真似したい!気づかないうちに完了する反社チェックや迷わない契約書作成業務フローの構築例 – hacomono 木島梢氏-

株式会社hacomonoでは、さらなる事業拡大を目指してBizOps専任チームが業務改善に取り組んでいます。今回は、法務的にまたガバナンス的に重要でも、営業部門にとってはつい忘れがちな事務手続きをIT活用により効率化してきた具体的な事例について、同社 BizOps 木島梢氏に聞きました。

〈聞き手=山下 俊〉

目次

営業担当者が意識しないまま反社チェックが終わる仕組みを構築

山下 俊

まずは木島さんのご経歴について伺えますか?

木島 梢

2023年4月に5人目のBizOpsとしてhacomonoへ入社しました。前職では、営業企画や事業推進を担う部署に所属しており、事業部長の便利な右腕のようなイメージで、「あれがしたい」と要望されたことに対して、実現に必要なフローの構築と関係部門との連携やツールの整備などオペレーション構築全般が私の業務でした。RPA(※)による業務効率化なども行っていましたね。部門を超えて多方面に携わらせていただいていましたが、あまりにも雑多な内容でしたので外からはなかなか理解しづらい業務だったと思います。

(※)「Robotic Process Automation」の略。ユーザーがデバイス上で行う操作手順をアプリケーションが記憶し、当該操作をシステム上で再現する自動化の手段の一つ。

BizOps 木島梢 氏
山下 俊

法務に関連する領域で、直近で実施された改善施策を教えてください。

木島 梢

反社チェックの依頼起票から結果格納までの自動化です。営業担当者は顧客管理システムのSalesforce上で商談管理をしているのですが、一定のフェーズになると法務の担当者に連絡がいき、反社チェックが行われ、結果がSalesforce上に格納されるという仕組みを構築しました。営業担当者に何か特別な作業を求めるものではなく、裏側で反社チェックが終わるので、営業担当者は商談を進めて受注に至るだけでスムーズに契約締結できます。

山下 俊

木島さんのなかで、この反社チェック自動化の施策におけるポイントはどこにありますか?

木島 梢

営業担当者が「気づかないうちに」チェックが終わるのが一番のポイントです。営業担当者が忘れがちになってしまう業務を、抜け漏れなくかつ意識しないまま完了できるようなオペレーションに設計しています。今となっては反社チェックというフローがあることを忘れている営業もいるかもしれません。

Salesforce内で契約書作成手続きを完結できるように

山下 俊

契約業務関連での施策にはどのようなものがありますか?

木島 梢

契約書作成・締結手続きの省力化です。当社のサービスの利用規約をもとにした申込書のテンプレートは、Salesforceの商談管理画面上にあるコンポーネントから必要な項目をクリックしていくと、個別のお客さま向けの契約内容ができあがります。クラウドサインとも連携しており、Salesforce上に設置したボタンを押すとお客さまにクラウドサインが送信され、お客さま側でサインしていただくと、契約締結が完了します。

申込書の選択からクラウドサインの送信までをSalesforce上で完結できる図
図1:申込書の選択からクラウドサインの送信までをSalesforce上で完結できる
山下 俊

すごく便利そうですね!どのような仕組みになっているのでしょうか?

木島 梢

Salesforceとクラウドサインに帳票出力ツールであるOPROARTSを連携させています。OPROARTSでは、企業名や利用するオプションをSalesforceから読み込み、必要事項が入力された申込書と見積書をPDFで出力し、これを連携先のクラウドサインへワンクリックで送ることができます。営業担当者からすると、Salesforceの画面から出ることなく契約締結できますし、仮にお客さまからなかなかサインをいただけない場合など、進捗状況がSalesforce側から確認できるようになっています。

hacomono社のSalesforceの契約書オブジェクトのイメージ図
図2:同社のSalesforceの契約書オブジェクトのイメージ
山下 俊

特に件数が多くなってくると、営業側としては面倒になりますよね。

木島 梢

当社のサービスに付帯できるオプションが増えていることもあり、どの申込書のテンプレートを用いればよいのかわからないという営業担当者からの声があったこともきっかけになりました。そこで、現状のプロセスに変更したことで、自動で適切なテンプレートが選択されるようになり、営業担当者としては迷うことがなくなりました。

山下 俊

締結した申込書はSalesforce上で見ることもできるんですよね。

木島 梢

はい。締結された申込書は自動でSalesforce上にPDFが格納されます。もちろんクラウドサインでも閲覧できますが、営業担当者からすると日常的にチェックするSalesforce内で取引先情報と紐づけて確認したほうがわかりやすいですし、契約締結の履歴も時系列で追えるので、やはりSalesforceで完結できるようにするほうがよいと考えました。

山下 俊

この機能を実装した後の営業のみなさんの反応はいかがでしたか?

木島 梢

運用開始前に社内説明会でデモを行いましたが、かなり好評でした。こうしたシステムは、現場で利用してもらうこと、つまり定着率が一番重要だと考えています。今ではSalesforceから契約締結することが自然な流れになっていて、現場にしっかり運用が定着しています。

山下 俊

定着率という言葉も出ましたが、こういった業務効率化施策の効果測定はどのように行うのでしょうか?

木島 梢

契約締結自体は、Salesforceとクラウドサインのどちらからでもでき、利用割合もシステム上でトラッキングできる状態になっています。ここで確認すると、運用開始直後から継続して8割以上の利用率を保っています。定形外の書式を使う場合など利用できないケースがあるので、及第点だと捉えています。

職務権限規程遵守のため見積承認をワークフロー化

山下 俊

更にガバナンスに関する施策も実施されたと伺いました。

木島 梢

職務権限規程遵守のため、SalesforceとSlackを用いてサービスの「見積承認ワークフロー」を作成・整備しました。

見積承認ワークフローのSlack通知のイメージ図
図3:見積承認ワークフローのSlack通知のイメージ
山下 俊

かつてはどのような課題があったのでしょうか?

木島 梢

お客さまに見積提示を行う際に、これまでは営業担当者からマネージャーにチャットで確認依頼するという形でした。ただ、これでは過去の経緯が埋もれてしまい、なぜこの見積提示としたのかの背景情報が後から辿れなくなってしまっているケースがありました。また、判断基準が明確ではないことから、営業担当者によって、マネージャーへ伝えられる背景情報の粒度が大きく異なるのも課題でした。

山下 俊

ワークフローの整備後はどのような変化がありましたか?

木島 梢

見積の内容によって、適切な承認者にワークフローが回るようになっただけでなく、承認者が欲しい情報が明確になったことで、営業担当者側がどこまでの情報を伝えるべきか悩む必要がなくなりました。承認者としても判断しやすくなったと思います。

山下 俊

「伝えるべき情報」として、営業担当者は具体的にはどのような情報を入力するのでしょうか?

木島 梢

お客さまの業態、店舗の規模、他社システムの利用状況、今後のビジネスの展望など、Yes/Noや数値で答えられる質問を複数用意しています。

山下 俊

この施策において木島さんがポイントと考える部分はどこでしょうか?

木島 梢

質問事項の明瞭さでしょうか。営業担当者が入力に迷ったり、無駄に時間をかけて長い承認依頼を書いたりすることがないように、作成段階から承認者側が何を判断軸にしているのかを明確にしていきました。これに加えて、こういった相談事は急いで確認してほしいケースも多いため、承認や申請のタイミングでSlackに通知が飛ぶようにし、承認者がオンタイムで気づくことができるようになっているのもポイントですね。

山下 俊

ありがとございました!
次回はhacomono法務におけるオペレーション構築やIT活用の状況などについて聞いていきます。


★今回のLegal Ops Star★

木島 梢(きじま こずえ)

株式会社hacomono BizOps Div.

上智大学英文学科卒業。医療系人材会社にて営業・転職エージェントを経験後、営業企画・事業推進部門に転向し、主に営業部門のデータ活用支援、オペレーション改善、業務効率化、ガバナンス向上などの施策を担当。2023年4月hacomonoに5人目のBizOpsとして入社。SalesforceをはじめとしたITツールを活用して、顧客・セールス・関連部門それぞれが心地良いなめらかな業務オペレーション設計を目指している。

(本記事の掲載内容は、取材を実施した2024年2月時点のものです。)

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