから情報が入ってくる。AI時代ですから語学はアプリでだいたい通じます。それ以外の、芸術や哲学や文学の話が少しでもできれば、もっとグローバルな仕事ができるのかなと思います。

人材と多様性――前提が変わっている

――CORE 8の「人材」のレベル3には「年齢・性別・国籍等の分布に配慮し、多様性のある組織を構成している」とあります。

明司 いまでも、多様性が本当にできている企業がどれだけあるのかという気はします。典型的なのが英語力で、日本は世界で90位くらいでしょう。なぜできないのかと思います。いろんな人が集まっている、LGBTQの方もそうですし、いろんな世代がいた方がいい。海外の方が普通に住んで、当社のようなメーカーで普通にマーケティングをやっている。それが多様性のある組織です。前提も変わっていて、いま20代人口の約9%が外国人住民、ある調査では2035年頃には日本にいる方のうち1000万人が外国人になるという。いまは分断が進んでいますが、こういう時代だからこそ必要ではないでしょうか。

――ジェンダーバランスについてはいかがですか。

明司 女性役員を増やせと言うと社外役員の多くが女性になり、それが多様性なのかという気はします。当社法務部門の部長・課長クラスは、ほぼ全員女性です。ただ、1人を除いて全員お子さんが小さい。そうすると、ご主人もなかなか休めず海外出張が難しい。社内弁護士だとご主人も弁護士で余計に休めないといったことが起きている。だからこそ、いろんな人を入れてミックスさせる必要があると思います。

もしCOREを増やすなら――AIとリスクマネジメント

――新しいCOREを作るとしたら何を加えますか。

明司 AIでしょうね。単なるテクノロジーではないものとして。もう一つはリスクマネジメントです。2年ほど前に羽田で日航機が炎上した事故がありましたね。全員助かった。CAの友人に聞くと理由が三つあるそうです。一つは最新鋭の機体だったこと。二つ目は、正月で乗客が帰省の家族連れだったこと。「逃げなさい」と言われたとき、ビジネスパーソンはパソコンを持って行こうとして騒ぎ出す。ところが家族連れだとそれができない。三つ目は、正月なのでCAが全員若手で、研修直後だから手順が身体に染みていたこと。しばらく経つと人間はどうしても惰性になる。それが全部重なったから全員助かったと。

――リスクマネジメントの本質を突いた話ですね。

明司 常に情報をアップデートしていかなければいけないし、惰性になってはいけない。避難訓練を惰性でやっていても火事は起こるんです。リスクを管理するというのは、どういうリスクかしっかり分かったうえで訓練すること。AI時代に契約はAIが見てくれる、では何をするのかと言われたらそういうことをやる。

――CORE 8そのものも、中身を入れ替えていくべきものだと思います。

明司 COREは8でも9でも5でも構いませんし、言葉を変えてもいい。法律が変わるのと同じです。CORE 8はAIが普及する前、コロナ禍時代のものです。時代は変わるので、昔を懐かしむだけでなく、いまはこういう時代なんだ、というのを皆さんで議論して変えてもらえばいい。次の世代の方がリプレイスしていく、そうしていってもらえたらと思います。

これからの5年、企業法務はどうなるか

――ここから5年、企業法務の世界はどう動くと思われますか。

明司 語弊がありますが、シンプルに言えば、従来の企業法務はなくなる。AIがやってくれるからです。これはパソコンが入ったときと同じなんです。1995年にWindows 95が出るまで、大きな会社には必ず和文タイプ室があって、重要な契約書はそこに依頼していた。その人と仲良くならないと早くやってくれない(笑)。それがパソコンの普及で、みんな自分でできるようになり、和文タイプ室の仕事も電話交換手もなくなった。たかだか30年ほど前の話です。法務の仕事も、変わらないと思っていても変わるんです。どう変わるのかは、私も「これだ」と言い切れません。ただ、人間と人間の関係、これだけは変わらないと思います。いまは神社のお賽銭もPayPayで払えますし、結婚式のご祝儀も電子で払える。ただ一つだけ、電子マネーが使われていないものがある。それはお香典です。

――さすがに、お香典で電子マネーは嫌でしょうね。

明司 「ご霊前です、PayPayで」とはならない。あれは現金なんです。つまり、人間の根っこのところはやっぱり残る。だから新しい時代の法務とは、人間の一番大事なことをやっていくことだと思うんです。単純にコンプライアンスというだけでなく、競争力強化と言ってもいいかもしれません。そういうものが残るし、企業法務はなくならない。ただ人は減るでしょう。人材そのものが減っていくのですから、法務だけ増やしても仕方がない。結局、今までの法務業務は、ワープロ打ちのような仕事だったんです。そうじゃない仕事になろうとすると何をすべきか。一つはリスクでしょうし、AIが人間にどう影響していくのかという話でしょうし、新しいルールを作る仕事もあるかもしれない。それが、少なくともこれから5年、10年の法務のような気がします。

――作業はAIがやってくれる。イエス・ノーの判断もAIがやる。残るのは何か。

明司 ピカソが「コンピュータはダメだ」と言ったそうです。なぜなら「答えしか出さないから」。答えはAIが出してくれる。では人間は何をするのか。AIができないこと、人間対人間、暗黙知のような話です。事務作業は全部AIにやってもらう、あるいはフレームを作って回す。そうして余った時間で、人間にしかできないことをやる。ピカソが言ったことの逆です。

――AIから「1億円以上の損失が出る確率70%」と出たときに、それでもやると判断できるのは人間だけです。

明司 天気予報のようなもので、降水確率50%と言われたら「どっちやねん」となる。それでも「今日は旅行に行こうか、雨だからやめておこうか」と人は判断している。それをビジネスの側面で同じようにやる。法務の人間が自分で決めきるところまではいかないかもしれませんが、「これは行った方がいい」とは言える。リスクはある程度チャレンジしていかなければならない。そのためにも、形式的なものだけでなく、暗黙的なものが答えを出す一つの要素になる気がします。

これから法務で活躍する人たちへ

――最後に、これから企業法務で活躍しようという方、いま現役で法務を担当している方へメッセージをお願いします。

明司 やっぱり、楽しむことですね。時代も社会もあまり元気という感じではありません。元気なのは大谷翔平くらいでしょう(笑)。だけど、前向きにやってみよう、楽しんでみようと。仕事は所詮仕事で、人生のすべてではない。でも、1日のうち3分の1くらいは仕事に使うわけですから、だったら楽しまないと損だと思います。そして、自分の会社や上司だけでなく、他の会社、他の業界、他の部署の人、外国の方、いろいろな方とコミュニケーションを取って自分をどんどん成長させる。勉強だけするという意味ではありません。そうしていただけると、楽しい仕事が待っているような気がします。

――ありがとうございました。

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