企業を取り巻く環境が大きく変化するなか、リーガルリスクも多様かつ複雑になっています。また、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、法務の業務フローを見直す企業が増えています。
昨年は「脱ハンコ」の流れから契約締結サービスが大きな話題となったように、様々なリーガルテックが生まれています。
本稿では、株式会社Hubbleが2021年6月に企業・団体の法務パーソンを対象に実施した「契約業務フローに関するアンケート」から、結果の概要をレポートします。
アンケートの概要
- 実施期間:2021年6月4日〜6月18日
- 調査手法:インターネット
- 調査内容:契約業務フローに関するアンケート
- 対象:契約審査担当者
- 有効回答者数:154人
全社の従業員数と法務担当者の数
回答者の従業員数は101名〜1000名の規模が約43%、1001名を超える規模の企業が約40%と中堅〜大規模の企業が8割を超える結果となりました。
一方で契約審査の担当者は1名が21.4%で最多、次いで2名20.8%、3名20.1%と従業員数に比べて少数精鋭で業務に取り組む実態が見受けられます。
契約業務の実態 定量分析
社内で1か月に審査する契約書の件数は31-100件が36.4%と最多。11-30件が31.2%という結果に。
審査件数は従業員数との相関関係があり、規模が大きくなるほど件数は増加傾向にあります。1人1ヶ月あたりの契約書の審査数は、およそ10件〜30件の間には収まるようです。
1か月に締結する契約書の件数も31-100件が32.5%と最多、11-30件が26.6%と審査する契約書の件数とほぼ同じ割合になっています。
契約書に関するリーガルオペレーションの実態
ここからは「契約審査の受付」「レビュー」「締結」「締結した契約書の管理・保存」の各フェーズについて調査した項目を紹介します。
契約審査の受付をはじめとして、事業部とのコミュニケーションに用いるツールとして最も多く挙げられたのはメール(84.4%)です。
以下、ウェブ会議(51.3%)、電話(48.1%)、対面(37%)と続き、チャットを用いている企業は35.7%に留まりました。
法務部内でも同様に、メールが最も多く、71.4%の企業が用いていると回答。チャットの割合は44.8%と事業部とのコミュニケーションと比べて9ポイントほど増える結果となりました。
契約書のレビューを支援するサービスの導入は21.4パーセントに留まる一方、電子契約システムを用いて締結を行なっている企業は38.3%、1年以内に導入予定企業と合わせると約半数が導入する結果に。新型コロナウイルス感染症のが影響が電子契約システムの市場への浸透を後押しする格好となりました。
締結した契約書を一覧で管理することは契約締結後のトラブル対応を考えるうえでも必須です。約7割の企業ではエクセルなど汎用ソフトか専用ソフトを用いて管理している一方で、18.2%の企業が一覧を作成していませんでした。
契約の締結までがリーガルオペレーションと考える方もいるかもしれませんが、締結後の保管・管理まで視野に入れて自社にとって最適なワークフローを構築することは重要なポイントです。
また、契約書の保存を外部に委託していない企業は83.8%と多数を占めました。
法務における人事評価の実態
アンケートでは法務における人事評価についても調査。定性的な目標の達成度合い、上司からの評価が70%弱と多数の票が集まりました。
法務の仕事は定量化しにくい、という定説を裏付ける結果です。
法務業務の定量化には、評価を受ける人間に対して納得感を与えると共に、業務改善のヒントが隠されています。
数字やデータのみを以て評価することには賛否両論あるかもしれませんが、人事評価や法務業務の現状分析・改善策検討の前提(判断の1要素)として、数字・データが有用なものであることは、大多数の方が納得するところではないでしょうか。
株式会社SHIFT 法務部門 グループ長 照山浩由氏へのインタビューでは「自分たちの仕事がなぜ評価されているのか、きちんと数字で示してもらえるのはありがたい」というメンバーの声も紹介しています。
最後に
アンケートの結果は以上です。興味深い調査結果はありましたか?
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また、本レポートをお読みになり、自社の契約業務フローの分析・改善にご興味をお持ちになりましたら、以下の記事も併せてご覧ください。何かのヒントになりましたら幸いです。